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近未来小説 2020年(11)2012.01.30 Monday
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「俺、夢見てるみたい・・・
憧れの人と会えただけでなく今夜酒も一緒に飲めて話が出来るなんて」
興奮で沖は顔を真っ赤にしていた。
「社長、沖は酒豪です。
夜もいびきが凄くて睡眠不足になるかもしれませんよ」
「いや・・・
俺もいびきはかくんだ。
沖さん、
こりゃ〜どっちが先に寝るか勝負だな。
ワッハハ・・・」
宗一郎氏は豪快に笑いだした。
原が
「今夜は賑やかになりそうですね」
祐一も
「こりゃ沖も酒のピッチが進みそうだ。
調子に乗るなよ」
「大丈夫!」
そう言いピースサインを出した。
中村良夫が
「社長、私はそろそろ帰ります。
明日は迎えの車、用意しますが」
「いや電車で帰る。
朝一番の電車で帰るから藤澤にも伝えておいてくれ」
祐一は
本田自動車の社長ともなれば多忙なスケジュールのはず。
なんだか申し訳ない気持だった。
「原さん、今夜寝る時、私と沖はごろ寝でいいですから」
「とんでもない。
なんとかします。
署から布団一式借りてもいいですし」
「じゃ2畳の部屋でいいですよ」
「「みんなで一緒に布団並べましょう。
そのほうが楽しいし・・・」
「それでは社長、私は先に失礼します。
何かありましたら、すぐに連絡ください。
会社からも緊急時は連絡します。
原さん宅の電話で大丈夫ですか?」
「あ〜、そうしてくれ。
藤澤に任せればまったく心配いらん」
「田中さん、Sを試乗出来んのが非常に残念だ」
まるで駄々っ子のようだ。
祐一は原に聞いた。
「原さん、駄目ですかね?」
「難しい問題ですよね。
立場上いいとは言えませんし」
祐一は
「社長、試乗は厳しいですけど原さんの家に戻ればS2000の動画があります。
あとでお見せしますが」
「動画?8ミリフィルムのことか?」
「いや、8ミリではなく私達の時代の動画です。
沖の爆走も見れますよ」
「沖、お前のデジカメに少し動画なかったか?」
「あっ、あります!
ちょっと待っててね」
ポケットをゴソゴソ・・・
小さいコンパクトカメラを取り出した。
「沖さん、何ですかそれは?」
「カメラです」
「カメラ?
そんな小さいカメラでフィルムはどこへ入れるんだ」
宗一郎氏はマジマジ覗き込んだ。
「デジタルカメラというやつでしてフィルムはいらないんです」
「???」
「説明は後にして、社長見てください」
沖は液晶画面を社長に見せると祐一がS2000を箱根で走っているシーンを
見せた。
パソコンと違い迫力は欠けるが、それでも宗一郎氏を驚かせるのに十分だった。
「何だ、これは?
こんな小さいカメラでこんなことが出来る!
未来はこんなに進歩するのか」
「電池も太陽電池で間に合うんです。
乾電池もいりません」
コンパクトなデジカメを手にしながら不思議そうに見ていた。
そのまま宗一郎氏が持っていたら分解されそうだ。
「しかし田中さんの走り、豪快だな〜」
「社長、いや私より沖のほうが豪快ですよ。
荒々しいの一言です。
性格がそのまま運転に表れてます」
「田中さん、いつも俺のこと、そう言うんだから。
社長、サーキットを走っても俺より田中さんのほうがタイムいいんですよ」
「いいね〜いいね〜
勝負してみたいもんだ」
宗一郎氏と車談義をしていたら何日あっても足りないだろう。
社長も根っからの車好き人間だ。
S2000・2200を囲んでの話は尽きない。
原が
「ここでずっと立ち話は何ですから署内でゆっくりと・・・」
宗一郎氏はSの前を離れたくない様子だった。
10月とはいえ、夕方近くになると肌寒い。
祐一が
「社長、風邪ひくとよくないから中で話しましょう」
子供のように名残惜しんでいたが
「そうするか」
4人は署内に入った。
応接間に戻り女子事務員がお茶を持ってきてくれた。
原が
「残り仕事片付けてきますので」
そう言い席を離れた。
しばらく沈黙のあと・・・
宗一郎氏が
「今日はいい車を見せてもらいました。
絶対忘れられない日ですよ」
二人は同時に
「私達も同じです。
まさか社長とお会い出来るなんて今も信じられません」
「沖さんを見ていると私の若い頃のよう・・・
どうだね。
俺の会社に来ないか?」
「えっ???」
沖は驚きの顔を見せた。
「沖、良かったな〜!
就職先が決まって・・・
もし俺が2020年に戻っても頑張れよ」
「田中さん、そりゃ〜ないよ!」
3人は大笑いした。
沖が
「こんな俺を・・・
めちゃ嬉しいけど2020年にも未練があるし」
「社長、俺のこと、さん付けで呼んでいるけど沖でいいですよ」
「名前は何でしたっけ?」
「龍也です」
「じゃ〜龍也はどうかね」
「嬉しいな。
社長に名前で呼ばれるなんて」
どうやら二人の相性はばっちりのようだ。
沖も10代の頃は暴れん坊で鳴らしたようだが今は27才。
ずいぶん落ち着きも出てはきたが、宗一郎氏同様やんちゃ時代が抜け切れてない。
発想もユーモアがあり祐一も見ていて共通感があるように見えてくる。
普段、バカ言っている沖も意外と素質あるかもしれない。
案外、10〜20年後未来の社長かもしれない。
祐一は沖の顔を見てニヤニヤしていた。
「田中さん、何!
俺の顔を見てニヤニヤ・・・
気持ち悪い!」
「いや、何でもない」
宗一郎氏は
「田中さん、2020年ってどんな時代ですか?」
「日本は戦後高度成長時代を経て爆発的に成長しました。
経済大国とも言われるようになりました。
自動車も急速に普及してアメリカの自動車など蹴落とすくらいの勢いです。
ホンダ自動車もトヨタ・日産に肩を並べるくらい人気が出て根強いファンが
沢山います。
しかし1990年代以降、日本は不景気に陥り資源もない国。
中国やインドなど新興国が急速に経済発展し今の日本就職先もない有様。
若者の大半は海外の企業に就職先を求めています。
2020年の今は自動車産業も中国・韓国・インドなど急成長している産業に
シェアを奪われ日本の自動車産業界は息切れ寸前です。
自動車だけではなく日本に仕事がありません。
人・物・金が全然動いてません」
宗一郎氏は
「我が社のホンダも同じ状況かね?」
「はい、ホンダもスポーツカーのメーカーそして他社と違う車作りをしてきたのですが
急速に電気自動車が普及したため他社と似たような車になって車離れが深刻です。
私や沖が乗っているS2000のような車は皆無に等しいです」
「電気自動車ってエンジンは?」
「ありません。
小型コンパクトなバッテリーを搭載してエンジンは不要。
音もなく静かでガソリン入らず。
ボディと足回りだけ開発すればバッテリーは電気メーカーが開発したものを載せれば
出来ます。
車作りのノウハウがなくても簡単に新規参入が出来るわけなんです。
車のデザインも一流のデザイナーをスカウトしてデザインすれば完成します。
今までの車作りのノウハウが役に立ってません」
宗一郎氏は顔が真っ赤になってきた。
「2020年のホンダの社長は誰だ?」
沖が
「○○氏です」
「○○?
誰だ、そいつは?」
「車というのはな〜官能的なエンジンを載せて誰もが惹かれるスタイルにして持つ
喜びというのを味わうのが車だ!
電機?バッテリー?
そんなおもちゃで車と言えるか!
俺が2020年に飛んで行って雷を落としてやりたいくらいだ!!」
興奮でツバを飛ばしまくりだった。
沖が
「俺も仕事でお客さんの車を整備していてもつまらないんです。
なんだか電機製品をいじくっているみたいで」
「S2000や原さんのS500を見て、これこそ自動車。
人間に例えるなら血液の通った暖かみのある人間。
今の電気自動車、足回りなどスポーツ性にしているけどマネキンのように
味気ないです。
だから俺ずっとS2200乗り続けますよ!」
「なんでそんなに電気自動車が普及したんだ?
俺にはとても想像がつかん・・・」
祐一は
「ひとえにガソリンの高騰です。
地球上の原油埋蔵量は限られてます。
日本は原油を殆どいや全部と言っていいほど輸入に頼ってます。
原油産油国が原油価格をつり上げて尚かつ原油生産を制限しているからなんです。
ガソリン価格もうなぎ登り。
そうすると燃費の悪い車はだんだん売れなくなる。
更にユーザー軽視のデザイン作り。
購買意欲をくすぐるデザインの車が少ないんです。
どんどん若者が車から興味をなくしてしまう。
更に車が売れなくなる。
そして新興国の自動車メーカーが人件費の安さで日本自動車メーカーと同等以上の
電気自動車を作り値段も安い。
悪循環の繰り返しです」
さっきまでニコニコしていた宗一郎氏。
2020年の話題になってから不機嫌な顔になっていた。
沖が
「社長、俺達のいる2020年ってあまりいい時代じゃないです。
俺、この時代に何で運ばれたのかわからないけど昭和30年代っていい時代だな〜
って、心底思いますよ。
みんな人情味はあるし世の中全体が温かい。
2020年はその日その日良ければいい。
明日の希望がない。
今日よりも明日が良くなるって希望が見えないもん。
少なくとも俺はSで田中さんと爆走出来る時が至福のひとときだけど」
「沖、お手柔らかに・・・」
この一言で場が和らいだ。
不機嫌な顔になっていた宗一郎氏も笑みがこぼれた。
原が仕事を片付け応接間に入ってきた。
「お待たせしました」
祐一が時計を見たらすでに夕方の5時過ぎ。
外を見ると薄暗くなっていた。
あっという間に時間が過ぎていた。
「社長、それでは原さんのSでどうぞ。
私と沖は歩いて帰宅しますから」
「駄目ですよ!
田中さんと沖さんは署の車で送ります。
二人分の布団を運びますので」
「すみません・・・
またまた世話になります」
宗一郎氏も
「悪かったね。
なんだか押しかけたみたいで」
「とんでもないです。
こんな光栄なことないですよ。
だけど私の汚いアパート・・・
恥ずかしいな」
「社長、原さんは男の割に綺麗好きなんですよ。
料理もやるし・・・」
「ちょっと待って!
料理っておにぎりと卵焼きしか出来ませんよ」
沖が
「それだけ出来れば上等!
俺なんて何も出来ないもんな〜」
「沖は飲み食い専門だもんな。
日本酒一升瓶があれば満足だし枕にもなる」
祐一は隣でちゃかした。
宗一郎氏は二人を見て
「まったくタイプが違うのに相性が合うね〜
まるで俺と藤澤みたいだ。
俺も藤澤がいなかったら今のホンダはない!
それだけは断言出来る。
こんな頭の悪い俺だが奴の貢献度は大だ!」
「いや社長の実績も2020年の時代でも薄れてません。
2020年こそ本田社長のような人が必要です」
宗一郎氏はニッコリ笑っていた。
まるで悪ガキ少年が誉められたような顔で。
原が
「それでは帰りましょうか」
そう言い4人は署を出た。
祐一はふと思い出し
「原さん、明日の勤務は日勤ですか?」
「私は明日は夜勤です。
夕方出勤すればいいから今夜はとことん付き合いますよ」
祐一は沖に
「ボチボチバイトの仕事予約するか」
「あとで俺、電話予約するよ。
原さんが夜勤・・・ということは、じゃ〜俺達も夜勤でいい?」
「あ〜、そうしよう・・・」
原さんと社長はすでに外へ出ていた。
二人は署の廊下で相談、慌てて二人のあとを追った。
すでに布団一式も同僚警察官の自家用車に積まれていた。
車の隣に立っていた人物を見て祐一が「あっ!」
祐一が職務質問を受けた際、原さんと一緒にいた警察官だった。
祐一がぺこっと頭を下げ
40代風のあの日、震える手で警棒を握り高圧的な態度だった警察官が
ニコニコ・・・
「先日は仕事とはいえ失礼しました。
原からは聞いてます。
どうでうか。
この時代に慣れましたか?」
「原さんのおかげで大変助かってます。
先日はご迷惑かけました」
「いや・・・私も原もあのときは目を疑いました。
目立つ赤い車でナンバーも見たことない。
こりゃ〜不審車だ!・・・ってね。
仕事の責務のあまり暴言吐いたかもしれない。
悪かったね」
「とんでもない。
こちらこそ、訳のわからない会話してしまって・・・」
祐一と沖は車が何の車名だかわからなかった。
沖がそぉっと車を見回して
「あっ、初代日産グロリアだ!
格好えぇ〜」
当時のクラウンと並び日本の高級車だ。
二人の時代から見ると至ってシンプル。
だけどシートなどは高級そうで乗り心地も良さそうだ。
「原の家まで送ります。
布団もトランクに閉まってありますから」
「ありがとうございます。
助かります」
二人はリヤシートに招かれ昭和30年代のVIP待遇だった。
原が
「田中さん、それでは本田社長は私の車に乗って行きます」
2台は並んで発進。
祐一と沖はフカフカのシートに座った。
「申し遅れました。
私は木村と言います」
「田中です、沖です」
「しかし大変でしたね。
ご家族も心配しているでしょう」
祐一は
「皆さんのおかげで、こうやって今の時代に何日もいられること感謝してます。
家族も心配しているとは思うのですが、どうしようもない・・・」
「あの時、霧が出てましたよね。
今もうっすら霧が出ているけど霧とタイムスリップ関係あるのかな?」
たしかに外を見るとうっすら霧が出ている。
もしや、また濃霧が出て現場近くへ行ったら・・・
たぶん沖も同じことを考えているだろう。
神のいたずらか?
俺と沖がなんでこの時代に・・・
ソフトな乗り心地に酔いしれ、あっという間に原のアパートに着いた。
二人は礼を言った。
外は薄暗くなり霧で視界もかすんでいる。
10月とはいえ少し寒い。
布団を部屋に運び原が
「焼き鳥にしますか?
それとも銭湯が先・・・」
二人は顔を見合わせた。
「社長、どうします?
食事?風呂?・・・」
「銭湯・・・いいね〜
まずは裸の付き合いから行きますか」
原が早速4人分の銭湯一式を用意した。
社長は署に着いた時の格好そのままだ。
シャツにネクタイはしているけど油混じりのつなぎ姿。
本当によく似合っている・・・
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AC%E7%94%B0%E5%AE%97%E4%B8%80%E9%83%8E
「こんな格好で銭湯大丈夫か?」
沖が
「社長!
そんな気にすることないですよ。
俺だってこんな不精ひげ姿。
仲良く一緒に行きましょう」
「おぅ!龍也が言うんだからそうするか」
祐一と原は二人の姿を見て心が和んだ。
見るからに悪ガキが二人って感じだ。
沖がこんなにも偉大な人物と相性が合うとは思わなかった。
案外、沖も大物になるのかもしれない。
沖も
「原さん、早く行きましょう!」
ワクワクしているのかせかしている。
4人は銭湯一式を持って霧の中、向かった。
番台の親父さんが
「おや、今日はまた大勢で・・・
ありがとうございます」
湯船・洗い場を見るとすでに賑わっている。
祐一は
「何度来てもいいものだ。
日本の原風景・・・」
すでに沖と宗一郎氏はカゴに服を入れている。
似たもの同士だ。
今日は4人まとまって座れる場所がない。
祐一と原、宗一郎氏と沖に分かれた。
「原さん、見てくださいよ。
あの二人の仲のいいこと・・・」
「親子?兄弟?
馬が合うというのはこの事ですね」
「こりゃ沖をこの時代に置いて俺だけ2020年に戻ろうかな・・・」
「ハークショィ!」
沖が威勢のいいクシャミをした。
誰か俺の噂をしている?
そんな顔だった。
湯船も子供達で一杯だ。
代わる代わる湯船に入り鼻歌を歌いながら沖は?と見ると宗一郎氏の背中を
洗っている。
どんな心境だろうか。
箱根の峠やサーキットで一緒に走ると本田宗一郎氏の伝説話を我が事のように
いつも話していた沖。
感激で手が震えているんじゃないのか。
祐一は満足だった。
こんな経験、絶対ないぞ!
沖、良かったな!・・・
4人とも十分温まり体から湯気が立っていた。
「田中さん、社長が俺の背中を流してくれましたよ!!!」
興奮気味だった。
「良かったな〜
社長、ありがとうございます。」
「いや龍也の力加減もなかなか気持ち良かった。
さすが日本男児だ!」
完全に沖の株は上がっている。
沖は目が赤かった。
さては、こいつ感激で涙流したか?
祐一は沖を見てニヤッと笑った。
しかし神様と呼ばれる本田宗一郎氏と銭湯で裸の付き合いだ。
感激しないほうがおかしい。
ましてや相性もばっちりだ。
この調子じゃ寝る時も1つの布団で添い寝か?
原が
「また例の焼き鳥屋でいいですか?
それとも定食屋?」
「社長どうする?」
沖が尋ねた。
完全にため口だ。
内心ヒヤヒヤした。
宗一郎氏が
「焼き鳥にビール、いいじゃないですか。
行きましょう」
4人は銭湯を出た。
外はひんやり冷たい。
湯気が立つ体に心地良い。
原が先に覗き込んだ。
「親父さん、4人空いてる?」
「いらっしゃい!
ちょうどテーブルが空いてるよ」
店はカウンター数人分と小さいテーブル1つだ。
「今日はとっておきのメニューがあるよ。
トマト焼きとりんご焼き」
店主は常連の気に入ったお客にしか出さない隠れメニューがある。
原は
「嬉しいです。
今夜は更に酒が進みそう・・・」
4人はテーブル席に腰掛けビールで乾杯した。
乾杯!
風呂上がりの喉元に染みわたる。
至福のひとときだ。
次々と運ばれる焼き鳥をつまみながら宗一郎氏は店に飾ってある零戦の
写真を眺めていた。
「俺は戦争の時、兵隊に行くはずだったんだが何故か身体検査の時にな、
色盲と診断され兵隊に行けなかったんだ。
これも何かの運命のいたずら?
俺は色盲じゃないんだけどな〜」
「同級生や沢山の友人が戦争に散った・・・
俺だけ生き残り申し訳ない気持だ」
祐一が
「社長、戦後こうやってホンダという素晴らしい会社を作り若者達に夢を与えた
んですもの。
亡くなられた戦友だちも、きっと喜んでますよ」
少ししんみりした話題になった。
宴会部長の沖が
「田中さん、飲みが足りないよ!
どんどん飲もう・・・」
場を盛り上げた。
宗一郎氏が
「俺は非科学的なタイムスリップ?そんなことは信じられないのだが現に二人が
目の前にいる。
なんだか運命的なものを感じるのだが・・・」
祐一が
「私も非科学的なことは信じません。
ただ私達の時代、タイムスリップは物理学の世界では真剣に議論されてます。
科学者の大半が相対性理論によると特殊な条件が整えば原理的には過去への
タイムスリップが可能・・・って。
ただ私が考えるに原理的に可能であっても人類がタイムマシンを開発することは
ないだろうと考えてます。
もし未来の人類がタイムマシンを開発したとします。
そうだったら今の時代、そして2020年にも未来からの人類の観光客で一杯に
なるはずです。」
さすがにインテリの祐一、知的な説明をしていた。
隣の沖はチンプンカンプンという顔をしていた。
宗一郎氏も
「田中さん、俺は小僧時代勉強というのが大嫌いでな通信簿とやらも親などには
見せられんかった。
だが機械いじりが人一倍好きで物真似が嫌い!
田中さんは藤澤タイプだな。
頭がいい!
俺には相対性理論・・・?
さっぱりわからん」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E5%AF%BE%E6%80%A7%E7%90%86%E8%AB%96
「理屈は抜きにしてどうやってこの時代に?」
「沖、お前も濃霧で頭痛がしたんだよな」
「御殿場に近づくにつれ霧が濃くなって頭がガンガン痛くなって仕方なく車の
中で仮眠したら・・・この世界?
田中さんがいて本当に良かったよ〜
気が狂いそうだったもん」
祐一も
「目が覚めたら石ゴロゴロの原っぱ?
頭が混乱しましたよ。
たしか駐車場に入れたはずなのに・・・
そうこうしていくうち走っていたら原さんの乗るパトカーとすれ違い職務質問をされ
今に至っているわけです」
「不思議なことがあるものだ」
宗一郎氏は腕組みをしながら考えた。
「田中さんと龍也に何か運命的なことがあるのかな」
沖は
「俺は社長と原さんに出会えただけで満足!
もう今でも夢を・・・
そんな感じですよ」
原も
「私も最初目撃した時はびっくりなんてものじゃありませんでした。
こりゃ大変だ!で即追いかけましたもの」
「原さん、あの時の目つき、怖かったですよ 笑」
宗一郎氏が
「2020年って日本に資源がないって言ったよな」
「はい」
「日本は戦争中も南方から石油や資源を輸送船で運んだ。
しかしアメリカの潜水艦狼戦法で味方の輸送船はことごとく撃沈された。
資源がなければ日本は干上がるのみ。
横綱と子供の相撲のようなものだ。
大和魂なんてくそくらえだ。
アメリカとの戦争は無謀だった・・・
しかしな、俺は日本地図を見ていつも思うんだ。
本当に日本に資源がないのか?とな。
俺は人と違って物真似も嫌いだが発想も人と違う。
日本地図を見ていて資源は陸地の下にあるだけとは限らんだろ?
海の下にだってあるはず!
日本を見てみろ。
4周海に囲まれ伊豆7島まである。
その大陸棚に資源が眠ってないか?」
祐一ははっとした。
日本列島は長い島国。
昭和37年と違い沖縄も返還されている。
国土は狭いけど領海の部分まで入れればかなりの広さだ。
宗一郎氏は
「2020年といったら技術も相当進歩しているんだろう。
海の底を調べるのは簡単じゃないのか?
もし石油でも鉄鋼でも金でも資源が見つかれば日本経済はまた不死鳥のごとく
蘇るんじゃないのか」
「あとカメラで太陽電池とか言ったよな。
2020年は太陽から電気を補っているのか?」
祐一は
「太陽・風力・水力・地熱・原子力・火力・水力・他様々ですが自然エネルギーに
方向を定めようとしているのですがまだ安定したものになってません。
太陽電池も雲に隠れれば効果は薄いですし・・・」
「2020年は人類も宇宙に積極的に行っているんだろう」
「はい、有人飛行も可能です」
「もっと発想を変えなさい!
太陽が雲に隠れるなら隠れない場所に行けばいいじゃないか」
「えっ?」
「宇宙に発電所を作ればいいんだよ」
祐一は手を叩いた!
そうか!地球の大気圏に太陽光発電所を打ち上げればいいんだ。
そうすれば全世界に電気を供給出来る。
地球の地面にいくら発電所を作ったって限界がある。
領土問題や資源の奪い合いで戦争にも発展する。
宇宙だったら領土問題などない。
太陽光なら資源も無限だ。
日本が率先して計画すればどん底の日本に再び仕事が溢れ活気が出る。
祐一は宗一郎氏のなんと発想に柔軟さ。
改めて敬服した。
「社長、素晴らしい考えです。
すごい発想力です」
「だから俺は物真似が嫌いって言っただろう」
沖・原も宗一郎氏の話を真剣に聞いていた。
沖は
「社長、すげぇ〜頭エェ〜〜!」
「俺は劣等生だよ。
龍也と同じだ 笑」
「あちゃ〜」
沖は頭を掻いていた。
「だけどな龍也!
俺はお前にも期待している。
俺に似て不良だ!」
「えっ?」
「そんな否定することもないだろう。
若いうちはそのくらいの元気さがあっていい。
藤澤や田中さんのように優等生も必要だ。
だけど俺や龍也のように劣等生も使い道あるぞ!」
「俺なんか一生メカニックで・・・」
「龍也は見所がある!
俺に似て発想に柔軟性がある。
2020年は電気自動車ばかりと言ったよな。
世の中の車好きの人間がみんな電気自動車を望んでいるか?
仮に1%、Sのようなスパルタンな車が欲しいというユーザーがいる。
ガソリン代が高騰してもガソリン車に乗りたい!
絶対沢山いるはずだ!
ホンダを含めて世界の自動車メーカーが、そういう車を作らないなら
作ればいい。
技術のノウハウも必要だから最初は血ににじむ苦労だろう。
整備工場から始めたっていい。
ガソリン・スポーツカー専用の工場をな・・・
俺だって22才の時に修理工場を始めたのが、きっかけだ。
それがホンダ自動車の産声だ!」
沖は真剣そのもので聞いていた。
武者震いのように震えていた。
宗一郎氏は
「田中さん、龍也、原さん、男なら夢を大きく持て!
1度生まれてきた人生、冒険してみろ!!
田中さん、あんたは藤澤タイプだ。
頭もいい!
政治家をやって日本を立ち直らせればいいんじゃないのか?」
祐一は数日前、父の圭一から言われた「政治家をやってみないか」の
言葉を思い出した。
その時は俺なんかにとんでもない!と断ったが社長の説得には妙に
うなづいてしまった。
もしかしたら俺でも・・・
祐一ははっと気がついた。
「社長、大変夢のある元気づける話ありがとうございます。
しかし今昭和37年。
2020年ではありません」
「昭和37年に来れたなら帰ることも出来るだろう。
濃霧に遭ったんだろう。
頭痛がしたんだろう。
また濃霧の日に現場へ行ってみたらどうだ」
祐一は正直あきらめていた。
2020年には戻れまい。
このまま沖とこの時代の漂流者として彷徨う・・・
そう覚悟していた。
宗一郎氏のアドバイスは凄い勇気をくれた。
真っ暗闇のトンネルの中で一条の光を見た感じだった。
「原さん、あなたも警察官。
夢を大きく持ちなさい!
警視総監になってやるんだ!
そのくらいの心構えで仕事に励まなくちゃ!」
3人は飲み食いも忘れ真剣に聞いていた。
親父さんが
「あいよ!
おまちどおさん!!
リンゴとトマトの丸焼きだ」
そう言いテーブルに置いた。
ベーコンで巻いたリンゴとトマトを備長炭で熱く焼いた親父さんの自慢に
一品だ。
「なんだ、今日は全然食が進まないね〜」
沖が
「いやこれからが本番です。
店のビール全部飲んじゃうよ〜」
さっきの真剣な顔から、いつものひょうきんな沖になった。
「社長!田中さん、原さん
どんどん飲もう・食べようよ!!」
そう言いトマト巻きを手に取りパクッ!
「アチチチチッ・・・!」
親父さんは
「おいおい、いきなり口にしたら火傷するぞ。
あわてんぼうだな〜」
一同笑いが出た。
祐一も
「沖は相変わらずだな〜」
しかしこれが沖のいいところ。
「龍也、お前もあわてんぼうだな。
せっかちというか俺とそっくりだ!」
さっきまでの固い話題から沖の火傷事件で一気に話がほぐれた。
それからはビールが進んだ。
4人は気持ち良く飲んだ。
一人は世界でも有名な偉大な人物なのに全然偉ぶらない。
それどころか沖と肩を組み合って談笑している。
祐一は
「原さん、こんな幸せなひととき、ないですよ」
「私もです。
田中さん、沖さんの人柄、大好きです。
ずっ〜と一緒にいてもいいですね」
「私もです」
2020年に帰りたい未練もあるが、もし戻れる機会があったら俺と沖は
どんな心境だろうか。
複雑な気持ちだった。
2020年の今頃、妻の加奈は真剣に心配して捜索願いを出しているに
違いない。
両親も眠れぬ日々だろう。
そんな状況の中、俺はこうやって楽しく酒を飲んでいる。
それを思うと複雑だった・・・
考えても仕方ない。
すでにビール10本は超えていた。
宗一郎氏と祐一は顔を真っ赤にしていた。
沖と原さんはまだまだ・・・という顔。
社長のことを気遣って
「原さん、沖、どうする?」
沖は物足りなさそうな顔。
「社長、日本酒飲める?
一杯だけ行きましょうよ」
「ったく・・・」
祐一は苦笑した。
沖のペースで飲んだら宗一郎氏は2日酔いになってしまう。
「一杯だけだぞ!」
「は〜い」
祐一は親父さんにこっそり勘定を聞いた。
もし足りなければ申し訳ないが原さんにお借りしなければ・・・
恐る恐る聞いたら手持ち金ギリギリだ。
ほっとした。
わからないよう先に会計を済ませた。
時間はあっという間に過ぎお開きにした。
宗一郎氏は
「飲んだ!食った!
いや〜楽しい飲み会だった」
4人は
「ご馳走さま!」
そう言い店を出た。
祐一が最後に親父さんにご馳走さん!と言ったところ
「2020年に戻れたらいいね」
会話が聞こえていたようだ。
小さい店内、聞こえないほうがおかしい。
前に親父さんから「俺の勘は当たるんだ」の言葉を思い出した。
信じられない気持だったろう。
沖は足取りも軽く社長と歩いていた。
祐一は少しふらつく。
アパートに着いたら酔いで寝てしまいそうだ。
部屋に入り社長・沖・原さんはパソコンの画面に見入っていた。
社長のおぅ〜!の連発。
Sの爆走そして2020年の東京の風景を見ているのだろう。
眠気の中、ふと宗一郎氏の言葉「海底に眠る資源、宇宙太陽光発電、
政治家、そして沖の大きな夢・・・」
それを想像しながら寝込んでしまった。
リリリリリ・・・・
目覚まし時計が鳴った。
う〜ん・・・
祐一が腕時計を見ると5時。
あれからずっと寝てしまったようだ。
原さんもすぐ起きてきた。
「おはようございます。
田中さん、ぐっすり眠れましたか」
「おはようございます。
すみません、先に寝てしまって。
あれからまた飲んだんですか?」
灯りの付いた部屋を見ると日本酒とコップがあった。
「3人で少しですけど飲みました。
社長と沖さんの会話が面白く寝るのがもったいないくらいで」
「ったく沖は社長も今日からまた忙しい身分なのに」
話していくうち社長も起き出した。
二人は
「おはようございます」
「おはよう!」
沖は・・・と見るとまだ高いびきを掻いている。
大物の証か?それともただの無神経か?
「社長、すみません。
沖の子守をしてもらって・・・」
「龍也の楽しい話を聞かせてもらって有意義な時間でした。
時間さえ許せばもっと聞きたかったくらいです」
「沖〜!時間だぞ、起きろ〜〜」
更にいびきが大きくなる。
「この野郎・・・」
「いや寝かせておきましょう。
私は6時の電車で帰ります」
「社長、朝食は?」
「いや、ありがとう。」
「田中さん、昨日は2020年のことをよく知らないのに生意気なことを
言いました。
だけど二人は見所がある。
是非夢を追いかけて夢を掴んでください」
「昨夜龍也にも伝えました。
あなたも龍也も若いからこれからの日本を立ち直らせてください。
日本人は終戦直後の焼け野原からも立て直したんだ。
また不死鳥のごとく復活します」
そう言い立ち上がり出かける準備をしだした。
沖はまだ寝ている。
祐一が沖をゆすった。
「沖!沖〜〜」
う〜ん・・・・
しばらくして薄目を開け
「沖、社長が帰ってしまうぞ〜」
ムクムクッと起き出した。
「あっ社長、おはようございます」
「おはよう!」
「昨夜はうまい酒をありがとう。
楽しかったよ」
「えっ、もう帰るんですか?
早いよ〜」
「沖が起きるのが遅いんだ」
慌てて起き出し
「何時の電車で帰るんですか?」
「もうまもなく出ようと思います」
えっ〜って顔している沖に
「龍也、またいつでも会える。
頑張って夢掴めよ!」
「もし二人が2020年に戻って夢果たせたら俺のところに報告に来い!
そうか・・・
2020年じゃ俺は生きてないか。
じゃ墓へ報告に来い」
二人はしょんぼりしていた。
宗一郎氏は
「何、朝からしょげた顔しているんだ!
元気出せ!」
沖が
「社長、もう出ちゃうんですか?
ちょっと待って・・・」
慌てて服を着だし
着替え用のシャツを取り出し
「原さん、油性のマジックないですか」
そう言いマジックを借り
「社長、Tシャツにサインください
このシャツを見ていつも社長を思い出します」
サインをした社長は
「俺の弟子だ!
頑張れよ!」
沖は無言でうなづいた。
「田中さんも2020年に戻れるのを祈ってます。
頑張って日本を立て直してください」
「はい、ありがとうございます」
原が
「社長、車で駅まで送ります」
「悪いな、じゃ頼もうか」
4人は駐車場に降りた。
沖が唇をかんでいる。
別れるのが辛いようだ。
「社長!ありがとう」
「社長、気をつけて。
ありがとうございました」
二人は社長の手を握りお礼を言った。
S500が発進して行った。
沖はいつまでもSを目で追っていた。
「沖・・・
頑張ろう!
いつか帰れたら社長のアドバイスを参考にお前は事業をスタート。
俺は・・・政治家?
勉強しなくてはな」
しばらくして原さんが戻ってきた。
「原さん、今日Sのアライメント調整させてください。
まだエンジンの調整しかしてなかったし・・・」
沖が
「俺もエンジンバランス取りさせて。
まだ調整しかしてないし」
「今日は天気もいいし私もやります。
またSが別車になっちゃう」
沖が工具をガチャガチャ持ってきた。
沖にとって料理人の包丁のようなものだ。
18才からメカニックでローンを組んで買った片腕のような相棒。
スナップオンだ。
http://www.snapon.co.jp/
世界一流の工具だ。
「沖さんはメカニックだから素晴らしい工具持ってますね。
私なんかSに積んであった車載工具しかないもんな」
「大丈夫!
俺に任せればどんなエンジンも絶好調にさせちゃうよ」
「工具の使い方、教えてください」
「あいよ」
「沖、工具箱に糸あるか?」
「あるよ」
「あと水準器とノギス・・・」
「何でも任せて!」
そう言うとゴソゴソ出した。
沖の工具箱ななんでも箱だ。
祐一は感心した。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88
4輪アライメントは簡単に言うとタイヤの角度を変えることだ。
車は使っていくうち微妙に角度が狂う。
本当に走るのが好きな車好きには欠かせない整備だ。
専門ショップに頼むと目の飛び出る整備料金を請求される。
祐一のやろうとしている調整はあくまで糸を使用した4輪アライメントだ。
「田中さん、アライメントも教えてください」
「簡単です。
じゃSを水平な地面の場所に移しましょう」
原がSを移動した。
駐車場内の水平な場所を探し祐一が
「ハンドル角度水平にしてください」
沖もアライメントを手伝った。
祐一と沖のタッグなら10分もあれば簡単に出来る。
これで原さんのSはコーナリングマシンだ。
祐一と原、沖二手に分かれ糸を使いタイヤの微調整を行う。
原は真剣そのもので見ていた。
「田中さんさ〜ん、そっち出来た?」
「いや、まだ・・・・」
「出来た〜?」
「もう少し・・・・」
「ったく・・・」
さすがに本職の沖の手際は早い。
祐一も手慣れたはずだが沖にはかなわない。
「田中さん、まだまだ修行が足りないね」
糸を引き角度の微調整をやった。
沖が
「原さん、これで俺達Sも峠でかなわないマシンになったかも。
あとエンジンが冷えたらエンジンバランス取りしてあげる。
更にエンジンが気持ち良く吹き上がるよ」
「嬉しいですね〜
じゃ朝食にしましょうか」
「やった〜
俺、腹ぺこ・・・」
「沖、昨晩あれだけ飲み食いしてもうガソリンがないか。
燃費の悪い奴だ」
「若い証拠ですよ」
「この野郎 笑」
3人はアパートに戻った。
「原さん、電話借りていいですか?
今夜、バイトに行こうと思って・・・」
「いいですよ」
電話をしたら無愛想な応対だったが御殿場駅7時集合だった。
「田中さん、夜は冷えるから防寒着持って行ったほうがいいですよ」
「倉庫にあるでしょう。
大丈夫です」
「だけど昨日は楽しかったな〜」
沖サイン入りのTシャツを取り出し
「俺の一生の宝物。
だって宗一郎氏の弟子だもの!」
胸をはっていた。
「弟子・・・?
普段のお前を見ているとな〜」
「任せてよ!
俺だっていざとなれば」
朝食を済ませ3人は再びSへ。
「原さん、半日くらいかかるけどエンジン分解して別物のエンジンに
仕上げるからね」
「えっ〜そうなんですか。
だって今日はこれから夜勤仕事なのに」
「大丈夫、今までの恩返しですよ」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB
工具を取り出しエンジンを手際よく分解しだした。
油まみれになりながらもエンジンパーツ1つ1つを丁寧に清掃・調整しつつ
原さんに説明していた。
整備をしながらも
「田中さん、原さん、俺、師匠(宗一郎氏)から言われたように、もし2020年に
戻れたら若者が車に興味が出る世の中にしたい。
小さい整備工場でいい。
スポーツカー専用のショップで電気自動車は出入り禁止 笑
いつか原さんのようなS500を開発出来たらいいな〜」
沖の普段のおちゃらけな目ではなくギラギラした頼もしい若者の目だった。
駐車場の下にはビニールがひいてある。
そこにはSのエンジンパーツがずらり・・・
祐一は沖の手際を見て
大したものだ。
ホンダの車とはいえ、まるで一流の料理人のような手さばき。
見ていて惚れ惚れする。
「俺も宗一郎氏から言われた政治家・・・」
2020年の日本は国民の心まで荒廃しきっている。
政治も腐敗しきり若者もどんどん日本に見切りつけて海外へ行っている。
沖などは珍しい存在だ。
いつ戻れるのかわからないが俺も日本を立て直すために、いっちょ男になるか!
「原さん、そこ押さえて・・・」
エンジン調整に夢中の沖。
10月だというのに汗びっしょり。
調整しながらも工具やエンジンの要所要所を原に教えている。
原は無言でうなづいている。
「沖、エンジン調整だけで改造するなよ。
ノーマルでも十分ポテンシャルの高い車なんだから」
「師匠のDNAが入った車だもの。
怒られちゃうよ〜」
あっという間に時間は過ぎエンジン組み立てに入った。
下のビニールには磨き込まれたパーツがずらり。
沖の手際良さでどんどん味付けされていく。
料理人が自慢の一品を仕上げるみたいだ。
沖の手はもう真っ黒、
油で汚れている。
光り輝いている工具も取っては油でくすんでいる。
祐一と原は沖の包丁裁きに見とれていた。
「さぁ〜終了!!」
「原さん、エンジンかけてみて」
原が運転席に座り始動。
普段から気持のいい音楽を奏でるS500。
まるでこの世の名曲?というようなエンジン音。
「少し試乗してみてください」
原は名曲のようなエンジン音を響かせて走って行った。
「沖、凄いな〜
まだ3時だぞ」
「久々に腕が鳴りましたよ」
そう言いながら汚れた工具1つ1つを磨いていた。
まるで包丁を丁寧に研いでいるかのよう。
試乗で出かけたのに戻ってこない。
「沖・・・
どこかでエンコしているんじゃないのか?」
「遅いね〜」
しばらくして戻ってきた。
降りてくるなり
「沖さ〜〜〜ん!
凄い!
何これ?
まったく別車!
気持ち良く回るし足回りも全然違う」
戻ってこない理由がよくわかった。
沖料理人の手にかかればどんな車もスポーツカーだ。
「原さん、良かったね。
喜んでもらえて嬉しい」
「疲れたでしょう。
家で休みましょう」
3人は部屋に戻り原は台所に立った。
何やら米を研いでいる。
「原さん、食事簡単でいいよ」
今夜の弁当です。
おにぎりですが作りますよ。
「すみません」
「私は今日6時には家を出ます。
鍵預けておきますから」
「一緒に出ます」
軽い食事を済ませて3人は時間まで昼寝した。
さぁ〜今日の倉庫作業はどんなものか・・・
祐一は不安一杯だった。
6時になり3人は家を出た。
祐一の手には原さんお手製のおにぎり弁当。
嬉しいかぎりだ。
二人は御殿場駅に向かう。
外は肌寒い。
倉庫に行けば防寒着もあるだろう。
駅に着き少し待ってると、それらしき作業員が集まりだした。
みんな知らない顔・顔・・・
菊池さんはいないのかと思っていたら、しばらくして祐一と沖の姿を確認
するや大きく手を振ってきた。
「なんだお前ら、懲りずにまた来たか!」
「また世話になります。
宜しくお願いします」
「今夜も荷物一杯だぞ。
泣きっ面するな」
「お手柔らかに・・・」
話していくうち、ボンネットバスが来た。
今日は知っている人がいて心強い。
先日はまるで護送車にいるような気分。
不安で一杯だった。
倉庫に着き、いつものように点呼。
菊池と一緒に並んだ。
監督らしき人が菊池、祐一、沖を呼び
「菊池、今日はトラック運転だ。
運転手がみんな風邪でダウン。
荷物が倉庫に溢れているんだ。
3人で3台トラックで一晩フル回転だ」
「そこの二人運転出来るよな」
二人は
「運転は出来ますが免許証を持ってきてません」
本当は免許証は持参してあるが、まさか見せられない。
「運転出来ればいい!
4トン車だ。
隣町の倉庫往復ピストン輸送だ」
菊池が
「今夜は楽な仕事だ。
向こうに行けば作業員もいる。
少しは楽出来るぞ」
倉庫場に行くと荷物が崩れんばかりに山積みになっている。
駐車場にトラックが3台。
菊池が
「トラックはあれだ。
運がいいな〜
新車だぞ」
見るとボンネットトラックが3台置いてある。
2020年の時代からしたら博物館入り間違いなしの骨董品だ。
「おい、倉庫につけようぜ」
菊池はトラックに向かい歩き出した。
二人はそのあとをついて歩き運転席に乗り込んだ。
なんというシンプルさ・・・
ラジオすらない。
運転に必要な物以外まったくない。
運転席から菊池が大声で叫ぶ。
「お〜い、バックで倉庫へつけろ〜」
祐一はエンジンをかけた。
すごい爆音!
すごい振動だ。
ギヤを入れようとしたら入らない?
えっ???
「早くしろ〜
何やってんだ!」
隣の沖を見ると、すぐわかったようでトラックを発進させた。
菊池が降りてきて
「何やってんだよ!!!」
「すみません、ギヤが入りません」
「お前、ダブルクラッチだろう」
「ダブルクラッチ?」
沖が急いで走り出してきた。
「田中さん、昔の車なんだからダブルクラッチ。
クラッチを2回踏んでギヤチェンジして〜」
菊池が怪訝な顔していた。
「昔の車・・・?」
祐一は
「あっそうか!」
ダブルクラッチなど初めての経験。
何度か試行錯誤しつつ、やっとギヤが入った。
ハンドル操作をしようと思ったら動かない。
えっ?
力を入れたら動いた。
パワステなどない重ステだ。
まるでヘラクレスのような怪力が必要。
「こりゃ〜今夜も苦戦するぞ」
祐一は冷や汗というか汗びっしょりだ。
なんとかバックで車を移動。
「お前等、本当に車の免許あるのか?」
菊池は不機嫌そのものだ。
「急いでやらないと山のような荷物裁けないぞ」
そう言い荷物を積み込んだ。
幸いにも荷は軽い。
満載にして菊池から地図をもらった。
「行き先はここだ。
明日の朝までピストン輸送だ。
俺のあとついてこい」
ひょいと乗り込んだ。
二人は慌てて乗り込みダブルクラッチをしながらギヤを入れ発進。
ハンドルが重い・・・
沖のような力持ちなら大丈夫かもしれないがハンドル1つ切るのも大変だ。
夜道を3台連なって走る。
菊池はかなり飛ばす。
祐一も沖も走り屋。
走ることは自信あるが慣れない車。
特にギヤ操作に悪戦苦闘だ。
その都度、菊池のトラックと距離が離れる。
苦戦しつつ隣町の倉庫に到着。
「おめぇら!
本当に使えない奴らだな。
運転もまともに出来ないのか!」
降りるなり大目玉を喰らった。
「すみません」
二人は謝った。
沖が
「田中さん、ハンドル操作辛いでしょう。
俺も大変・・・
パワステに慣れているから、まるでロックされているみたい」
「あ〜、ハンドルも大変だがクラッチがな・・・
まだ慣れない」
作業員の手伝いもあって、すぐ荷は捌けた。
「行くぞ!」
菊池は義足で足が悪いのに身も軽く運転席に乗り込む。
さすが、もと戦車兵だ。
祐一は妙に感心した。
さっきよりかはクラッチ・ギア操作も慣れてきた。
沖の走りもそんな感じだった。
帰りは編隊飛行ならぬ3台きれいに並んで倉庫へ戻った。
何度か往復していくうち、祐一は周りの風景を見る余裕が出来
走っている道路が国道246とわかった。
もしや・・・と思い走っていると見覚えのある場所。
まもなく石がゴロゴロしている空き地があった。
「あっ!!!」
俺がこの時代に迷い込んだ場所だ。
あっという間に通り過ぎた。
場所を覚えておかなければ・・・
いつか帰るためにも。
往復していくうち、夜の休憩の時間に入った。
菊池、祐一・沖は休憩室に入り沖がお茶を入れた。
菊池が
「今夜は楽だろう。
しかし1回目はどうなることやら・・・
使えねぇ〜って思ったけど今はきれいに付いてくる。
この野郎・・・と思って峠を飛ばしてもピッタリだ。
不思議な連中だぜ」
「慣れない車でして」
「さっき昔の車・・・とか言ったよな。
俺達が今日乗っているトラック、今年買ったばかりの新車だぜ」
「・・・・・・」
返答に困った。
「まぁいい、飯にしようぜ」
菊池は弁当をほおばっていた。
祐一と沖は原さん手作りのおにぎりを食べた。
仮眠をしつつ深夜の仕事、次は朝まで再びピストン輸送だ。
難なくこなし、山のように積み上げていた荷物もだいぶすっきりした。
トラックの凄い爆音と振動で耳がおかしくなったような気分。
腕まで痺れている。
朝5時、終了した。
「ふぅ〜、今日も終わった・・・」
「田中さん、今日はいい経験したね」
「あ〜、無事故で終わって良かった。
何か事を起こしたら原さんに迷惑かけるしな」
事務所へ行き給料をもらった。
深夜手当もあるから日給750円だ。
嬉しい。
これで生活が食いつなげる。
菊池が
「これから一杯!といきたいところだが朝だもんな。
またいつでも来いや!」
「使えない俺達だけど宜しくお願いします」
そう言い御殿場駅で別れた。
アパートへ向かう途中、
「沖、トラックで走った場所246ってわかったか?」
「途中でわかったよ。
あっ俺が仮眠した場所だ」
「俺も石ゴロゴロの空き地、場所を確認したよ。
いつか帰れることを願ってな・・・」
「前のように濃霧が出たら戻れるかな。
だけど原さんと別れるの辛いし・・・」
「あ〜、原さんにはどんな言葉を使っても感謝出来ない」
歩いていくうちアパートに着いた。
部屋の灯りはついている。
原さんが帰宅している。
「ただいま〜」
「お帰りなさい!」
アパートに着いたらホッとした。
眠気と疲れが出た。
「疲れたでしょう」
「意外と昨夜は楽でした」
原さんが警察官という職のため、あえて運転した・・・を言わなかった。
「原さん、昨日私が仮眠して今の時代に迷い込んだ場所通りました」
「あっそうなんですか。
場所は私もわからないしな〜
出会った場所は246の途中ですものね」
祐一はふと思った。
原さんと出会ったパトカー、あの日から何日が経ったんだろう・・・
計算するとまだ今日で6日目。
「まだ6日か。
もう何年もいるみたいだ」
僅か6日でいろんな人と出会った。
原さん、鈴木刑事課長、零戦乗りの焼き鳥屋親父さん、口は悪いけど義足の
戦車兵の菊池、そして本田宗一郎氏・・・
いろんなことを教わった。
原が用意してくれた朝食を3人で食べたら睡魔に襲われた。
「眠いでしょう。
今布団をひきます」
3人は眠り込んだ。
何時間経っただろう。
祐一は目が覚めた。
見ると二人はまだ寝ている。
さて・・・今日はやることないな。
沖は相変わらずいびきをかいている。
しばらく何も考えず外を眺めていると今日は天気が悪そう。
「霧か・・・」
濃霧が出ても戻れるのかな?
戻れなかったらこの時代に一生いるのか、
この際、宗一郎氏に世話にでもなるか。
祐一は一人でニヤニヤ笑っていた。
しばらくして原さんが起き出した。
「あ〜、よく寝た!
熟睡しましたよ」
「そりゃ良かった。
警察官も激務の仕事ですからね」
高いびきをかいていた沖も起き出した。
大きく背伸びをして
「相変わらず早起きですね」
「沖、もう夕方だぞ。
俺も今日は寝過ぎた」
「今日はやることないな」
「テレビやゲームで時間つぶしましょうよ」
沖がテレビのスイッチを入れた。
何気なくテレビを見ていると天気予報になった。
「今夜の御殿場地域は濃霧になるでしょう」
祐一は電気がビリビリッと全身を走った。
「沖!沖〜」
沖はびっくりした顔していた。
「どうしたの?」
沖はテレビを見ていなかった。
キョトンとしていた。
原も同じだった。
「今、天気予報で今夜の御殿場、濃霧らしいんだ!」
「えっ!」
沖が立ち上がった。
「田中さん、それではもしかしたら・・・」
「もしかして?」
原が
「先日、濃霧に出会った時間って何時頃ですか?」
「えっと深夜です」
「もう少し様子みましょう。
まだ夕方だし同じくらいの時間帯がいいんじゃないかと」
たしかにそうだ。
まだ夕方、これから夜。
慌てても仕方ない。
天気予報をじっくり見よう。
祐一は複雑な心境だった。
たぶん沖も同じだろう。
濃霧が出るのは嬉しいけど原さんと永久にお別れ・・・
それはいやだ。
祐一と沖にとって恩人中の恩人。
恩を仇で返すようなものだ。
3人はテレビを見ながら黙り込んだ。
しばらく時間が過ぎ再び天気予報が始まった。
3人は釘付けのように見入った。
やはり同じように「濃霧予報」だった。
原は
「田中さん、沖さん、署に行きましょう。
荷物をまとめて!」
「えっ!」
せかすように原は二人を説得した。
「二人には2020年にご家族がいるんです。
このチャンスを逃してはいけません」
沖が
「俺、2020年に帰れるのは嬉しいけど原さんと別れるのは嫌だ!」
駄々っ子のようになった。
「濃霧が出たとしても戻れるという保証はないかもしれません。
だけどチャンスを逃す手はないです。
もし2020年に戻れたら、また御殿場署へ私を訪ねに来てください。
警察は退職しているけどまた会えますよ」
「原さん・・・・」
沖は原の手を握った。
手が震えてた・・・
「俺、なんも恩返ししてない。
ごめんよ〜」
「何言ってんですか。
沖さん、昨日も油まみれになって私のS整備してくれたじゃない。
もう別車ですよ」
「さぁ〜出かける用意しましょう。
私から署の上司を説得しますから」
祐一が
「沖、そうしよう。
いいチャンスかもしれない。
2020年に戻れるかわからないけど戻ったら一番に原さんを尋ねよう。」
沖はまだ渋々用意していた。
昭和37年の今を相当気に入ったようだ。
祐一がこっそり沖に声かけた。
「沖、今朝もらった給料、原さんに預かってもらおう」
「はい」
祐一に手渡そうとした時
「あっ、ちょっと待って・・・」
部屋の隅に置いてある沖の愛用しているスナップオンの工具箱を
手にした。
「田中さん、これも預かってもらう」
祐一は頷き
「原さん、これとこれ、預かってもらえませんか?」
「田中さん、沖さん、二人の汗水垂らした給料、受け取るわけに
いきません。
ましてや工具、とんでもない!」
「いや、原さんには言葉では言い表せないくらい世話になりました。
受け取ってください。」
沖が
「工具箱を指差し、この工具は俺にとって師匠のようなもの。
こいつでメカを勉強しました。
工具も大事に使えばそれに応えてくれます。
原さんのようなSを整備出来るなら、こいつ喜んで残ってくれますよ」
「わかりました。
それでは受け取るではなくお預かりします。
もし戻れなかったらお返ししますので」
「こんな恩返ししか出来なくてごめんなさい」
二人は頭を下げた。
「私こそ楽しかった。
寂しいですけど戻れることを祈ってます」
「さぁ〜行きましょう!」
3人は御殿場署に向かった。
外はうっすら霧がかかっている。
3人とも無言だった。
戻れるかもしれない喜びと原さんと別れる寂しさ。
祐一の心境は複雑だった。
沖も同じだろう。
このまま昭和37年にいてもいい・・・
そんな心境かもしれない。
だけど俺達はここにいちゃいけないんだ。
俺達は2020年の人間。
荒廃しきった2020年を救うために天がいたずらしたのかもしれない。
そう思うと気が少し楽になった。
3人は署に着いた。
3人とも2階に上がり部屋に入った。
鈴木刑事課長が座っていた。
「原巡査、おぅ、どうした?
おや、田中さん、沖さんまで」
原が
「実はさっきの天気予報で御殿場地方が濃霧の予報です。
二人がこの時代に迷い込んだのも濃霧が原因の1つです。
二人のSを現場へ連れて行きたいのですが」
刑事課長が腕を組んで考えた
「原巡査、二人の車は現在のナンバーじゃない。
正式には公道を走れないんだよ」
「そこをなんとか」
原は深々頭を下げた。
刑事課長はしばらく考えたあと、
「原巡査、明けで悪いが制服に着替えろ!
特別だ。
田中さんと沖さんの車の前後をパトカーで囲んで現場へ行く。
急いで用意してくれ」
田中と沖は
「無理言ってすみません。
ありがとうございます」
「田中さん、沖さん、ちょっと待っててくっださい」
ロッカールームに消えた。
刑事課長が
「戻れればいいですね。
私も正直お二人の今後をどうしようか頭を悩ましていました。
原もえらい世話になりまして」
「世話になったのはこちらです。
まるで何年もいたかのような充実した日々でした」
原が制服姿で出てきた
「お待たせしました」
いつ見ても原さんの制服姿は格好いい!
「それでは準備します。下に降りて待っててください」
鈴木刑事課長が
「どれ、私も同行させてもらうかな」
祐一と沖は下に降りS2000のほうへ向かった。
カバーを外した。
鍵を差し込み2台は名曲を奏でた。
原も降りてきて
「さすがにいいエンジン音です。
惚れ惚れするな〜」
沖が
「田中さん、俺も田中さんの現場へ行くよ」
「沖はたしかバス停のところだったろう」
「俺、もし違う世界に行ったら嫌だ!
田中さんと一緒に戻りたい!!」
祐一は少し考えたあと
「わかった。
一緒の場所にしよう。
そのほうが俺も心強い!」
すでに時間は夜10時。
「時間はまだ早いけど行きますか?」
「はい」
祐一と沖は頷いた。
前後に赤色灯を点滅したパトカーに囲まれ祐一と沖は出発した。
先導のパトカーに鈴木刑事課長と原さんが乗っている。
道のりとして車で15分くらい。
霧も予報通り濃くなってきた。
祐一は運転しながら頭痛がしてきた。
「えっ?」
この前とまったく同じだ。
もしかして沖も・・・・
だんだん視界が悪くなってきた。
昨日、場所を確認して良かった。
ここまで霧が濃いとわかりづらい。
原さんには場所は教えた。
誘導してくれるだろう。
後ろの沖の車もかすんで見える。
どんな心境だろうか。
現場に着いた。
4台ともハザードを点滅しながら停車している。
「田中さん、ここでいいですか?」
「はい」
祐一は頭痛で返事するのも辛かった。
「大丈夫ですか?」
「この前とまったく同じです」
「沖、お前はどうだ?」
頭を押さえつつ
「俺も頭が痛い・・・」
「それでは誘導します。
石が沢山あるから気をつけて」
原は懐中電灯を照らしながら誘導した。
オーライ・・・オーライ・・・
2台はなんとか石の合間を避けて停車した。
二人は再度、降りてきて刑事課長・原に挨拶した。
原が
「二人がきちんと2020年に戻れるよう私と課長はパトカーに乗って
見守ってます」
「ありがとうございます。
本当にありがとう」
祐一は深く頭を下げた。
沖が
「原さん・・・」
泣いていた。
「原さん、ありがとう!めちゃくちゃ楽しかった!!」
手を握り泣いていた。
原も泣いていた。
「沖さん、またいつでも御殿場署に遊びにきてください。
これが別れじゃありません。
2020年の世界で再び会いましょう。
待ってますよ」
祐一も泣いていた。
濃霧のせいで涙は見えないだろう。
たぶん鈴木刑事課長も目が潤んでいるかもしれない。
「田中さん、沖さん、
頭痛がしているなら帰れる確率、大きいです。
急いで乗ってください」
「はい」
二人は再び礼を言い車に乗り込んだ。
頭痛がひどい。
祐一は霞んでいる原さんが乗っているパトカーを見ながらシートを少し倒した。
祐一は少し不安だった、
もし戻れても2020年?
もしかして少しずれた世界?
そうしたら俺と沖は完全に時代の漂流者・・・
頭痛をしながらも不安が頭をよぎった・・・
チュンチュンチュン・・・
鳥のさえずりが聞こえた。
祐一は飛び起きた!
周りを見たら舗装された駐車場。
近くを見たら沖の車。
急いで降り沖の車のドアを開け
「沖〜!沖!!
起きろ!!!」
体をゆすった。
普段寝起きの悪い沖。
今回はすぐ飛び起きた。
「あっ、田中さん・・・
ここはどこ?」
不安気に聞いてきた。
「俺が前停めた駐車場と同じだ。
沖、お前のカーナビの画面つけてくれ」
地図画面が表示された。
「おい、俺達の世界だ!」
「やった〜」
二人は肩を抱きあった。
そうだ。
祐一は思い出したかのように携帯電話を手にした。
すぐ自宅電話画面を出し電話をした。
ルルルルルルルルルル・・・・・
とても長く感じた。
どのくらい時間が過ぎただろう。
「・・・もしもし・・・」
加奈の声だった。
それも眠そうな声。
「加奈〜加奈〜〜!
俺だ、祐一だ!
すまん、行方不明になって・・・」
興奮で祐一は声がうわずっていた。
「・・・・・・・・?」
「あなた・・・・・・・?」
「朝早く何を言っているの?
昨晩遅くに家を出たばかりじゃないの!!!」
完全に声は怒っている。
こんな朝早くに訳のわからないこと言って何よ!?
そんな感じだった。
ガチャン!
電話は切れた。
祐一は頭が混乱した。
俺と沖は数日間、時代を漂流した。
しばらく混乱した頭を整理しつつ、携帯電話の画面を見たら年月日が
「2020年10月○○日(日曜)」
祐一は???
すでに数日経過しているはずなのに家を出た日と同じ・・・
またもや頭が混乱した。
俺は夢を見ていた?
「沖〜
どうなっているんだか訳がわからん」
興奮混じりに尋ねた。
「田中さん、俺もカーナビや時計を見たら家を出た日?
どうなってんの???」
祐一は
「俺達、同じ夢を見ていたのか?」
「田中さん、ちょっと待って!」
そう言うと宗一郎氏からもらったサイン入りのシャツを取り出した」
「田中さん、夢じゃないよ
ほら、師匠からもらったサイン!」
完 まさやん
素人が書いた小説2020年、読んで頂きありがとうございました。
途中、少し壁にぶち当たり連載が中断しましたが、なんとか終わりました。
改めて読み直すと手直しが多数・・・
こんな小説を書いたかと思うと恥ずかしくなります。
年内中には大幅に手直しして別ブログ(新規)まさやん劇場(仮名)に
2020年という小説で登場したいと思います。
今回の2020年は初心者ということでストーリーの滅茶苦茶さは大目に
見てください。
来年、予定の新しいネタの小説は力作?になるかもしれません。
「
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まず削減するのはこれだ!2012.01.26 Thursday
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皆さん、居眠り・立ち歩き・私語・無断欠席と聞かれて何を想像されるだろうか?
私は、学級崩壊を想像した。
保護者が夜に学校へ集まり大騒ぎになる風景!
それが当たり前の様に国会で行われている。
そんな国会議員達が一体税金をいくら使っているのか?
不思議に思ったきっかけとしては、先日のテレビで民主党の大臣が
「議員は、選挙などでお金がかかり皆さんの思っている程儲かっていないのですよ」
の一言だった。
ひょっとして私が思っているほど儲けていないのかもしれないと思った。
これは調べなければ・・・・。
これが調べるきっかけとなった。
そして目ん玉が飛び出た!!!!!
国会議員の給料は、国会法第35条で
「議員は、一般職の国家公務員の最高の給料より少なくない歳費を受ける」とある。
なんとわかりにくい表現か?
「議員は国家公務員の最高額の給料を受ける」でいいではないか?
まぁそれはいいとして、
具体的に言うと、あくまで無役の議員で月額137万5千円。
これに期末手当が713万。
これだけでざっと年収2400万円となる。
普通のサラリーマンの3・4年分位になるのではないか?
しかし国会議員が手にするのはこれだけではない。
これに色々なものがプラスされる。
たとえば、文書交通費として月額100万円。
またこれとは別に、JR各社・航空会社の特殊乗車券が提供
されている上に公務出張の場合は別途実費の交通費が支給
される。
これっておかしくはないか?
毎月交通費として100万円支給されているはず。
二重三重取りではないか?
それと文書交通費とは名ばかりで、領収書なんていらないため何に使っても
分からない。
さらにその国会議員が所属する会派には、一人あたり65万円の立法調査費
という訳の分からないお金まで支給される。
頭の悪い私がここまでざっと計算して、国会議員1人に対し税金から
実に年間4400万円ものお金が支払われている事になる。
さらに国会議員1人あたり、3人の公設秘書の給料
全額税金で支払われている。
3人あわせてざっと2000万円。
数年前、これを秘書に払ったことにして懐へ入れ問題になった
議員がどれだけいたか・・・。
また、その議員の大半が返り咲いていることに、開いた口がふさがらない。
結局、国会議員1人維持するのに年間6500万円以上の
税金が使われている事になる。
あくまでもこれは直接費のみである。
この額は、基本的に衆参同じ。
現在、衆議院ー480人、参議院ー242人、合計722人。
6400万円×722人=462億円!!
みなさん、お間違えないように!
この額には、国会を維持するための事務賃金・設備費・選挙に必要な膨大な費用・
議長等の役職加算分・役職者に提供される運転手付きの車の費用・元総理へのSP
等々は一切含まれていません。
そして、数年前にえらいことが(大変なこと)起こっている。
泥棒に「このお金も持って行ってください」なんて税金を差し出した制度だ。
政党助成制度なるものだ。
そもそも、国会議員の汚職を防ぐために税金で、政党活動を支えてあげましょう
という法律だ。
まぁなんと議員に優しく、国民に厳しい法律だろうか?
これに支出される税金は、赤ちゃんから年金暮らしのお年寄りまで
国民全員が一人250円支払っている事になる。
配分は、政党所属国会議員の頭数と国政選挙の得票率で決められている。
完全な無所属議員と共産党には配分されていない。
この制度が出来てから議員の汚職は無くなったか?
と言えば、そうではない!!
相変わらず企業献金が多くの政治家の資金源であり、汚い金に手を染め
右手と左手を金物でつながれ連れて行かれる議員が後をたたないのだから
苦労して稼いだお金を巻き上げられる国民はたまったものじゃない。
そんなアホなことに使うぐらいなら、震災の復興へ又は借金を返すことに
使って欲しい。
このあたりの無駄な制度や多すぎる給料、二重三重の
支給を削減すれば復興も進み、借金も減るのでは
ないか?
もう一つ。
人口あたりの国会議員の数がアメリカの3倍になるという。
となると、80議席の削減どころか484議席の
削減も可能だということになる。
給料に関しては、日本では4400万円のところ、アメリカでは1500万円
程だそうだ。
消費税ばかり他国と比べずに国会議員の給料や働きを比べたらどうでしょうか?
学級崩壊・・・・いやいや国会崩壊の議員達のバカほど高い給料を支払っているのは
そこのあなたの税金からなのです。
花
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百害あって一利なし2012.01.25 Wednesday
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与党の一部議員そして野党が社会保障・税一体改革など反対してます。
自民党も「一体改革の事前協議に応じるつもりはない」
公明党も「あまりにも自分本位すぎる」
一体どういうつもりなんでしょうか。
党こそ違え同じ日本国の政治家。
もちろん党が違えば考え方は異なります。
だけど事前協議すら応じない。
いつも反対・反対ばかり。
民主党が野党だった時も同じです。
なんでこうも仲が悪いのだろうか。
話し合いをしてお互い歩み寄りをして国難に立ち向かおうという姿勢が
全然見えません。
重要法案を成立しようという気構えが全然見えません。
見えてくるのは「解散総選挙」
要は我が身のことばかり。
もし自・公が政権を再び取ったとします。
また野党が反発して同じことの繰り返しですか?
野田総理が
「次の政治のことだけを考えるのではなく、次の世代のことを考えるのが政治家です」
国民の気持ちを代弁した言葉です。
害ばかりもたらす政治屋はいりません。
即刻、退場すべし!
まさやん
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時限爆弾2012.01.23 Monday
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東日本大震災以降、日本列島は毎日のように震度3〜5クラスが絶えず揺れてます。
私のように地震学など、まったくの素人でも近い将来いや明日にでも首都圏そして
東海・南海大震災が来るのでは?と不安に思います。
今朝の読売新聞一面に
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120122-00000800-yom-sci
東京大学地震研究所の研究チームが試算を発表しました。
首都直下型4年以内70%
はっきり言って恐ろしい記事です。
去年の3月の東日本大震災以降、まだ東北の復興はまだまだこれからです。
東北の復興のためには多額な予算が必要です。
4年以内70%ということは1年以内に起きてもおかしくありません。
明日でも不思議ではありません。
もし首都圏直下型または房総沖で大地震が起きたらどうなるでしょう。
東日本大震災も甚大な被害でしたが首都圏で大地震が起きたらどんな被害に
なるか想像も出来ません。
東京が甚大な被害をこうむったら日本の経済も麻痺状態。
世界経済まで影響必至でしょう。
東京に集中している大企業の本社比率は62,7%。
半分以上は東京に本社を置いてます。
今からでは遅いかもしれませんが一刻も早く東京一極集中を改善すべきです。
大災害が起きてからでは遅いです。
東京に住んでいる私。
去年の3月以降、東京の震災対策あまり進んでないような気がします。
都民の何%が「震度6以上の時は緊急自動車以外通行不可」を知っているでしょうか。
平日の昼間、首都直下型が起き都内の車がすべて道路上に放置されたら
どうなるでしょう。
これ1つ考えても身の毛がよだつ思いがします。
毎回、政治の批判も書いてました。
昨日の政治の世界を見ていても我が身のことばかり。
政権奪還!・・・
呆れて今日は書く気にもなれません。
日本は破滅に向かっているのでしょうか?
まさやん
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無責任な飼い主2012.01.18 Wednesday
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どこの街にも野良猫はいますが我が家の近所の公園に
血統書付きの猫?
寂しそうな目をしてました。
可哀想にペットとして飼われていた猫?が飼い主に捨てられ野良猫に・・・
ペットだって生きる権利あります!
幸せになる権利あります!
子猫だった頃に「可愛い!」と衝動的に買い飽きたから?捨てる。
とんでもない話です。
目が人間不信のような目つきをしてました。
あまりに可哀想。
もと飼い主に喝!!!
まさやん
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土の優しさ2012.01.18 Wednesday
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日本の各都市・街の殆どの道路は綺麗に舗装されて見た目はとても
美しくなってます。
しかし舗装された道路(アスファルト)は本当に人間に優しいのだろうか。
私は公園など散歩して土の上を歩くと、ホッとします。
感触の柔らかさ、優しさ・・・
学校の校庭などを見ても土ではなく舗装された状態。
せめて学校の校庭などは土がいいのではないだろうか。
毎年夏になると猛暑いや酷暑のような蒸し焼き状態。
夜になっても都会などは蒸し風呂状態だ。
今更、東京など都会の道路を昔のように土に変更など予算的に不可能なのかも
しれないが、もう少し都会作り、考えたほうがいいのではないでしょうか。
まさやん
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今年もお粗末なセンター試験!2012.01.17 Tuesday
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先日の14〜15日に実施された大学入試センター試験でのこと。
ありえない混乱が起きた。
第1日目、1時限目の社会教科でのことだ。
前回までは、地理歴史と公民に分かれ、いずれか1教科選び受験するシステムだった。
しかし今回からは、地歴と公民双方より最大2科目選べるように変更された。
2科目選んだ受験生は、120分の試験時間を2つに割1科目づつ解くことになる。
1科目目の教科は、60分後に回収されその後2科目目の解答用紙が配られるという
手はずだ。
合否判定に第1解答科目を使う国公立が多いため、1科目目を120分で解く不正を
避けるためだ。
地歴と公民を選んだ受験生には、最初に両方の問題冊子を配る必要があるのにも
関わらず、このシステムを理解していなかった試験管が公民の問題冊子を配り忘れる
というミスをした。
地歴より公民が得意で、第1科目を公民にする予定の受験生もいたはずだ。
このときの動揺を考えると気の毒でならない。
また、被災地の会場では英語のリスニングで使用するICプレーヤーが届かず
試験時間が2時間も遅れるというミスもあったという。
震災のハンディを背負ってのセンター試験でまたしても傷口に塩をぬりつけられた
形となった。
記者会見でセンターの理事達は、「参加大学との共同実施」を強調した。
またしても責任のなすりあいになっている。誰の責任かは、後回しにし早急に全容を解明し、
受験生に公平な結果が出るように真剣に取り組んでいただきたい。
このシステム、当初より混乱するのではないか?と素人の私が思ったくらいなのだから
今後続けるのであればしっかり対応して欲しい。受験という物は、受験生の人生を左右する物だと肝に銘じていただきたい。
被害にあわれた受験生のみなさんは、
こんな事に負けず志望校目指してがんばってください。
センター関係者、受験費用バカほど貰ってるんやししっかりしーやぁー!!
花
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有言実行2012.01.16 Monday
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15日の日本経済新聞にこういう記事がありました。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819499E3E7E2E2E48DE3E
7E2E3E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2
議員給与削減をせよ!のような記事です。
議員削減・公務員改革・選挙改革・・・
沢山手直ししなければいけない事柄が多いです。
議員80人削減法案だって実際その通りになるのか?私は疑問に思ってます。
法案が通ってもせいぜい10〜20人削減くらいではないか?
あまりに議員・公務員、恵まれ過ぎやしませんか?
これって、ねたみに聞こえますか?
現在の日本、節約に節約を徹底をし耐えている国民が沢山います。
昨年の暮れの公務員のボーナスも上がりました。
議員さんも不景気・厳しい時代と認識してはいるでしょうが財布の中身は厳しさは
感じないでしょう。
つまり庶民の苦しみは知らぬ・存ぜぬなのでしょう。
今回の議員削減法案・給与削減だって仕方なく口に出しているのでしょう。
衆議院選挙の時、議員削減・・・って美味しい話をしてました。
民主党が政党になってから案の定その話は出なくなりました。
そりゃそうです。
口に出せば我が身の首を絞めるようなもの。
当選すればこっちのものだ!と言わんばかりに知らぬ・存ぜぬ・・・です。
歴代の政権すべてそうです。
自民党も同じです。
口に出した以上、即実行すべし!
嘘ばかり言っていたら舌を引き抜かれるよ!!
今年、解散総選挙が行われる・・・ような記事が出てます。
選挙が行われればもちろん投票に行きますが今時点投票したい政党・議員
はいません。
白票になるかもしれません。
はっきり言って今の政治の信用度は0に近いです。
末期症状です!!
男なら口に出した以上、有言実行すべし
まさやん
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険しい道のり2012.01.14 Saturday
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今の日本がこれから進む光景を写真に例えるなら、こういう写真じゃないだろうか。
荒れ果てた道、豪雨、道なき道を進む1台の車両。
昨日、野田改造内閣が新たにスタートを切りました。
野田内閣の進む道のりは果てしない荒野だ。
日本の切羽詰まった状況でこの道のりは大変な苦労を伴うと思います。
車は4つのタイヤで動きます。
タイヤが1つでも欠けたりパンクしたら、そこで身動き取れなくなります。
タイヤだけではありません。
エンジントラブル他アクシデントで車が動かなくなったらお終いです。
ここ数日の報道を見聞きしても政治の世界、与党内部でも意見がバラバラ。
野党自民党も消費税増税の協議はしない・・・など。
理解に苦しみます。
協議をしないで国会のやりとりだけで結論が出るのでしょうか?
現在の日本の借金を作った元凶は自民党ではないでしょうか?
それを忘れて民主党マニフェスト違反だ!と鬼の首を取ったかのように
足を引っ張り行く手を阻んでます。
今、そんな足の引っ張り合いをしている状況でしょうか。
政治を車の例えるなら政治家はタイヤ・エンジンのようなもの。
一致団結しなければ日本は荒野のど真ん中で身動き取れなくなり錆果てて
しまう車になります。
自民党が「解散総選挙だ」とよく言ってます。
党からすれば再び与党に返り咲きたい。
だけどそれは国民のことを何も考えてないようにしか感じられません。
党利優先というのが見え見えです。
日本の行く道は国家財政だけでなく外交・少子高齢化・防衛・経済・原発問題・
山のように難題が山積みです。
党利しか考えない政党・我が身しか考えない議員はいりません。
そのほうが、これから荒れ地を進む日本号(車)が軽くなり走りやすくなります。
議員80人削減法案・・・・
これも私のあくまで想像ですが荒れた議論になり我が身のことしか考えない
議員の反発などで法案成立しないか成立しても10〜20人削減で終わる
ような気がします。
そして消費税だけが上がり経済発展の有効な策も出ないまま国民に痛みを
強いる結果に・・・?
果ては日本沈没です。
政治による人災です。
そうならないためにも今いる政治家達が一致団結して荒れ果てた荒野を
走りきってほしい!
まさやん
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近未来小説 2020年(10)2012.01.10 Tuesday
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祐一と沖は緊張のあまり顔が赤くなっていた。
もし本田宗一郎氏がいたら・・・・
二人にとって神様のような存在だ。
応接間で署長とにこやかに談笑していた。
鈴木刑事課長が
「お待たせしました」
二人が振り向いた。
二人とも細身でメガネをかけていた。
一人は若いタイプ。
スーツをビシッと決めていた。
もう一人、ネクタイはしていたが白いつなぎ姿。
少し油で汚れていた。
警察署長が緊張している祐一と沖を呼び
「二人ともどうぞ中まで入ってください」
「はい」
署長が二人を紹介した。
「先日電話でお話しした田中祐一さんと沖龍也さんです」
「田中です。
宜しくお願いします」
「お・・沖です。
宜しくお願いします」
沖は緊張のあまりか、どもってしまった。
つなぎ姿の男性が
「本田です。
隣の彼は中村良夫と言います。
お話しは伺ってます」
祐一と沖は写真でしか見たことなかったが、すぐに本田宗一郎氏だと
わかった。
緊張は最高潮に達した。
神様のような宗一郎氏が目の前にいる。
二人とも何を喋ればいいか直立不動の姿勢だった。
「まぁ〜まぁ〜田中さんも沖さんも楽にしてください。
俺は怖い顔してますが噛みつくわけじゃないし・・・」
そう言い宗一郎は笑った。
祐一は宗一郎氏の姿を見て、どこかの町工場の親父さん?
悪ガキをそのまま大人にしたようなヤンチャな感じ。
笑顔を見て緊張もほぐれ親しみを感じた。
署長が
「立って話はなんですから二人とも座ってください」
「ありがとうございます。
失礼します」
二人は腰掛け
「朝早くからここまで来ていただきありがとうございます」
宗一郎は
「いやいや・・・
数日前にあなた方の情報を聞き、いてもたってもいられなくなり、すぐさま
飛んできました。
早くこの目で見てみたいです」
隣の中村が
「本当は社長は多忙で行けそうになかったのですが、重要な用事でなければ
後回しにしろ!と言われまして急遽一緒に来ました」
「社長業などは重要なことだけ判断すればいい。
俺のような口うるさいのがいないほうが若い連中、伸び伸び仕事をやってますよ」
そう言いながら大きく笑っていた。
その目はヤンチャ坊主そのままだった。
沖も本田宗一郎のことは本などで人柄は知っていた。
口やかましく鉄拳や物が飛んでくるタイプ。
短気だがとても人情味があり、厳しく叱ってもすぐにフォローしてくれる。
雷親父のあだ名がつくほどだ。
本田宗一郎氏の元で育った部下達は、話を合わせたかのように
「とても怖い人・・・」と言うが、みんな決まって「とても人情味のある気持ち良い親父さん」
と褒め称えている。
本田は
「私は非現実的なSFやタイムスリップなど信用してませんが現実的にこの世界に
来られた・・・ということは何か不思議な力が作用されたんでしょうね」
祐一は
「私も沖も信じられない!という気持でした。
悪夢だったら覚めてくれ・・・
そんな心境でした」
「慣れない時代にいきなり飛び込まれて大変だったでしょうね」
「最初は一体どうなることやら?と思ったのですが御殿場警察署の方々の
ご配慮、そして原巡査が私と沖を家に招いてくれてこうやって無事暮らせて
皆さんに感謝しきりです」
本田は話を聞きながらもソワソワ・・・
足元の方向は駐車場の方に向いている。
根っからの車好きのようだ。
沖も本田宗一郎氏の事は本で読んだことがある。
浜松の鍛冶屋で生まれ家は貧乏、しかし根っからのやんちゃな性格で元気一杯に
暴れ回り腕白坊主を発揮していた。
勉強は大の苦手。
しかし機械いじりが小さい頃から大好き。
そういう文章を読んだことがある。
沖自身もやんちゃな子供をそのまま大きくしたような感じ。
勉強は大っ嫌い!
だけどプラモデルや機械いじりが大好き。
子供の頃、父の愛用のバイクを分解してしまい大目玉を喰らったことがある。
沖はとても親近感が湧いている。
本田は
「沖さん、あなたは本田販売店のメカニックをやっているそうで」
「は・はい」
「私は机に座っているより油まみれにエンジンをいじくっているときが一番
好きなんだ。
あとで未来の車のこと、教えてください」
たしかに本田宗一郎氏の格好は知らない人が見たらどこかのモーター屋の
メカニックだ。
とても車メーカーの社長さんには見えない格好だ。
沖は
「私も本田の車が好きでメカが大好きで本田自動車に入りました。
本田は素晴らしい車・バイクを作り続けてます。
スーパーカブなどは2020年現在でも生産されて全世界で通算8000万台
突破しているんですよ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%96
本田は目を大きくし、身を乗り出し
「カブがまだ生産されている?
8000万台?
こりゃ嬉しい話だ」
「こいつは開発に時間がかかってね〜
たしか1年8ヶ月開発に時間かかりました」
隣に中村良夫が
「開発の設計者が夜も寝ずに鉛筆で設計図をひいたのに朝、社長が見えられ
設計図を見るやいなや鉛筆を取り出し書き直すんですよ。
「せっかくの設計図がぐちゃぐちゃ。
開発者の面々ががっくりです。
社長は口より先に手が飛んできます。
会社内はよくスパナが飛んできますよ(笑)
社長の傍にはスパナや工具類、凶器になるものは置いとかないようにしてます(笑)」
「中村!
最近は俺も丸くなったぞ」
祐一と沖は二人の会話に吹き出しそうになった。
沖は
「私達のいる時代は電気自動車が主流になって燃費の悪い車は恐竜絶滅寸前の
ようになっているんです。
その点カブは燃費がべらぼうに良く頑丈・整備性が良くて世界中見かけない国は
ありません。
私もガキの頃、無免許で乗り回していたもんな〜」
本田は
「ワハハ・・・
男はそのくらいじゃなきゃいかん!
沖さん、気に入ったよ。
わしと同じくやんちゃだったんだね」
本田は打ち解けてきたのか「私」から「わし」になってきた。
沖も
「お・俺、私・・・なんて慣れない言葉使うと、どもってしまうから「俺」でいいですか?」
本田は
「俺の前でそんな固くなるな!
俺でいいよ、いいよ。
気に入った!!」
すっかり本田宗一郎氏と沖は波長が合ったようだ。
沖も最初の緊張顔から普段のやんちゃな沖になっていた。
祐一は二人を見ていて心和む雰囲気だった。
中村が
「社長、今日は夕方、販売会議があります。
あまり時間かけてお話しされていると時間が・・・」
「そんなもの藤澤に任せておけばいい!」
藤澤という人物は藤澤武夫。
もう一人の創業者と言われる人だ。
技術の本田宗一郎、販売の藤澤武夫。
二人の関係は文字通り車の両輪だ。
どっちが欠けても車は走れなくなる。
タイプはまったくの逆。
だからこそ、良かったのかもしれない。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E6%B2%A2%E6%AD%A6%E5%A4%AB
「あとで電話で連絡してくれ。
今日は帰りが遅くなる。
もしかしたら明日帰る・・・とな」
中村は苦笑した。
「中村、用事があるなら途中で帰っていいぞ」
祐一と沖は本田宗一郎氏の豪快さに改めて感心した。
この社長らしからぬ性格・そして物真似が嫌い、ユーモアと純情の固まり。
宗一郎氏の性格そのものが本田のメーカーそのものだ。
だからこそ冒険的な車・バイクが出来た。
本田は
「さっきから俺はあなたたちの車を見たくて見たくて仕方ないんだ」
祐一と沖はさっきから気づいていた。
足はソワソワ・・・
足元の方角は外に向いている。
まるで子供が早く褒美をもらいたい目をしている。
沖が
「田中さん、じゃ俺、警察署長さんに了解もらってくるよ」
「そうだな、俺達もたまには愛車のエンジンかけないとSが機嫌そこねるしな」
沖はそう言うと応接間を出て署長の方へ走り出した。
祐一はこりゃ今日は本田氏と沖の車談義で日が暮れそうだ。
祐一は苦笑した。
署長と原巡査が応接間に入ってきた。
「会話聞こえてましたよ。
笑い声も聞こえてきて、もう打ち解けてますね」
本田は
「いや〜愉快!愉快!
今日は仕事を忘れて、じっくり未来の車を堪能させてもらうよ」
原巡査が
「はい、田中さんと沖さんの車の鍵」
沖は
「わぁ〜、俺の車の鍵だ!」
祐一もまだ数日しか経ってないのに何ヶ月ぶりかのような気分だ。
祐一は
「沖、早速本田社長・中村さんに見せようか」
沖は得意の腕をまくりあげる格好で
「行きましょう!!」
4人は駐車場に入っていった。
一般の目に触れないようカバーがかけられている。
中村良夫は
「社長、かなり大きい車ですね」
本田は無言だった。
今の時代からしたらS2000のボディは大きく見えるだろう。
祐一は
「沖、どっちから見せる?」
「いっぺんに公開しましょうよ」
「そうするか」
沖は
「社長さん、待っててね」
そう言うとカバーのひもをほどいた。
祐一も同時にひもをほどいた。
二人とも手が震えた。
ホンダの創始者にわが愛車を見てもらえる・・・
そう思うと心臓がドキドキだった。
後ろにいた本田宗一郎氏と中村良夫氏の心臓音も聞こえてきそうだ。
ひもをほどく時間がとても長く感じた。
ひもをほどき、沖の顔を見るとニヤッと笑い
「田中さん、同時にカバー開けましょうよ」
「あ〜、そうしよう」
沖は
「お待たせしました。
ジャジャジャジャ〜ン!」
沖らしい演出だった。
二人は一斉にカバーを開いた。
沖のS2200はシルバー。
祐一のS2000はレッドだ。
本田宗一郎と中村良夫は大きく口を開けてしばらく言葉も出なかった。
金縛りに遭ったように立ちすくんでいる。
どのくらい時間が経っただろうか。
いや、時間にして僅か1分もないだろう。
だけど二人の驚きといい、感動した!という表情。
とても長い時間に感じた。
本田がようやく口を開いた。
「中村・・・
俺達の会社、こんな凄い車を作るのか」
中村は
「これが・・・・これが・・・・
本田の未来の車・・・・
感動で全身鳥肌が立ってます」
「中村、見ろよ。
俺が今度出す車は赤でいくぞ!と前、言ったよな。
どうだ!未来の我が社の車の赤の似合うこと!」
本田宗一郎氏は原巡査が乗っている愛車S500を出すにあたって開発中に
「色は赤で出すぞ」と開発陣に命令した。
本田は常識というのが嫌いだった。
当時、赤い車といったら消防車くらいしかなかった。
開発陣も正直驚いた。
まず赤色の使用許可を運輸省が認可するかどうか?
本田社長の命令で翌日から運輸省に日参した。
しかしお役所は取り付く暇もない。
門前払いだ。
開発陣担当者は帰る足取りも重く本田社長に合わせる顔もなかった。
そんな状況がしばらく続いたあと、本田社長が運輸省に対し
「赤はデザインの基本になるものだ!
世界の一流国で国家が色を独占している例など聞いたことがない!」
と主張した。
ようやく認可が下りた。
この頃からすでに国益・国策を錦の御旗に振る官僚という巨大な権力機構だった。
祐一と沖は改めて本田宗一郎氏の先見性に驚嘆した。
本田は
「国というのは頭でっかちだ!
我が社が4輪事業に進出する時も役所連中と何度喧嘩したか・・・
通産省連中相手に新規参入を認めないとは何事だ!と一喝したもんな(笑)」
祐一は
「私達2020年も相変わらず似たようなものです。
官僚天国というか・・・
何を申請するにしても書類・書類・・・で認可にも時間かかるし」
本田は
「まだ変わってないのか。
困ったもんだ」
沖は
「社長!
どうぞ、俺達の車、もっと近くで見てくださいよ」
本田と中村はさっきと同じ場所に立ちすくんでいたままだった。
沖は社長に車の鍵を手渡した。
祐一は中村に鍵を手渡した。
中村は
「社長、鍵からして立派な作りです。」
手が震えてた。
沖は
「さぁ〜、さぁ〜社長!
もっと近づいて・・・」
沖と本田宗一郎氏は友達感覚だった。
背中を押している。
「社長、ちょっとキーを貸してください」
そう言うと鍵を受け取り車に向け鍵のスイッチを押すと「カチャン!」
本田は
「今のは何だ?」
「ドアロックが解除になったんです。
遠隔操作出来るんですよ」
「・・・・・・!」
本田は驚いた表情をしていた。
「さぁ〜、さぁ〜」
沖は自慢げに車の傍へ社長を寄せた。
中村も一緒についていった。
「社長、どうぞドアを開けてください」
本田は感動しきりでドアに手をかけ開けると
本田と中村は言葉が出なかった・・・
またもや、しばらく時間が流れた。
中村は
「社長・・・・
この作り・・・・・!
未来の車ってこんなに進歩するのですか」
「あぁ〜、言葉が出ない・・・」
二人はしばらく立ちすくんでいた。
祐一はその間、愛車S2000のエンジンルームを開けた。
どのくらいの時間が流れただろうか。
祐一と沖は後ろに立っていた。
沖は
「社長、中村さん、エンジンを見てみたらどうですか」
二人はふと我にかえり
「是非見せてもらおう」
すでに祐一のS2000のエンジンルームは開いていた。
二人小走り気味に駆け寄り覗き込んだ。
本田は
「うおぉ〜〜!!!!」
中村はまたもや体が硬直した。
またもや時間が流れていった。
「中村!
宝石だよ!!
芸術品だ・・・」
「本当です。
なんという美しさ・・・
これがエンジン?」
本田はエンジンを撫でていた。
祐一のS2000のエンジンはいつも綺麗に磨いているので油汚れやほこりなど
まったくない状態だ。
新車以上の美しさだ。
ようやく本田が口を開いた。
「沖さん・・・
2020年という時代はこんなに美しい工芸品なのかね?」
「電気自動車が主流になったからエンジンのない車が増えちゃいました。
車好きには寂しいかぎりだけど」
「馬力はどのくらいあるんだ?」
「田中さんのSは2000、俺のSは2200の排気量です。
馬力がS2000で250馬力、S2200で・・・」
最後まで言う前に本田が「250馬力?!」
またもや驚きの顔を見せた。
中村は
「社長!
レーシングカー以上の馬力です!!」
沖は
「まもなく本田自動車はF1に参戦します。
たしか数年後優勝もするはず」
本田は
「おい、本当か!
俺の夢なんだ!!!」
祐一はふと
「あっ、未来のこと、教えちゃまずいかな・・・と思ったけど、すでに遅い。
「田中さん、たしかまもなく参戦予定ですよね」
「う〜ん、俺も正確な年代は覚えてないけど参戦は間違いないな」
本田は
「おい、中村!
明日から開発陣にはっぱをかけるぞ!!」
沖はふと思い出した。
「中村良夫」
名前は聞いたことあるが思い出せなかった。
「社長!
中村さんはF1初代監督になるんですよ。
思い出した・・・」
「そして本田初のF1マシンの馬力も270馬力です」
本田と中村は顔を見合わせた。
「中村、早速F1開発をやれ!」
祐一が
「沖!
お前が歴史を作っているのかな・・・」
「俺、余計なこと言っちゃたかな」
沖は
「本田は独創的な車をどんどん作ります。
トヨタや日産とは全然違う車作りをします」
本田は
「俺は物真似は大嫌いだ!
今。空冷の車を考えているんだ」
沖は返答に困った。
本田自動車初の小型車は空冷車としてデビューしたのだが、あまりの
独創的な車のため失敗作に終わった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BB1300
沖はあえて言わなかった。
当時の開発陣は空冷は反対だった。
しかし本田宗一郎氏の「空冷」の一言で開発が決まり発売になったが
不調に終わった。
本田宗一郎氏の物真似が嫌い・・・が裏目に出てしまった。
祐一は話題を変えようと
「社長・中村さん、エンジン音を聞いてみますか?」
二人とも目を大きくし
「おぅ!是非!」
「沖、どうする?
どっちの車から・・・」
「やはり田中さんのS2000のほうがスパルタンなエンジンだから」
S2000と2200の違いはS2000が低速トルク不足だったため馬力を少し
抑え気味にしトルクアップした。
S2200はトルクはアップし性能はアップしたが荒々しさは影を潜めた。
祐一はキーを差し込み
「社長、エンジンキーを回してみてください」
「どうぞ、運転席に座ってください」
本田は無言でうなずき緊張が伝わるなか座り込んだ。
座るなり・・・
「ほぉ〜!」
「体が包まれる・・・」
祐一は
「本田純正のバケットシートです。
峠を攻めてもサーキットを走っても十分体をサポートしてくれます」
本田は何度もうなづいていた。
震える手でキーに手をかけ・・・
祐一が
「どうぞ、回してください」
http://www.honda.co.jp/hondafan/SoundofHonda/engine/4R02/s2000.html
S2000エンジン音
エンジンがかかり、本田は目もうつろ状態。
名曲を聴いているかのような顔をしている。
祐一も数日ぶりの愛車S2000のエンジン音を聞き嬉しかった。
祐一は
「おい、S2000!
本田自動車の神様にエンジン始動なんて、こんな光栄なことないぞ!」
思わずボディを撫でていた。
隣にいた中村も
「田中さん、なんと美しいエンジン音ですか。
1日聞いていても飽きない。
名曲です!」
沖も
「さすが田中さんのSだ。
機嫌いいね」
しばらくエンジン音を聞いていた本田は中村に
「中村!
今日は俺は帰らんぞ。
電話で藤澤に伝えとけ」
「社長、大事な打ち合わせもありますが・・・」
「藤澤に任せておけば安心だ」
「私は夕方には帰りますが社長、宿泊先はどうするんですか?」
「なんとでもなる」
祐一は
「社長、私が宿探してきますが・・・」
「いや、気遣い無用。
もっといろんな話も聞きたいし今日は帰るのはあまりにもったいない」
朝10時に応接間で会い車談義であっという間に午後3時になっていた。
途中で抜けていた原巡査もパトロールから帰ってきた。
「ただいま戻りました」
祐一と沖は
「お帰りなさい!」
沖は
「原さん、本田社長と中村さんと車談義、最高ですよ〜」
「社長、原巡査もS500に乗っているんですよ」
本田は
「こりゃ嬉しい限りだ。
本田ファンがこんなにいるとは・・・」
沖が
「原さん、社長が明日朝帰る予定なんですが宿手配出来ないですかね」
原は
「良かったら私のアパートはどうですか?
汚い狭いアパートですが。
社長さえ良ければ夜焼き鳥をつまみながら車談義でも・・・」
本田は
「おぅ、焼き鳥ですか。
たまには仕事を忘れて焼き鳥もいいな」
沖は
「やった〜!
社長と今夜は飲み明かすぞ〜〜」
祐一は
「沖・・・
社長は多忙な身なんだから寝不足にさせるなよ」
本田は
「俺は酒は強くないが、2020年の話も聞きたい。
いくらでも付き合うよ」
中村は隣で笑っていた。
ったく、社長は・・・・という顔だ。
「社長、会社に電話してきます。
原さん、署の公衆電話お借りします」
そう言うと署の中に消えていった。
本田は
「田中さん、沖さんのS2000は試乗出来るのか?」
祐一と沖は顔を見合わせ・・・
「社長、実は私達の車、ナンバーが現在のナンバーじゃない。
道路交通法に違反するので警察も許してくれないと思うんです」
本田は
駄々っ子のような顔になった。
固い事言わなさんな・・・と。
代わりに沖はS2000の装備品やエンジンの説明をした。
さすがメカニックだ。
本田にとって未来の車。
装備品1つとっても初めて見るものばかり。
沖はわかりやすく説明している。
祐一はその光景を見ながら俺達はなんでこの世界に運ばれたのか?
改めて考えた・・・
本田宗一郎氏に会えたのが本当に良かったのか。
歴史を変えてしまう?
松下幸之助氏と並んで「日本の経済人」トップに並んでいる夢のような人だ。
実際会ってみて全然偉ぶらないし本当に町工場に親父さんという感じだ。
中村が戻ってきた。
「社長、藤澤副社長に伝えてきました。
苦笑してましたよ」
「俺が1日くらいいなくても会社がつぶれたりせん。
開発陣も俺がいないことで羽根が伸ばせているよ」
本田は
「原さん。今日は世話になります」
「こちらこそ嬉しいです。
光栄です」
続く
まさやん
※今まで2020年(9)まで毎週のように連載してきたのですが(10)になってから
壁にぶち当たりました。
田中祐一、沖龍也、原一郎・・・他、架空の人物だったため会話も何の抵抗もなく
書けました。
しかし今回の本田宗一郎氏、中村良夫氏は実在した人物。
会話1つ書くのも考えてしまいました。
小説など、ろくに読んだことがないど素人の小説作品。
作文のようになってますが来週掲載予定の(11)が最終回になります。
皆さんの想像しているストーリーと違うかも?
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