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    近未来小説 2020年(11)
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      「俺、夢見てるみたい・・・
      憧れの人と会えただけでなく今夜酒も一緒に飲めて話が出来るなんて」

      興奮で沖は顔を真っ赤にしていた。

      「社長、沖は酒豪です。
      夜もいびきが凄くて睡眠不足になるかもしれませんよ」

      「いや・・・
      俺もいびきはかくんだ。
      沖さん、
      こりゃ〜どっちが先に寝るか勝負だな。
      ワッハハ・・・」

      宗一郎氏は豪快に笑いだした。

      原が
      「今夜は賑やかになりそうですね」

      祐一も
      「こりゃ沖も酒のピッチが進みそうだ。
      調子に乗るなよ」

      「大丈夫!」

      そう言いピースサインを出した。


      中村良夫が
      「社長、私はそろそろ帰ります。
      明日は迎えの車、用意しますが」

      「いや電車で帰る。
      朝一番の電車で帰るから藤澤にも伝えておいてくれ」

      祐一は
      本田自動車の社長ともなれば多忙なスケジュールのはず。
      なんだか申し訳ない気持だった。
      「原さん、今夜寝る時、私と沖はごろ寝でいいですから」

      「とんでもない。
      なんとかします。
      署から布団一式借りてもいいですし」

      「じゃ2畳の部屋でいいですよ」

      「「みんなで一緒に布団並べましょう。
      そのほうが楽しいし・・・」

      「それでは社長、私は先に失礼します。
      何かありましたら、すぐに連絡ください。
      会社からも緊急時は連絡します。
      原さん宅の電話で大丈夫ですか?」

      「あ〜、そうしてくれ。
      藤澤に任せればまったく心配いらん」


      「田中さん、Sを試乗出来んのが非常に残念だ」

      まるで駄々っ子のようだ。

      祐一は原に聞いた。
      「原さん、駄目ですかね?」

      「難しい問題ですよね。
      立場上いいとは言えませんし」

      祐一は
      「社長、試乗は厳しいですけど原さんの家に戻ればS2000の動画があります。
      あとでお見せしますが」

      「動画?8ミリフィルムのことか?」

      「いや、8ミリではなく私達の時代の動画です。
      沖の爆走も見れますよ」

      「沖、お前のデジカメに少し動画なかったか?」

      「あっ、あります!
      ちょっと待っててね」

      ポケットをゴソゴソ・・・

      小さいコンパクトカメラを取り出した。

      「沖さん、何ですかそれは?」

      「カメラです」

      「カメラ?
      そんな小さいカメラでフィルムはどこへ入れるんだ」

      宗一郎氏はマジマジ覗き込んだ。

      「デジタルカメラというやつでしてフィルムはいらないんです」

      「???」

      「説明は後にして、社長見てください」

      沖は液晶画面を社長に見せると祐一がS2000を箱根で走っているシーンを
      見せた。
      パソコンと違い迫力は欠けるが、それでも宗一郎氏を驚かせるのに十分だった。

      「何だ、これは?
      こんな小さいカメラでこんなことが出来る!
      未来はこんなに進歩するのか」

      「電池も太陽電池で間に合うんです。
      乾電池もいりません」

      コンパクトなデジカメを手にしながら不思議そうに見ていた。
      そのまま宗一郎氏が持っていたら分解されそうだ。

      「しかし田中さんの走り、豪快だな〜」

      「社長、いや私より沖のほうが豪快ですよ。
      荒々しいの一言です。
      性格がそのまま運転に表れてます」

      「田中さん、いつも俺のこと、そう言うんだから。
      社長、サーキットを走っても俺より田中さんのほうがタイムいいんですよ」

      「いいね〜いいね〜
      勝負してみたいもんだ」

      宗一郎氏と車談義をしていたら何日あっても足りないだろう。
      社長も根っからの車好き人間だ。

      S2000・2200を囲んでの話は尽きない。

      原が
      「ここでずっと立ち話は何ですから署内でゆっくりと・・・」

      宗一郎氏はSの前を離れたくない様子だった。
      10月とはいえ、夕方近くになると肌寒い。

      祐一が
      「社長、風邪ひくとよくないから中で話しましょう」

      子供のように名残惜しんでいたが
      「そうするか」

      4人は署内に入った。
      応接間に戻り女子事務員がお茶を持ってきてくれた。

      原が
      「残り仕事片付けてきますので」

      そう言い席を離れた。

      しばらく沈黙のあと・・・

      宗一郎氏が
      「今日はいい車を見せてもらいました。
      絶対忘れられない日ですよ」

      二人は同時に
      「私達も同じです。
      まさか社長とお会い出来るなんて今も信じられません」

      「沖さんを見ていると私の若い頃のよう・・・
      どうだね。
      俺の会社に来ないか?」

      「えっ???」

      沖は驚きの顔を見せた。

      「沖、良かったな〜!
      就職先が決まって・・・
      もし俺が2020年に戻っても頑張れよ」

      「田中さん、そりゃ〜ないよ!」

      3人は大笑いした。

      沖が
      「こんな俺を・・・
      めちゃ嬉しいけど2020年にも未練があるし」

      「社長、俺のこと、さん付けで呼んでいるけど沖でいいですよ」

      「名前は何でしたっけ?」

      「龍也です」

      「じゃ〜龍也はどうかね」

      「嬉しいな。
      社長に名前で呼ばれるなんて」

      どうやら二人の相性はばっちりのようだ。
      沖も10代の頃は暴れん坊で鳴らしたようだが今は27才。
      ずいぶん落ち着きも出てはきたが、宗一郎氏同様やんちゃ時代が抜け切れてない。
      発想もユーモアがあり祐一も見ていて共通感があるように見えてくる。
      普段、バカ言っている沖も意外と素質あるかもしれない。
      案外、10〜20年後未来の社長かもしれない。
      祐一は沖の顔を見てニヤニヤしていた。

      「田中さん、何!
      俺の顔を見てニヤニヤ・・・
      気持ち悪い!」

      「いや、何でもない」

      宗一郎氏は
      「田中さん、2020年ってどんな時代ですか?」

      「日本は戦後高度成長時代を経て爆発的に成長しました。
      経済大国とも言われるようになりました。
      自動車も急速に普及してアメリカの自動車など蹴落とすくらいの勢いです。
      ホンダ自動車もトヨタ・日産に肩を並べるくらい人気が出て根強いファンが
      沢山います。
      しかし1990年代以降、日本は不景気に陥り資源もない国。
      中国やインドなど新興国が急速に経済発展し今の日本就職先もない有様。
      若者の大半は海外の企業に就職先を求めています。
      2020年の今は自動車産業も中国・韓国・インドなど急成長している産業に
      シェアを奪われ日本の自動車産業界は息切れ寸前です。
      自動車だけではなく日本に仕事がありません。
      人・物・金が全然動いてません」

      宗一郎氏は
      「我が社のホンダも同じ状況かね?」

      「はい、ホンダもスポーツカーのメーカーそして他社と違う車作りをしてきたのですが
      急速に電気自動車が普及したため他社と似たような車になって車離れが深刻です。
      私や沖が乗っているS2000のような車は皆無に等しいです」

      「電気自動車ってエンジンは?」

      「ありません。
      小型コンパクトなバッテリーを搭載してエンジンは不要。
      音もなく静かでガソリン入らず。
      ボディと足回りだけ開発すればバッテリーは電気メーカーが開発したものを載せれば
      出来ます。
      車作りのノウハウがなくても簡単に新規参入が出来るわけなんです。
      車のデザインも一流のデザイナーをスカウトしてデザインすれば完成します。
      今までの車作りのノウハウが役に立ってません」

      宗一郎氏は顔が真っ赤になってきた。
      「2020年のホンダの社長は誰だ?」

      沖が
      「○○氏です」

      「○○?
      誰だ、そいつは?」

      「車というのはな〜官能的なエンジンを載せて誰もが惹かれるスタイルにして持つ
      喜びというのを味わうのが車だ!
      電機?バッテリー?
      そんなおもちゃで車と言えるか!
      俺が2020年に飛んで行って雷を落としてやりたいくらいだ!!」

      興奮でツバを飛ばしまくりだった。

      沖が
      「俺も仕事でお客さんの車を整備していてもつまらないんです。
      なんだか電機製品をいじくっているみたいで」

      「S2000や原さんのS500を見て、これこそ自動車。
      人間に例えるなら血液の通った暖かみのある人間。
      今の電気自動車、足回りなどスポーツ性にしているけどマネキンのように
      味気ないです。
      だから俺ずっとS2200乗り続けますよ!」

      「なんでそんなに電気自動車が普及したんだ?
      俺にはとても想像がつかん・・・」

      祐一は
      「ひとえにガソリンの高騰です。
      地球上の原油埋蔵量は限られてます。
      日本は原油を殆どいや全部と言っていいほど輸入に頼ってます。
      原油産油国が原油価格をつり上げて尚かつ原油生産を制限しているからなんです。
      ガソリン価格もうなぎ登り。
      そうすると燃費の悪い車はだんだん売れなくなる。
      更にユーザー軽視のデザイン作り。
      購買意欲をくすぐるデザインの車が少ないんです。
      どんどん若者が車から興味をなくしてしまう。
      更に車が売れなくなる。
      そして新興国の自動車メーカーが人件費の安さで日本自動車メーカーと同等以上の
      電気自動車を作り値段も安い。
      悪循環の繰り返しです」

      さっきまでニコニコしていた宗一郎氏。
      2020年の話題になってから不機嫌な顔になっていた。

      沖が
      「社長、俺達のいる2020年ってあまりいい時代じゃないです。
      俺、この時代に何で運ばれたのかわからないけど昭和30年代っていい時代だな〜
      って、心底思いますよ。
      みんな人情味はあるし世の中全体が温かい。
      2020年はその日その日良ければいい。
      明日の希望がない。
      今日よりも明日が良くなるって希望が見えないもん。
      少なくとも俺はSで田中さんと爆走出来る時が至福のひとときだけど」

      「沖、お手柔らかに・・・」

      この一言で場が和らいだ。
      不機嫌な顔になっていた宗一郎氏も笑みがこぼれた。

      原が仕事を片付け応接間に入ってきた。
      「お待たせしました」

      祐一が時計を見たらすでに夕方の5時過ぎ。
      外を見ると薄暗くなっていた。
      あっという間に時間が過ぎていた。

      「社長、それでは原さんのSでどうぞ。
      私と沖は歩いて帰宅しますから」

      「駄目ですよ!
      田中さんと沖さんは署の車で送ります。
      二人分の布団を運びますので」

      「すみません・・・
      またまた世話になります」

      宗一郎氏も
      「悪かったね。
      なんだか押しかけたみたいで」

      「とんでもないです。
      こんな光栄なことないですよ。
      だけど私の汚いアパート・・・
      恥ずかしいな」

      「社長、原さんは男の割に綺麗好きなんですよ。
      料理もやるし・・・」

      「ちょっと待って!
      料理っておにぎりと卵焼きしか出来ませんよ」

      沖が
      「それだけ出来れば上等!
      俺なんて何も出来ないもんな〜」

      「沖は飲み食い専門だもんな。
      日本酒一升瓶があれば満足だし枕にもなる」

      祐一は隣でちゃかした。

      宗一郎氏は二人を見て
      「まったくタイプが違うのに相性が合うね〜
      まるで俺と藤澤みたいだ。
      俺も藤澤がいなかったら今のホンダはない!
      それだけは断言出来る。
      こんな頭の悪い俺だが奴の貢献度は大だ!」

      「いや社長の実績も2020年の時代でも薄れてません。
      2020年こそ本田社長のような人が必要です」

      宗一郎氏はニッコリ笑っていた。
      まるで悪ガキ少年が誉められたような顔で。

      原が
      「それでは帰りましょうか」

      そう言い4人は署を出た。

      祐一はふと思い出し
      「原さん、明日の勤務は日勤ですか?」

      「私は明日は夜勤です。
      夕方出勤すればいいから今夜はとことん付き合いますよ」

      祐一は沖に
      「ボチボチバイトの仕事予約するか」

      「あとで俺、電話予約するよ。
      原さんが夜勤・・・ということは、じゃ〜俺達も夜勤でいい?」

      「あ〜、そうしよう・・・」

      原さんと社長はすでに外へ出ていた。
      二人は署の廊下で相談、慌てて二人のあとを追った。
      すでに布団一式も同僚警察官の自家用車に積まれていた。
      車の隣に立っていた人物を見て祐一が「あっ!」

      日産グロリア

      祐一が職務質問を受けた際、原さんと一緒にいた警察官だった。

      祐一がぺこっと頭を下げ

      40代風のあの日、震える手で警棒を握り高圧的な態度だった警察官が
      ニコニコ・・・
      「先日は仕事とはいえ失礼しました。
      原からは聞いてます。
      どうでうか。
      この時代に慣れましたか?」

      「原さんのおかげで大変助かってます。
      先日はご迷惑かけました」

      「いや・・・私も原もあのときは目を疑いました。
      目立つ赤い車でナンバーも見たことない。
      こりゃ〜不審車だ!・・・ってね。
      仕事の責務のあまり暴言吐いたかもしれない。
      悪かったね」

      「とんでもない。
      こちらこそ、訳のわからない会話してしまって・・・」

      祐一と沖は車が何の車名だかわからなかった。
      沖がそぉっと車を見回して
      「あっ、初代日産グロリアだ!
      格好えぇ〜」

      当時のクラウンと並び日本の高級車だ。
      二人の時代から見ると至ってシンプル。
      だけどシートなどは高級そうで乗り心地も良さそうだ。

      「原の家まで送ります。
      布団もトランクに閉まってありますから」

      「ありがとうございます。
      助かります」

      二人はリヤシートに招かれ昭和30年代のVIP待遇だった。

      原が
      「田中さん、それでは本田社長は私の車に乗って行きます」

      2台は並んで発進。
      祐一と沖はフカフカのシートに座った。

      「申し遅れました。
      私は木村と言います」

      「田中です、沖です」

      「しかし大変でしたね。
      ご家族も心配しているでしょう」

      祐一は
      「皆さんのおかげで、こうやって今の時代に何日もいられること感謝してます。
      家族も心配しているとは思うのですが、どうしようもない・・・」

      「あの時、霧が出てましたよね。
      今もうっすら霧が出ているけど霧とタイムスリップ関係あるのかな?」

      たしかに外を見るとうっすら霧が出ている。
      もしや、また濃霧が出て現場近くへ行ったら・・・
      たぶん沖も同じことを考えているだろう。
      神のいたずらか?
      俺と沖がなんでこの時代に・・・

      ソフトな乗り心地に酔いしれ、あっという間に原のアパートに着いた。
      二人は礼を言った。

      外は薄暗くなり霧で視界もかすんでいる。
      10月とはいえ少し寒い。
      布団を部屋に運び原が
      「焼き鳥にしますか?
      それとも銭湯が先・・・」

      二人は顔を見合わせた。
      「社長、どうします?
      食事?風呂?・・・」

      「銭湯・・・いいね〜
      まずは裸の付き合いから行きますか」

      原が早速4人分の銭湯一式を用意した。
      社長は署に着いた時の格好そのままだ。
      シャツにネクタイはしているけど油混じりのつなぎ姿。
      本当によく似合っている・・・

      本田宗一郎

      http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AC%E7%94%B0%E5%AE%97%E4%B8%80%E9%83%8E

      「こんな格好で銭湯大丈夫か?」

      沖が
      「社長!
      そんな気にすることないですよ。
      俺だってこんな不精ひげ姿。
      仲良く一緒に行きましょう」

      「おぅ!龍也が言うんだからそうするか」

      祐一と原は二人の姿を見て心が和んだ。
      見るからに悪ガキが二人って感じだ。
      沖がこんなにも偉大な人物と相性が合うとは思わなかった。
      案外、沖も大物になるのかもしれない。
      沖も
      「原さん、早く行きましょう!」

      ワクワクしているのかせかしている。

      4人は銭湯一式を持って霧の中、向かった。

      番台の親父さんが
      「おや、今日はまた大勢で・・・
      ありがとうございます」

      湯船・洗い場を見るとすでに賑わっている。
      祐一は
      「何度来てもいいものだ。
      日本の原風景・・・」

      すでに沖と宗一郎氏はカゴに服を入れている。
      似たもの同士だ。

      今日は4人まとまって座れる場所がない。
      祐一と原、宗一郎氏と沖に分かれた。

      「原さん、見てくださいよ。
      あの二人の仲のいいこと・・・」

      「親子?兄弟?
      馬が合うというのはこの事ですね」

      「こりゃ沖をこの時代に置いて俺だけ2020年に戻ろうかな・・・」

      「ハークショィ!」

      沖が威勢のいいクシャミをした。
      誰か俺の噂をしている?
      そんな顔だった。

      湯船も子供達で一杯だ。
      代わる代わる湯船に入り鼻歌を歌いながら沖は?と見ると宗一郎氏の背中を
      洗っている。
      どんな心境だろうか。
      箱根の峠やサーキットで一緒に走ると本田宗一郎氏の伝説話を我が事のように
      いつも話していた沖。
      感激で手が震えているんじゃないのか。
      祐一は満足だった。
      こんな経験、絶対ないぞ!
      沖、良かったな!・・・

      4人とも十分温まり体から湯気が立っていた。

      「田中さん、社長が俺の背中を流してくれましたよ!!!」

      興奮気味だった。

      「良かったな〜
      社長、ありがとうございます。」

      「いや龍也の力加減もなかなか気持ち良かった。
      さすが日本男児だ!」

      完全に沖の株は上がっている。
      沖は目が赤かった。
      さては、こいつ感激で涙流したか?
      祐一は沖を見てニヤッと笑った。
      しかし神様と呼ばれる本田宗一郎氏と銭湯で裸の付き合いだ。
      感激しないほうがおかしい。
      ましてや相性もばっちりだ。
      この調子じゃ寝る時も1つの布団で添い寝か?

      原が
      「また例の焼き鳥屋でいいですか?
      それとも定食屋?」

      「社長どうする?」

      沖が尋ねた。
      完全にため口だ。
      内心ヒヤヒヤした。

      宗一郎氏が
      「焼き鳥にビール、いいじゃないですか。
      行きましょう」

      4人は銭湯を出た。
      外はひんやり冷たい。
      湯気が立つ体に心地良い。

      原が先に覗き込んだ。
      「親父さん、4人空いてる?」

      「いらっしゃい!
      ちょうどテーブルが空いてるよ」

      店はカウンター数人分と小さいテーブル1つだ。

      「今日はとっておきのメニューがあるよ。
      トマト焼きとりんご焼き」

      店主は常連の気に入ったお客にしか出さない隠れメニューがある。

      原は
      「嬉しいです。
      今夜は更に酒が進みそう・・・」

      4人はテーブル席に腰掛けビールで乾杯した。
      乾杯!

      風呂上がりの喉元に染みわたる。
      至福のひとときだ。
      次々と運ばれる焼き鳥をつまみながら宗一郎氏は店に飾ってある零戦の
      写真を眺めていた。

      「俺は戦争の時、兵隊に行くはずだったんだが何故か身体検査の時にな、
      色盲と診断され兵隊に行けなかったんだ。
      これも何かの運命のいたずら?
      俺は色盲じゃないんだけどな〜」

      「同級生や沢山の友人が戦争に散った・・・
      俺だけ生き残り申し訳ない気持だ」

      祐一が
      「社長、戦後こうやってホンダという素晴らしい会社を作り若者達に夢を与えた
      んですもの。
      亡くなられた戦友だちも、きっと喜んでますよ」

      少ししんみりした話題になった。

      宴会部長の沖が
      「田中さん、飲みが足りないよ!
      どんどん飲もう・・・」

      場を盛り上げた。

      宗一郎氏が
      「俺は非科学的なタイムスリップ?そんなことは信じられないのだが現に二人が
      目の前にいる。
      なんだか運命的なものを感じるのだが・・・」

      祐一が
      「私も非科学的なことは信じません。
      ただ私達の時代、タイムスリップは物理学の世界では真剣に議論されてます。
      科学者の大半が相対性理論によると特殊な条件が整えば原理的には過去への
      タイムスリップが可能・・・って。
      ただ私が考えるに原理的に可能であっても人類がタイムマシンを開発することは
      ないだろうと考えてます。
      もし未来の人類がタイムマシンを開発したとします。
      そうだったら今の時代、そして2020年にも未来からの人類の観光客で一杯に
      なるはずです。」

      さすがにインテリの祐一、知的な説明をしていた。
      隣の沖はチンプンカンプンという顔をしていた。
      宗一郎氏も
      「田中さん、俺は小僧時代勉強というのが大嫌いでな通信簿とやらも親などには
      見せられんかった。
      だが機械いじりが人一倍好きで物真似が嫌い!
      田中さんは藤澤タイプだな。
      頭がいい!
      俺には相対性理論・・・?
      さっぱりわからん」

      http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E5%AF%BE%E6%80%A7%E7%90%86%E8%AB%96

      「理屈は抜きにしてどうやってこの時代に?」

      「沖、お前も濃霧で頭痛がしたんだよな」

      「御殿場に近づくにつれ霧が濃くなって頭がガンガン痛くなって仕方なく車の
      中で仮眠したら・・・この世界?
      田中さんがいて本当に良かったよ〜
      気が狂いそうだったもん」

      祐一も
      「目が覚めたら石ゴロゴロの原っぱ?
      頭が混乱しましたよ。
      たしか駐車場に入れたはずなのに・・・
      そうこうしていくうち走っていたら原さんの乗るパトカーとすれ違い職務質問をされ
      今に至っているわけです」

      「不思議なことがあるものだ」

      宗一郎氏は腕組みをしながら考えた。

      「田中さんと龍也に何か運命的なことがあるのかな」

      沖は
      「俺は社長と原さんに出会えただけで満足!
      もう今でも夢を・・・
      そんな感じですよ」

      原も
      「私も最初目撃した時はびっくりなんてものじゃありませんでした。
      こりゃ大変だ!で即追いかけましたもの」

      「原さん、あの時の目つき、怖かったですよ 笑」

      宗一郎氏が
      「2020年って日本に資源がないって言ったよな」

      「はい」

      「日本は戦争中も南方から石油や資源を輸送船で運んだ。
      しかしアメリカの潜水艦狼戦法で味方の輸送船はことごとく撃沈された。
      資源がなければ日本は干上がるのみ。
      横綱と子供の相撲のようなものだ。
      大和魂なんてくそくらえだ。
      アメリカとの戦争は無謀だった・・・
      しかしな、俺は日本地図を見ていつも思うんだ。
      本当に日本に資源がないのか?とな。
      俺は人と違って物真似も嫌いだが発想も人と違う。
      日本地図を見ていて資源は陸地の下にあるだけとは限らんだろ?
      海の下にだってあるはず!
      日本を見てみろ。
      4周海に囲まれ伊豆7島まである。
      その大陸棚に資源が眠ってないか?」

      祐一ははっとした。
      日本列島は長い島国。
      昭和37年と違い沖縄も返還されている。
      国土は狭いけど領海の部分まで入れればかなりの広さだ。

      宗一郎氏は
      「2020年といったら技術も相当進歩しているんだろう。
      海の底を調べるのは簡単じゃないのか?
      もし石油でも鉄鋼でも金でも資源が見つかれば日本経済はまた不死鳥のごとく
      蘇るんじゃないのか」

      「あとカメラで太陽電池とか言ったよな。
      2020年は太陽から電気を補っているのか?」

      祐一は
      「太陽・風力・水力・地熱・原子力・火力・水力・他様々ですが自然エネルギーに
      方向を定めようとしているのですがまだ安定したものになってません。
      太陽電池も雲に隠れれば効果は薄いですし・・・」

      「2020年は人類も宇宙に積極的に行っているんだろう」

      「はい、有人飛行も可能です」

      「もっと発想を変えなさい!
      太陽が雲に隠れるなら隠れない場所に行けばいいじゃないか」

      「えっ?」

      「宇宙に発電所を作ればいいんだよ」

      祐一は手を叩いた!
      そうか!地球の大気圏に太陽光発電所を打ち上げればいいんだ。
      そうすれば全世界に電気を供給出来る。
      地球の地面にいくら発電所を作ったって限界がある。
      領土問題や資源の奪い合いで戦争にも発展する。
      宇宙だったら領土問題などない。
      太陽光なら資源も無限だ。
      日本が率先して計画すればどん底の日本に再び仕事が溢れ活気が出る。

      祐一は宗一郎氏のなんと発想に柔軟さ。
      改めて敬服した。

      「社長、素晴らしい考えです。
      すごい発想力です」

      「だから俺は物真似が嫌いって言っただろう」

      沖・原も宗一郎氏の話を真剣に聞いていた。
      沖は
      「社長、すげぇ〜頭エェ〜〜!」

      「俺は劣等生だよ。
      龍也と同じだ 笑」

      「あちゃ〜」

      沖は頭を掻いていた。

      「だけどな龍也!
      俺はお前にも期待している。
      俺に似て不良だ!」

      「えっ?」

      「そんな否定することもないだろう。
      若いうちはそのくらいの元気さがあっていい。
      藤澤や田中さんのように優等生も必要だ。
      だけど俺や龍也のように劣等生も使い道あるぞ!」

      「俺なんか一生メカニックで・・・」

      「龍也は見所がある!
      俺に似て発想に柔軟性がある。
      2020年は電気自動車ばかりと言ったよな。
      世の中の車好きの人間がみんな電気自動車を望んでいるか?
      仮に1%、Sのようなスパルタンな車が欲しいというユーザーがいる。
      ガソリン代が高騰してもガソリン車に乗りたい!
      絶対沢山いるはずだ!
      ホンダを含めて世界の自動車メーカーが、そういう車を作らないなら
      作ればいい。
      技術のノウハウも必要だから最初は血ににじむ苦労だろう。
      整備工場から始めたっていい。
      ガソリン・スポーツカー専用の工場をな・・・
      俺だって22才の時に修理工場を始めたのが、きっかけだ。
      それがホンダ自動車の産声だ!」

      沖は真剣そのもので聞いていた。
      武者震いのように震えていた。

      宗一郎氏は
      「田中さん、龍也、原さん、男なら夢を大きく持て!
      1度生まれてきた人生、冒険してみろ!!
      田中さん、あんたは藤澤タイプだ。
      頭もいい!
      政治家をやって日本を立ち直らせればいいんじゃないのか?」

      祐一は数日前、父の圭一から言われた「政治家をやってみないか」の
      言葉を思い出した。
      その時は俺なんかにとんでもない!と断ったが社長の説得には妙に
      うなづいてしまった。
      もしかしたら俺でも・・・

      祐一ははっと気がついた。
      「社長、大変夢のある元気づける話ありがとうございます。
      しかし今昭和37年。
      2020年ではありません」

      「昭和37年に来れたなら帰ることも出来るだろう。
      濃霧に遭ったんだろう。
      頭痛がしたんだろう。
      また濃霧の日に現場へ行ってみたらどうだ」

      祐一は正直あきらめていた。
      2020年には戻れまい。
      このまま沖とこの時代の漂流者として彷徨う・・・
      そう覚悟していた。

      宗一郎氏のアドバイスは凄い勇気をくれた。
      真っ暗闇のトンネルの中で一条の光を見た感じだった。

      「原さん、あなたも警察官。
      夢を大きく持ちなさい!
      警視総監になってやるんだ!
      そのくらいの心構えで仕事に励まなくちゃ!」

      3人は飲み食いも忘れ真剣に聞いていた。

      親父さんが
      「あいよ!
      おまちどおさん!!
      リンゴとトマトの丸焼きだ」

      そう言いテーブルに置いた。
      ベーコンで巻いたリンゴとトマトを備長炭で熱く焼いた親父さんの自慢に
      一品だ。

      「なんだ、今日は全然食が進まないね〜」

      沖が
      「いやこれからが本番です。
      店のビール全部飲んじゃうよ〜」

      さっきの真剣な顔から、いつものひょうきんな沖になった。

      「社長!田中さん、原さん
      どんどん飲もう・食べようよ!!」

      そう言いトマト巻きを手に取りパクッ!
      「アチチチチッ・・・!」

      親父さんは
      「おいおい、いきなり口にしたら火傷するぞ。
      あわてんぼうだな〜」

      一同笑いが出た。
      祐一も
      「沖は相変わらずだな〜」
      しかしこれが沖のいいところ。

      「龍也、お前もあわてんぼうだな。
      せっかちというか俺とそっくりだ!」

      さっきまでの固い話題から沖の火傷事件で一気に話がほぐれた。
      それからはビールが進んだ。
      4人は気持ち良く飲んだ。
      一人は世界でも有名な偉大な人物なのに全然偉ぶらない。
      それどころか沖と肩を組み合って談笑している。

      祐一は
      「原さん、こんな幸せなひととき、ないですよ」

      「私もです。
      田中さん、沖さんの人柄、大好きです。
      ずっ〜と一緒にいてもいいですね」

      「私もです」

      2020年に帰りたい未練もあるが、もし戻れる機会があったら俺と沖は
      どんな心境だろうか。
      複雑な気持ちだった。
      2020年の今頃、妻の加奈は真剣に心配して捜索願いを出しているに
      違いない。
      両親も眠れぬ日々だろう。
      そんな状況の中、俺はこうやって楽しく酒を飲んでいる。
      それを思うと複雑だった・・・

      考えても仕方ない。

      すでにビール10本は超えていた。
      宗一郎氏と祐一は顔を真っ赤にしていた。
      沖と原さんはまだまだ・・・という顔。
      社長のことを気遣って
      「原さん、沖、どうする?」

      沖は物足りなさそうな顔。
      「社長、日本酒飲める?
      一杯だけ行きましょうよ」

      「ったく・・・」

      祐一は苦笑した。
      沖のペースで飲んだら宗一郎氏は2日酔いになってしまう。

      「一杯だけだぞ!」

      「は〜い」

      祐一は親父さんにこっそり勘定を聞いた。
      もし足りなければ申し訳ないが原さんにお借りしなければ・・・
      恐る恐る聞いたら手持ち金ギリギリだ。
      ほっとした。
      わからないよう先に会計を済ませた。

      時間はあっという間に過ぎお開きにした。

      宗一郎氏は
      「飲んだ!食った!
      いや〜楽しい飲み会だった」

      4人は
      「ご馳走さま!」
      そう言い店を出た。
      祐一が最後に親父さんにご馳走さん!と言ったところ
      「2020年に戻れたらいいね」

      会話が聞こえていたようだ。
      小さい店内、聞こえないほうがおかしい。
      前に親父さんから「俺の勘は当たるんだ」の言葉を思い出した。
      信じられない気持だったろう。

      沖は足取りも軽く社長と歩いていた。
      祐一は少しふらつく。
      アパートに着いたら酔いで寝てしまいそうだ。

      部屋に入り社長・沖・原さんはパソコンの画面に見入っていた。
      社長のおぅ〜!の連発。
      Sの爆走そして2020年の東京の風景を見ているのだろう。

      眠気の中、ふと宗一郎氏の言葉「海底に眠る資源、宇宙太陽光発電、
      政治家、そして沖の大きな夢・・・」
      それを想像しながら寝込んでしまった。

      リリリリリ・・・・

      目覚まし時計が鳴った。
      う〜ん・・・
      祐一が腕時計を見ると5時。
      あれからずっと寝てしまったようだ。
      原さんもすぐ起きてきた。

      「おはようございます。
      田中さん、ぐっすり眠れましたか」

      「おはようございます。
      すみません、先に寝てしまって。
      あれからまた飲んだんですか?」

      灯りの付いた部屋を見ると日本酒とコップがあった。

      「3人で少しですけど飲みました。
      社長と沖さんの会話が面白く寝るのがもったいないくらいで」

      「ったく沖は社長も今日からまた忙しい身分なのに」

      話していくうち社長も起き出した。
      二人は
      「おはようございます」

      「おはよう!」

      沖は・・・と見るとまだ高いびきを掻いている。
      大物の証か?それともただの無神経か?

      「社長、すみません。
      沖の子守をしてもらって・・・」

      「龍也の楽しい話を聞かせてもらって有意義な時間でした。
      時間さえ許せばもっと聞きたかったくらいです」

      「沖〜!時間だぞ、起きろ〜〜」

      更にいびきが大きくなる。

      「この野郎・・・」

      「いや寝かせておきましょう。
      私は6時の電車で帰ります」

      「社長、朝食は?」

      「いや、ありがとう。」

      「田中さん、昨日は2020年のことをよく知らないのに生意気なことを
      言いました。
      だけど二人は見所がある。
      是非夢を追いかけて夢を掴んでください」

      「昨夜龍也にも伝えました。
      あなたも龍也も若いからこれからの日本を立ち直らせてください。
      日本人は終戦直後の焼け野原からも立て直したんだ。
      また不死鳥のごとく復活します」

      そう言い立ち上がり出かける準備をしだした。

      沖はまだ寝ている。

      祐一が沖をゆすった。

      「沖!沖〜〜」

      う〜ん・・・・

      しばらくして薄目を開け
      「沖、社長が帰ってしまうぞ〜」

      ムクムクッと起き出した。

      「あっ社長、おはようございます」

      「おはよう!」

      「昨夜はうまい酒をありがとう。
      楽しかったよ」

      「えっ、もう帰るんですか?
      早いよ〜」

      「沖が起きるのが遅いんだ」

      慌てて起き出し
      「何時の電車で帰るんですか?」

      「もうまもなく出ようと思います」

      えっ〜って顔している沖に
      「龍也、またいつでも会える。
      頑張って夢掴めよ!」

      「もし二人が2020年に戻って夢果たせたら俺のところに報告に来い!
      そうか・・・
      2020年じゃ俺は生きてないか。
      じゃ墓へ報告に来い」

      二人はしょんぼりしていた。
      宗一郎氏は
      「何、朝からしょげた顔しているんだ!
      元気出せ!」

      沖が
      「社長、もう出ちゃうんですか?
      ちょっと待って・・・」

      慌てて服を着だし
      着替え用のシャツを取り出し
      「原さん、油性のマジックないですか」

      そう言いマジックを借り
      「社長、Tシャツにサインください
      このシャツを見ていつも社長を思い出します」

      サインをした社長は
      「俺の弟子だ!
      頑張れよ!」

      沖は無言でうなづいた。

      「田中さんも2020年に戻れるのを祈ってます。
      頑張って日本を立て直してください」

      「はい、ありがとうございます」

      原が
      「社長、車で駅まで送ります」

      「悪いな、じゃ頼もうか」

      4人は駐車場に降りた。
      沖が唇をかんでいる。
      別れるのが辛いようだ。

      「社長!ありがとう」
      「社長、気をつけて。
      ありがとうございました」

      二人は社長の手を握りお礼を言った。

      S500が発進して行った。
      沖はいつまでもSを目で追っていた。


      「沖・・・
      頑張ろう!
      いつか帰れたら社長のアドバイスを参考にお前は事業をスタート。
      俺は・・・政治家?
      勉強しなくてはな」

      しばらくして原さんが戻ってきた。

      「原さん、今日Sのアライメント調整させてください。
      まだエンジンの調整しかしてなかったし・・・」

      沖が
      「俺もエンジンバランス取りさせて。
      まだ調整しかしてないし」

      「今日は天気もいいし私もやります。
      またSが別車になっちゃう」

      沖が工具をガチャガチャ持ってきた。
      沖にとって料理人の包丁のようなものだ。
      18才からメカニックでローンを組んで買った片腕のような相棒。
      スナップオンだ。

      http://www.snapon.co.jp/

      世界一流の工具だ。

      「沖さんはメカニックだから素晴らしい工具持ってますね。
      私なんかSに積んであった車載工具しかないもんな」

      「大丈夫!
      俺に任せればどんなエンジンも絶好調にさせちゃうよ」

      「工具の使い方、教えてください」

      「あいよ」

      「沖、工具箱に糸あるか?」

      「あるよ」

      「あと水準器とノギス・・・」

      「何でも任せて!」

      そう言うとゴソゴソ出した。
      沖の工具箱ななんでも箱だ。
      祐一は感心した。


      http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88

      4輪アライメントは簡単に言うとタイヤの角度を変えることだ。
      車は使っていくうち微妙に角度が狂う。
      本当に走るのが好きな車好きには欠かせない整備だ。
      専門ショップに頼むと目の飛び出る整備料金を請求される。
      祐一のやろうとしている調整はあくまで糸を使用した4輪アライメントだ。

      「田中さん、アライメントも教えてください」

      「簡単です。
      じゃSを水平な地面の場所に移しましょう」

      原がSを移動した。
      駐車場内の水平な場所を探し祐一が
      「ハンドル角度水平にしてください」

      沖もアライメントを手伝った。
      祐一と沖のタッグなら10分もあれば簡単に出来る。
      これで原さんのSはコーナリングマシンだ。

      祐一と原、沖二手に分かれ糸を使いタイヤの微調整を行う。
      原は真剣そのもので見ていた。

      「田中さんさ〜ん、そっち出来た?」

      「いや、まだ・・・・」

      「出来た〜?」

      「もう少し・・・・」

      「ったく・・・」

      さすがに本職の沖の手際は早い。
      祐一も手慣れたはずだが沖にはかなわない。

      「田中さん、まだまだ修行が足りないね」

      糸を引き角度の微調整をやった。

      沖が
      「原さん、これで俺達Sも峠でかなわないマシンになったかも。
      あとエンジンが冷えたらエンジンバランス取りしてあげる。
      更にエンジンが気持ち良く吹き上がるよ」

      「嬉しいですね〜
      じゃ朝食にしましょうか」

      「やった〜
      俺、腹ぺこ・・・」

      「沖、昨晩あれだけ飲み食いしてもうガソリンがないか。
      燃費の悪い奴だ」

      「若い証拠ですよ」

      「この野郎 笑」

      3人はアパートに戻った。
      「原さん、電話借りていいですか?
      今夜、バイトに行こうと思って・・・」

      「いいですよ」

      電話をしたら無愛想な応対だったが御殿場駅7時集合だった。
      「田中さん、夜は冷えるから防寒着持って行ったほうがいいですよ」

      「倉庫にあるでしょう。
      大丈夫です」

      「だけど昨日は楽しかったな〜」

      沖サイン入りのTシャツを取り出し
      「俺の一生の宝物。
      だって宗一郎氏の弟子だもの!」

      胸をはっていた。

      「弟子・・・?
      普段のお前を見ているとな〜」

      「任せてよ!
      俺だっていざとなれば」

      朝食を済ませ3人は再びSへ。

      「原さん、半日くらいかかるけどエンジン分解して別物のエンジンに
      仕上げるからね」

      「えっ〜そうなんですか。
      だって今日はこれから夜勤仕事なのに」

      「大丈夫、今までの恩返しですよ」

      http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB

      工具を取り出しエンジンを手際よく分解しだした。
      油まみれになりながらもエンジンパーツ1つ1つを丁寧に清掃・調整しつつ
      原さんに説明していた。
      整備をしながらも
      「田中さん、原さん、俺、師匠(宗一郎氏)から言われたように、もし2020年に
      戻れたら若者が車に興味が出る世の中にしたい。
      小さい整備工場でいい。
      スポーツカー専用のショップで電気自動車は出入り禁止 笑
      いつか原さんのようなS500を開発出来たらいいな〜」

      沖の普段のおちゃらけな目ではなくギラギラした頼もしい若者の目だった。

      駐車場の下にはビニールがひいてある。
      そこにはSのエンジンパーツがずらり・・・

      祐一は沖の手際を見て
      大したものだ。
      ホンダの車とはいえ、まるで一流の料理人のような手さばき。
      見ていて惚れ惚れする。

      「俺も宗一郎氏から言われた政治家・・・」
      2020年の日本は国民の心まで荒廃しきっている。
      政治も腐敗しきり若者もどんどん日本に見切りつけて海外へ行っている。
      沖などは珍しい存在だ。

      いつ戻れるのかわからないが俺も日本を立て直すために、いっちょ男になるか!

      「原さん、そこ押さえて・・・」

      エンジン調整に夢中の沖。
      10月だというのに汗びっしょり。
      調整しながらも工具やエンジンの要所要所を原に教えている。
      原は無言でうなづいている。

      「沖、エンジン調整だけで改造するなよ。
      ノーマルでも十分ポテンシャルの高い車なんだから」

      「師匠のDNAが入った車だもの。
      怒られちゃうよ〜」

      あっという間に時間は過ぎエンジン組み立てに入った。
      下のビニールには磨き込まれたパーツがずらり。
      沖の手際良さでどんどん味付けされていく。
      料理人が自慢の一品を仕上げるみたいだ。
      沖の手はもう真っ黒、
      油で汚れている。
      光り輝いている工具も取っては油でくすんでいる。

      祐一と原は沖の包丁裁きに見とれていた。

      「さぁ〜終了!!」

      「原さん、エンジンかけてみて」

      原が運転席に座り始動。

      普段から気持のいい音楽を奏でるS500。
      まるでこの世の名曲?というようなエンジン音。

      「少し試乗してみてください」

      原は名曲のようなエンジン音を響かせて走って行った。

      「沖、凄いな〜
      まだ3時だぞ」

      「久々に腕が鳴りましたよ」

      そう言いながら汚れた工具1つ1つを磨いていた。
      まるで包丁を丁寧に研いでいるかのよう。
      試乗で出かけたのに戻ってこない。

      「沖・・・
      どこかでエンコしているんじゃないのか?」

      「遅いね〜」

      しばらくして戻ってきた。
      降りてくるなり
      「沖さ〜〜〜ん!
      凄い!
      何これ?
      まったく別車!
      気持ち良く回るし足回りも全然違う」

      戻ってこない理由がよくわかった。
      沖料理人の手にかかればどんな車もスポーツカーだ。

      「原さん、良かったね。
      喜んでもらえて嬉しい」

      「疲れたでしょう。
      家で休みましょう」

      3人は部屋に戻り原は台所に立った。
      何やら米を研いでいる。

      「原さん、食事簡単でいいよ」

      今夜の弁当です。
      おにぎりですが作りますよ。

      「すみません」

      「私は今日6時には家を出ます。
      鍵預けておきますから」

      「一緒に出ます」

      軽い食事を済ませて3人は時間まで昼寝した。
      さぁ〜今日の倉庫作業はどんなものか・・・
      祐一は不安一杯だった。

      6時になり3人は家を出た。
      祐一の手には原さんお手製のおにぎり弁当。
      嬉しいかぎりだ。

      二人は御殿場駅に向かう。
      外は肌寒い。
      倉庫に行けば防寒着もあるだろう。

      駅に着き少し待ってると、それらしき作業員が集まりだした。
      みんな知らない顔・顔・・・
      菊池さんはいないのかと思っていたら、しばらくして祐一と沖の姿を確認
      するや大きく手を振ってきた。

      「なんだお前ら、懲りずにまた来たか!」

      「また世話になります。
      宜しくお願いします」

      「今夜も荷物一杯だぞ。
      泣きっ面するな」

      「お手柔らかに・・・」

      話していくうち、ボンネットバスが来た。
      今日は知っている人がいて心強い。
      先日はまるで護送車にいるような気分。
      不安で一杯だった。

      倉庫に着き、いつものように点呼。
      菊池と一緒に並んだ。
      監督らしき人が菊池、祐一、沖を呼び
      「菊池、今日はトラック運転だ。
      運転手がみんな風邪でダウン。
      荷物が倉庫に溢れているんだ。
      3人で3台トラックで一晩フル回転だ」

      「そこの二人運転出来るよな」

      二人は
      「運転は出来ますが免許証を持ってきてません」

      本当は免許証は持参してあるが、まさか見せられない。

      「運転出来ればいい!
      4トン車だ。
      隣町の倉庫往復ピストン輸送だ」

      菊池が
      「今夜は楽な仕事だ。
      向こうに行けば作業員もいる。
      少しは楽出来るぞ」

      倉庫場に行くと荷物が崩れんばかりに山積みになっている。
      駐車場にトラックが3台。
      菊池が
      「トラックはあれだ。
      運がいいな〜
      新車だぞ」

      見るとボンネットトラックが3台置いてある。

      昭和37年型いすずトラック

      2020年の時代からしたら博物館入り間違いなしの骨董品だ。

      「おい、倉庫につけようぜ」

      菊池はトラックに向かい歩き出した。
      二人はそのあとをついて歩き運転席に乗り込んだ。
      なんというシンプルさ・・・

      トラック運転席


      ラジオすらない。
      運転に必要な物以外まったくない。

      運転席から菊池が大声で叫ぶ。

      「お〜い、バックで倉庫へつけろ〜」

      祐一はエンジンをかけた。
      すごい爆音!
      すごい振動だ。
      ギヤを入れようとしたら入らない?
      えっ???

      「早くしろ〜
      何やってんだ!」

      隣の沖を見ると、すぐわかったようでトラックを発進させた。
      菊池が降りてきて
      「何やってんだよ!!!」

      「すみません、ギヤが入りません」

      「お前、ダブルクラッチだろう」

      「ダブルクラッチ?」

      沖が急いで走り出してきた。
      「田中さん、昔の車なんだからダブルクラッチ。
      クラッチを2回踏んでギヤチェンジして〜」

      菊池が怪訝な顔していた。
      「昔の車・・・?」

      祐一は
      「あっそうか!」

      ダブルクラッチなど初めての経験。
      何度か試行錯誤しつつ、やっとギヤが入った。

      ハンドル操作をしようと思ったら動かない。

      えっ?

      力を入れたら動いた。
      パワステなどない重ステだ。
      まるでヘラクレスのような怪力が必要。

      「こりゃ〜今夜も苦戦するぞ」

      祐一は冷や汗というか汗びっしょりだ。

      なんとかバックで車を移動。

      「お前等、本当に車の免許あるのか?」

      菊池は不機嫌そのものだ。

      「急いでやらないと山のような荷物裁けないぞ」

      そう言い荷物を積み込んだ。

      幸いにも荷は軽い。

      満載にして菊池から地図をもらった。
      「行き先はここだ。
      明日の朝までピストン輸送だ。
      俺のあとついてこい」

      ひょいと乗り込んだ。
      二人は慌てて乗り込みダブルクラッチをしながらギヤを入れ発進。
      ハンドルが重い・・・
      沖のような力持ちなら大丈夫かもしれないがハンドル1つ切るのも大変だ。

      夜道を3台連なって走る。
      菊池はかなり飛ばす。
      祐一も沖も走り屋。
      走ることは自信あるが慣れない車。
      特にギヤ操作に悪戦苦闘だ。
      その都度、菊池のトラックと距離が離れる。
      苦戦しつつ隣町の倉庫に到着。

      「おめぇら!
      本当に使えない奴らだな。
      運転もまともに出来ないのか!」

      降りるなり大目玉を喰らった。

      「すみません」

      二人は謝った。

      沖が
      「田中さん、ハンドル操作辛いでしょう。
      俺も大変・・・
      パワステに慣れているから、まるでロックされているみたい」

      「あ〜、ハンドルも大変だがクラッチがな・・・
      まだ慣れない」

      作業員の手伝いもあって、すぐ荷は捌けた。

      「行くぞ!」

      菊池は義足で足が悪いのに身も軽く運転席に乗り込む。
      さすが、もと戦車兵だ。
      祐一は妙に感心した。

      さっきよりかはクラッチ・ギア操作も慣れてきた。
      沖の走りもそんな感じだった。
      帰りは編隊飛行ならぬ3台きれいに並んで倉庫へ戻った。

      何度か往復していくうち、祐一は周りの風景を見る余裕が出来
      走っている道路が国道246とわかった。
      もしや・・・と思い走っていると見覚えのある場所。
      まもなく石がゴロゴロしている空き地があった。

      「あっ!!!」
      俺がこの時代に迷い込んだ場所だ。
      あっという間に通り過ぎた。
      場所を覚えておかなければ・・・
      いつか帰るためにも。

      往復していくうち、夜の休憩の時間に入った。
      菊池、祐一・沖は休憩室に入り沖がお茶を入れた。

      菊池が
      「今夜は楽だろう。
      しかし1回目はどうなることやら・・・
      使えねぇ〜って思ったけど今はきれいに付いてくる。
      この野郎・・・と思って峠を飛ばしてもピッタリだ。
      不思議な連中だぜ」

      「慣れない車でして」

      「さっき昔の車・・・とか言ったよな。
      俺達が今日乗っているトラック、今年買ったばかりの新車だぜ」

      「・・・・・・」

      返答に困った。

      「まぁいい、飯にしようぜ」

      菊池は弁当をほおばっていた。
      祐一と沖は原さん手作りのおにぎりを食べた。

      仮眠をしつつ深夜の仕事、次は朝まで再びピストン輸送だ。
      難なくこなし、山のように積み上げていた荷物もだいぶすっきりした。
      トラックの凄い爆音と振動で耳がおかしくなったような気分。
      腕まで痺れている。

      朝5時、終了した。
      「ふぅ〜、今日も終わった・・・」

      「田中さん、今日はいい経験したね」

      「あ〜、無事故で終わって良かった。
      何か事を起こしたら原さんに迷惑かけるしな」

      事務所へ行き給料をもらった。
      深夜手当もあるから日給750円だ。
      嬉しい。
      これで生活が食いつなげる。

      菊池が
      「これから一杯!といきたいところだが朝だもんな。
      またいつでも来いや!」

      「使えない俺達だけど宜しくお願いします」

      そう言い御殿場駅で別れた。

      アパートへ向かう途中、
      「沖、トラックで走った場所246ってわかったか?」

      「途中でわかったよ。
      あっ俺が仮眠した場所だ」

      「俺も石ゴロゴロの空き地、場所を確認したよ。
      いつか帰れることを願ってな・・・」

      「前のように濃霧が出たら戻れるかな。
      だけど原さんと別れるの辛いし・・・」

      「あ〜、原さんにはどんな言葉を使っても感謝出来ない」

      歩いていくうちアパートに着いた。
      部屋の灯りはついている。
      原さんが帰宅している。

      「ただいま〜」

      「お帰りなさい!」

      アパートに着いたらホッとした。
      眠気と疲れが出た。

      「疲れたでしょう」

      「意外と昨夜は楽でした」

      原さんが警察官という職のため、あえて運転した・・・を言わなかった。

      「原さん、昨日私が仮眠して今の時代に迷い込んだ場所通りました」

      「あっそうなんですか。
      場所は私もわからないしな〜
      出会った場所は246の途中ですものね」

      祐一はふと思った。
      原さんと出会ったパトカー、あの日から何日が経ったんだろう・・・
      計算するとまだ今日で6日目。
      「まだ6日か。
      もう何年もいるみたいだ」

      僅か6日でいろんな人と出会った。
      原さん、鈴木刑事課長、零戦乗りの焼き鳥屋親父さん、口は悪いけど義足の
      戦車兵の菊池、そして本田宗一郎氏・・・
      いろんなことを教わった。

      原が用意してくれた朝食を3人で食べたら睡魔に襲われた。
      「眠いでしょう。
      今布団をひきます」

      3人は眠り込んだ。

      何時間経っただろう。
      祐一は目が覚めた。
      見ると二人はまだ寝ている。
      さて・・・今日はやることないな。
      沖は相変わらずいびきをかいている。

      しばらく何も考えず外を眺めていると今日は天気が悪そう。
      「霧か・・・」

      濃霧が出ても戻れるのかな?
      戻れなかったらこの時代に一生いるのか、
      この際、宗一郎氏に世話にでもなるか。
      祐一は一人でニヤニヤ笑っていた。

      しばらくして原さんが起き出した。
      「あ〜、よく寝た!
      熟睡しましたよ」

      「そりゃ良かった。
      警察官も激務の仕事ですからね」


      高いびきをかいていた沖も起き出した。

      大きく背伸びをして
      「相変わらず早起きですね」

      「沖、もう夕方だぞ。
      俺も今日は寝過ぎた」

      「今日はやることないな」

      「テレビやゲームで時間つぶしましょうよ」

      沖がテレビのスイッチを入れた。
      何気なくテレビを見ていると天気予報になった。

      「今夜の御殿場地域は濃霧になるでしょう」

      祐一は電気がビリビリッと全身を走った。

      「沖!沖〜」

      沖はびっくりした顔していた。
      「どうしたの?」

      沖はテレビを見ていなかった。
      キョトンとしていた。
      原も同じだった。

      「今、天気予報で今夜の御殿場、濃霧らしいんだ!」

      「えっ!」

      沖が立ち上がった。

      「田中さん、それではもしかしたら・・・」

      「もしかして?」

      原が
      「先日、濃霧に出会った時間って何時頃ですか?」

      「えっと深夜です」

      「もう少し様子みましょう。
      まだ夕方だし同じくらいの時間帯がいいんじゃないかと」

      たしかにそうだ。
      まだ夕方、これから夜。
      慌てても仕方ない。
      天気予報をじっくり見よう。

      祐一は複雑な心境だった。
      たぶん沖も同じだろう。
      濃霧が出るのは嬉しいけど原さんと永久にお別れ・・・
      それはいやだ。
      祐一と沖にとって恩人中の恩人。
      恩を仇で返すようなものだ。
      3人はテレビを見ながら黙り込んだ。

      しばらく時間が過ぎ再び天気予報が始まった。
      3人は釘付けのように見入った。
      やはり同じように「濃霧予報」だった。

      原は
      「田中さん、沖さん、署に行きましょう。
      荷物をまとめて!」

      「えっ!」

      せかすように原は二人を説得した。
      「二人には2020年にご家族がいるんです。
      このチャンスを逃してはいけません」

      沖が
      「俺、2020年に帰れるのは嬉しいけど原さんと別れるのは嫌だ!」

      駄々っ子のようになった。

      「濃霧が出たとしても戻れるという保証はないかもしれません。
      だけどチャンスを逃す手はないです。
      もし2020年に戻れたら、また御殿場署へ私を訪ねに来てください。
      警察は退職しているけどまた会えますよ」

      「原さん・・・・」

      沖は原の手を握った。
      手が震えてた・・・
      「俺、なんも恩返ししてない。
      ごめんよ〜」

      「何言ってんですか。
      沖さん、昨日も油まみれになって私のS整備してくれたじゃない。
      もう別車ですよ」

      「さぁ〜出かける用意しましょう。
      私から署の上司を説得しますから」

      祐一が
      「沖、そうしよう。
      いいチャンスかもしれない。
      2020年に戻れるかわからないけど戻ったら一番に原さんを尋ねよう。」

      沖はまだ渋々用意していた。
      昭和37年の今を相当気に入ったようだ。

      祐一がこっそり沖に声かけた。
      「沖、今朝もらった給料、原さんに預かってもらおう」

      「はい」

      祐一に手渡そうとした時
      「あっ、ちょっと待って・・・」
      部屋の隅に置いてある沖の愛用しているスナップオンの工具箱を
      手にした。
      「田中さん、これも預かってもらう」

      祐一は頷き
      「原さん、これとこれ、預かってもらえませんか?」

      「田中さん、沖さん、二人の汗水垂らした給料、受け取るわけに
      いきません。
      ましてや工具、とんでもない!」

      「いや、原さんには言葉では言い表せないくらい世話になりました。
      受け取ってください。」

      沖が
      「工具箱を指差し、この工具は俺にとって師匠のようなもの。
      こいつでメカを勉強しました。
      工具も大事に使えばそれに応えてくれます。
      原さんのようなSを整備出来るなら、こいつ喜んで残ってくれますよ」

      「わかりました。
      それでは受け取るではなくお預かりします。
      もし戻れなかったらお返ししますので」

      「こんな恩返ししか出来なくてごめんなさい」

      二人は頭を下げた。

      「私こそ楽しかった。
      寂しいですけど戻れることを祈ってます」

      「さぁ〜行きましょう!」

      3人は御殿場署に向かった。
      外はうっすら霧がかかっている。
      3人とも無言だった。
      戻れるかもしれない喜びと原さんと別れる寂しさ。
      祐一の心境は複雑だった。
      沖も同じだろう。
      このまま昭和37年にいてもいい・・・
      そんな心境かもしれない。
      だけど俺達はここにいちゃいけないんだ。
      俺達は2020年の人間。
      荒廃しきった2020年を救うために天がいたずらしたのかもしれない。
      そう思うと気が少し楽になった。

      3人は署に着いた。
      3人とも2階に上がり部屋に入った。
      鈴木刑事課長が座っていた。

      「原巡査、おぅ、どうした?
      おや、田中さん、沖さんまで」

      原が
      「実はさっきの天気予報で御殿場地方が濃霧の予報です。
      二人がこの時代に迷い込んだのも濃霧が原因の1つです。
      二人のSを現場へ連れて行きたいのですが」

      刑事課長が腕を組んで考えた
      「原巡査、二人の車は現在のナンバーじゃない。
      正式には公道を走れないんだよ」

      「そこをなんとか」
      原は深々頭を下げた。

      刑事課長はしばらく考えたあと、
      「原巡査、明けで悪いが制服に着替えろ!
      特別だ。
      田中さんと沖さんの車の前後をパトカーで囲んで現場へ行く。
      急いで用意してくれ」

      田中と沖は
      「無理言ってすみません。
      ありがとうございます」

      「田中さん、沖さん、ちょっと待っててくっださい」
      ロッカールームに消えた。
      刑事課長が
      「戻れればいいですね。
      私も正直お二人の今後をどうしようか頭を悩ましていました。
      原もえらい世話になりまして」

      「世話になったのはこちらです。
      まるで何年もいたかのような充実した日々でした」

      原が制服姿で出てきた
      「お待たせしました」

      いつ見ても原さんの制服姿は格好いい!

      「それでは準備します。下に降りて待っててください」

      鈴木刑事課長が
      「どれ、私も同行させてもらうかな」

      祐一と沖は下に降りS2000のほうへ向かった。
      カバーを外した。
      鍵を差し込み2台は名曲を奏でた。
      原も降りてきて
      「さすがにいいエンジン音です。
      惚れ惚れするな〜」

      沖が
      「田中さん、俺も田中さんの現場へ行くよ」

      「沖はたしかバス停のところだったろう」

      「俺、もし違う世界に行ったら嫌だ!
      田中さんと一緒に戻りたい!!」

      祐一は少し考えたあと
      「わかった。
      一緒の場所にしよう。
      そのほうが俺も心強い!」

      すでに時間は夜10時。
      「時間はまだ早いけど行きますか?」

      「はい」

      祐一と沖は頷いた。

      前後に赤色灯を点滅したパトカーに囲まれ祐一と沖は出発した。
      先導のパトカーに鈴木刑事課長と原さんが乗っている。
      道のりとして車で15分くらい。
      霧も予報通り濃くなってきた。
      祐一は運転しながら頭痛がしてきた。

      「えっ?」
      この前とまったく同じだ。
      もしかして沖も・・・・

      だんだん視界が悪くなってきた。
      昨日、場所を確認して良かった。
      ここまで霧が濃いとわかりづらい。
      原さんには場所は教えた。
      誘導してくれるだろう。
      後ろの沖の車もかすんで見える。
      どんな心境だろうか。

      現場に着いた。
      4台ともハザードを点滅しながら停車している。

      「田中さん、ここでいいですか?」

      「はい」
      祐一は頭痛で返事するのも辛かった。

      「大丈夫ですか?」

      「この前とまったく同じです」

      「沖、お前はどうだ?」

      頭を押さえつつ
      「俺も頭が痛い・・・」

      「それでは誘導します。
      石が沢山あるから気をつけて」

      原は懐中電灯を照らしながら誘導した。
      オーライ・・・オーライ・・・
      2台はなんとか石の合間を避けて停車した。
      二人は再度、降りてきて刑事課長・原に挨拶した。
      原が
      「二人がきちんと2020年に戻れるよう私と課長はパトカーに乗って
      見守ってます」

      「ありがとうございます。
      本当にありがとう」

      祐一は深く頭を下げた。

      沖が
      「原さん・・・」
      泣いていた。
      「原さん、ありがとう!めちゃくちゃ楽しかった!!」
      手を握り泣いていた。
      原も泣いていた。
      「沖さん、またいつでも御殿場署に遊びにきてください。
      これが別れじゃありません。
      2020年の世界で再び会いましょう。
      待ってますよ」

      祐一も泣いていた。
      濃霧のせいで涙は見えないだろう。
      たぶん鈴木刑事課長も目が潤んでいるかもしれない。

      「田中さん、沖さん、
      頭痛がしているなら帰れる確率、大きいです。
      急いで乗ってください」

      「はい」

      二人は再び礼を言い車に乗り込んだ。
      頭痛がひどい。
      祐一は霞んでいる原さんが乗っているパトカーを見ながらシートを少し倒した。
      祐一は少し不安だった、
      もし戻れても2020年?
      もしかして少しずれた世界?
      そうしたら俺と沖は完全に時代の漂流者・・・
      頭痛をしながらも不安が頭をよぎった・・・





      チュンチュンチュン・・・
      鳥のさえずりが聞こえた。
      祐一は飛び起きた!
      周りを見たら舗装された駐車場。
      近くを見たら沖の車。
      急いで降り沖の車のドアを開け
      「沖〜!沖!!
      起きろ!!!」
      体をゆすった。

      普段寝起きの悪い沖。
      今回はすぐ飛び起きた。

      「あっ、田中さん・・・
      ここはどこ?」

      不安気に聞いてきた。

      「俺が前停めた駐車場と同じだ。
      沖、お前のカーナビの画面つけてくれ」

      地図画面が表示された。

      「おい、俺達の世界だ!」

      「やった〜」

      二人は肩を抱きあった。

      そうだ。
      祐一は思い出したかのように携帯電話を手にした。
      すぐ自宅電話画面を出し電話をした。

      ルルルルルルルルルル・・・・・

      とても長く感じた。
      どのくらい時間が過ぎただろう。

      「・・・もしもし・・・」

      加奈の声だった。
      それも眠そうな声。

      「加奈〜加奈〜〜!
      俺だ、祐一だ!
      すまん、行方不明になって・・・」

      興奮で祐一は声がうわずっていた。

      「・・・・・・・・?」

      「あなた・・・・・・・?」
      「朝早く何を言っているの?
      昨晩遅くに家を出たばかりじゃないの!!!」

      完全に声は怒っている。
      こんな朝早くに訳のわからないこと言って何よ!?
      そんな感じだった。

      ガチャン!
      電話は切れた。

      祐一は頭が混乱した。
      俺と沖は数日間、時代を漂流した。
      しばらく混乱した頭を整理しつつ、携帯電話の画面を見たら年月日が
      「2020年10月○○日(日曜)」

      祐一は???
      すでに数日経過しているはずなのに家を出た日と同じ・・・

      またもや頭が混乱した。
      俺は夢を見ていた?

      「沖〜
      どうなっているんだか訳がわからん」

      興奮混じりに尋ねた。

      「田中さん、俺もカーナビや時計を見たら家を出た日?
      どうなってんの???」

      祐一は
      「俺達、同じ夢を見ていたのか?」

      「田中さん、ちょっと待って!」
      そう言うと宗一郎氏からもらったサイン入りのシャツを取り出した」

      「田中さん、夢じゃないよ
      ほら、師匠からもらったサイン!」

                            完      まさやん



      素人が書いた小説2020年、読んで頂きありがとうございました。
      途中、少し壁にぶち当たり連載が中断しましたが、なんとか終わりました。
      改めて読み直すと手直しが多数・・・
      こんな小説を書いたかと思うと恥ずかしくなります。
      年内中には大幅に手直しして別ブログ(新規)まさやん劇場(仮名)に
      2020年という小説で登場したいと思います。
      今回の2020年は初心者ということでストーリーの滅茶苦茶さは大目に
      見てください。
      来年、予定の新しいネタの小説は力作?になるかもしれません。

































      posted by: まさやん&花 | 小説 2020年 | 12:56 | comments(6) | trackbacks(0) | - |
      近未来小説 2020年(10)
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         祐一と沖は緊張のあまり顔が赤くなっていた。
        もし本田宗一郎氏がいたら・・・・
        二人にとって神様のような存在だ。

        応接間で署長とにこやかに談笑していた。

        鈴木刑事課長が
        「お待たせしました」

        二人が振り向いた。
        二人とも細身でメガネをかけていた。
        一人は若いタイプ。
        スーツをビシッと決めていた。
        もう一人、ネクタイはしていたが白いつなぎ姿。
        少し油で汚れていた。

        警察署長が緊張している祐一と沖を呼び
        「二人ともどうぞ中まで入ってください」

        「はい」

        署長が二人を紹介した。
        「先日電話でお話しした田中祐一さんと沖龍也さんです」

        「田中です。
        宜しくお願いします」

        「お・・沖です。
        宜しくお願いします」

        沖は緊張のあまりか、どもってしまった。

        つなぎ姿の男性が
        「本田です。
        隣の彼は中村良夫と言います。
        お話しは伺ってます」

        祐一と沖は写真でしか見たことなかったが、すぐに本田宗一郎氏だと
        わかった。
        緊張は最高潮に達した。
        神様のような宗一郎氏が目の前にいる。
        二人とも何を喋ればいいか直立不動の姿勢だった。

        「まぁ〜まぁ〜田中さんも沖さんも楽にしてください。
        俺は怖い顔してますが噛みつくわけじゃないし・・・」

        そう言い宗一郎は笑った。

        祐一は宗一郎氏の姿を見て、どこかの町工場の親父さん?
        悪ガキをそのまま大人にしたようなヤンチャな感じ。
        笑顔を見て緊張もほぐれ親しみを感じた。

        署長が
        「立って話はなんですから二人とも座ってください」

        「ありがとうございます。
        失礼します」

        二人は腰掛け
        「朝早くからここまで来ていただきありがとうございます」

        宗一郎は
        「いやいや・・・
        数日前にあなた方の情報を聞き、いてもたってもいられなくなり、すぐさま
        飛んできました。
        早くこの目で見てみたいです」

        隣の中村が
        「本当は社長は多忙で行けそうになかったのですが、重要な用事でなければ
        後回しにしろ!と言われまして急遽一緒に来ました」

        「社長業などは重要なことだけ判断すればいい。
        俺のような口うるさいのがいないほうが若い連中、伸び伸び仕事をやってますよ」

        そう言いながら大きく笑っていた。
        その目はヤンチャ坊主そのままだった。

        沖も本田宗一郎のことは本などで人柄は知っていた。
        口やかましく鉄拳や物が飛んでくるタイプ。
        短気だがとても人情味があり、厳しく叱ってもすぐにフォローしてくれる。
        雷親父のあだ名がつくほどだ。
        本田宗一郎氏の元で育った部下達は、話を合わせたかのように
        「とても怖い人・・・」と言うが、みんな決まって「とても人情味のある気持ち良い親父さん」
        と褒め称えている。

        本田は
        「私は非現実的なSFやタイムスリップなど信用してませんが現実的にこの世界に
        来られた・・・ということは何か不思議な力が作用されたんでしょうね」

        祐一は
        「私も沖も信じられない!という気持でした。
        悪夢だったら覚めてくれ・・・
        そんな心境でした」

        「慣れない時代にいきなり飛び込まれて大変だったでしょうね」

        「最初は一体どうなることやら?と思ったのですが御殿場警察署の方々の
        ご配慮、そして原巡査が私と沖を家に招いてくれてこうやって無事暮らせて
        皆さんに感謝しきりです」

        本田は話を聞きながらもソワソワ・・・
        足元の方向は駐車場の方に向いている。
        根っからの車好きのようだ。

        沖も本田宗一郎氏の事は本で読んだことがある。
        浜松の鍛冶屋で生まれ家は貧乏、しかし根っからのやんちゃな性格で元気一杯に
        暴れ回り腕白坊主を発揮していた。
        勉強は大の苦手。
        しかし機械いじりが小さい頃から大好き。

        そういう文章を読んだことがある。
        沖自身もやんちゃな子供をそのまま大きくしたような感じ。
        勉強は大っ嫌い!
        だけどプラモデルや機械いじりが大好き。
        子供の頃、父の愛用のバイクを分解してしまい大目玉を喰らったことがある。
        沖はとても親近感が湧いている。

        本田は
        「沖さん、あなたは本田販売店のメカニックをやっているそうで」

        「は・はい」

        「私は机に座っているより油まみれにエンジンをいじくっているときが一番
        好きなんだ。
        あとで未来の車のこと、教えてください」

        たしかに本田宗一郎氏の格好は知らない人が見たらどこかのモーター屋の
        メカニックだ。
        とても車メーカーの社長さんには見えない格好だ。

        沖は
        「私も本田の車が好きでメカが大好きで本田自動車に入りました。
        本田は素晴らしい車・バイクを作り続けてます。
        スーパーカブなどは2020年現在でも生産されて全世界で通算8000万台
        突破しているんですよ。

        スーパーカブ

        http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%96

        本田は目を大きくし、身を乗り出し
        「カブがまだ生産されている?
        8000万台?
        こりゃ嬉しい話だ」

        「こいつは開発に時間がかかってね〜
        たしか1年8ヶ月開発に時間かかりました」

        隣に中村良夫が
        「開発の設計者が夜も寝ずに鉛筆で設計図をひいたのに朝、社長が見えられ
        設計図を見るやいなや鉛筆を取り出し書き直すんですよ。
        「せっかくの設計図がぐちゃぐちゃ。
        開発者の面々ががっくりです。
        社長は口より先に手が飛んできます。
        会社内はよくスパナが飛んできますよ(笑)
        社長の傍にはスパナや工具類、凶器になるものは置いとかないようにしてます(笑)」

        「中村!
        最近は俺も丸くなったぞ」

        祐一と沖は二人の会話に吹き出しそうになった。

        沖は
        「私達のいる時代は電気自動車が主流になって燃費の悪い車は恐竜絶滅寸前の
        ようになっているんです。
        その点カブは燃費がべらぼうに良く頑丈・整備性が良くて世界中見かけない国は
        ありません。
        私もガキの頃、無免許で乗り回していたもんな〜」

        本田は
        「ワハハ・・・
        男はそのくらいじゃなきゃいかん!
        沖さん、気に入ったよ。
        わしと同じくやんちゃだったんだね」

        本田は打ち解けてきたのか「私」から「わし」になってきた。

        沖も
        「お・俺、私・・・なんて慣れない言葉使うと、どもってしまうから「俺」でいいですか?」

        本田は
        「俺の前でそんな固くなるな!
        俺でいいよ、いいよ。
        気に入った!!」

        すっかり本田宗一郎氏と沖は波長が合ったようだ。
        沖も最初の緊張顔から普段のやんちゃな沖になっていた。
        祐一は二人を見ていて心和む雰囲気だった。

        中村が
        「社長、今日は夕方、販売会議があります。
        あまり時間かけてお話しされていると時間が・・・」

        「そんなもの藤澤に任せておけばいい!」
        藤澤という人物は藤澤武夫。
        もう一人の創業者と言われる人だ。
        技術の本田宗一郎、販売の藤澤武夫。
        二人の関係は文字通り車の両輪だ。
        どっちが欠けても車は走れなくなる。
        タイプはまったくの逆。
        だからこそ、良かったのかもしれない。

        http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E6%B2%A2%E6%AD%A6%E5%A4%AB

        「あとで電話で連絡してくれ。
        今日は帰りが遅くなる。
        もしかしたら明日帰る・・・とな」

        中村は苦笑した。

        「中村、用事があるなら途中で帰っていいぞ」

        祐一と沖は本田宗一郎氏の豪快さに改めて感心した。
        この社長らしからぬ性格・そして物真似が嫌い、ユーモアと純情の固まり。
        宗一郎氏の性格そのものが本田のメーカーそのものだ。
        だからこそ冒険的な車・バイクが出来た。

        本田は
        「さっきから俺はあなたたちの車を見たくて見たくて仕方ないんだ」

        祐一と沖はさっきから気づいていた。
        足はソワソワ・・・
        足元の方角は外に向いている。
        まるで子供が早く褒美をもらいたい目をしている。

        沖が
        「田中さん、じゃ俺、警察署長さんに了解もらってくるよ」

        「そうだな、俺達もたまには愛車のエンジンかけないとSが機嫌そこねるしな」

        沖はそう言うと応接間を出て署長の方へ走り出した。
        祐一はこりゃ今日は本田氏と沖の車談義で日が暮れそうだ。
        祐一は苦笑した。

        署長と原巡査が応接間に入ってきた。

        「会話聞こえてましたよ。
        笑い声も聞こえてきて、もう打ち解けてますね」

        本田は
        「いや〜愉快!愉快!
        今日は仕事を忘れて、じっくり未来の車を堪能させてもらうよ」

        原巡査が
        「はい、田中さんと沖さんの車の鍵」

        沖は
        「わぁ〜、俺の車の鍵だ!」

        祐一もまだ数日しか経ってないのに何ヶ月ぶりかのような気分だ。

        祐一は
        「沖、早速本田社長・中村さんに見せようか」

        沖は得意の腕をまくりあげる格好で
        「行きましょう!!」

        4人は駐車場に入っていった。
        一般の目に触れないようカバーがかけられている。

        中村良夫は
        「社長、かなり大きい車ですね」

        本田は無言だった。

        今の時代からしたらS2000のボディは大きく見えるだろう。
        祐一は
        「沖、どっちから見せる?」

        「いっぺんに公開しましょうよ」

        「そうするか」

        沖は
        「社長さん、待っててね」

        そう言うとカバーのひもをほどいた。

        祐一も同時にひもをほどいた。
        二人とも手が震えた。
        ホンダの創始者にわが愛車を見てもらえる・・・
        そう思うと心臓がドキドキだった。
        後ろにいた本田宗一郎氏と中村良夫氏の心臓音も聞こえてきそうだ。
        ひもをほどく時間がとても長く感じた。
        ひもをほどき、沖の顔を見るとニヤッと笑い
        「田中さん、同時にカバー開けましょうよ」

        「あ〜、そうしよう」

        沖は
        「お待たせしました。
        ジャジャジャジャ〜ン!」

        沖らしい演出だった。

        二人は一斉にカバーを開いた。

        ホンダS2200

        沖のS2200はシルバー。
        祐一のS2000はレッドだ。

        本田宗一郎と中村良夫は大きく口を開けてしばらく言葉も出なかった。
        金縛りに遭ったように立ちすくんでいる。
        どのくらい時間が経っただろうか。
        いや、時間にして僅か1分もないだろう。
        だけど二人の驚きといい、感動した!という表情。
        とても長い時間に感じた。

        本田がようやく口を開いた。
        「中村・・・
        俺達の会社、こんな凄い車を作るのか」

        中村は
        「これが・・・・これが・・・・
        本田の未来の車・・・・
        感動で全身鳥肌が立ってます」

        「中村、見ろよ。
        俺が今度出す車は赤でいくぞ!と前、言ったよな。
        どうだ!未来の我が社の車の赤の似合うこと!」

        本田宗一郎氏は原巡査が乗っている愛車S500を出すにあたって開発中に
        「色は赤で出すぞ」と開発陣に命令した。
        本田は常識というのが嫌いだった。
        当時、赤い車といったら消防車くらいしかなかった。
        開発陣も正直驚いた。
        まず赤色の使用許可を運輸省が認可するかどうか?
        本田社長の命令で翌日から運輸省に日参した。
        しかしお役所は取り付く暇もない。
        門前払いだ。
        開発陣担当者は帰る足取りも重く本田社長に合わせる顔もなかった。
        そんな状況がしばらく続いたあと、本田社長が運輸省に対し
        「赤はデザインの基本になるものだ!
        世界の一流国で国家が色を独占している例など聞いたことがない!」
        と主張した。
        ようやく認可が下りた。

        この頃からすでに国益・国策を錦の御旗に振る官僚という巨大な権力機構だった。

        祐一と沖は改めて本田宗一郎氏の先見性に驚嘆した。

        本田は
        「国というのは頭でっかちだ!
        我が社が4輪事業に進出する時も役所連中と何度喧嘩したか・・・
        通産省連中相手に新規参入を認めないとは何事だ!と一喝したもんな(笑)」

        祐一は
        「私達2020年も相変わらず似たようなものです。
        官僚天国というか・・・
        何を申請するにしても書類・書類・・・で認可にも時間かかるし」

        本田は
        「まだ変わってないのか。
        困ったもんだ」

        沖は
        「社長!
        どうぞ、俺達の車、もっと近くで見てくださいよ」

        本田と中村はさっきと同じ場所に立ちすくんでいたままだった。
        沖は社長に車の鍵を手渡した。
        祐一は中村に鍵を手渡した。

        中村は
        「社長、鍵からして立派な作りです。」

        手が震えてた。

        沖は
        「さぁ〜、さぁ〜社長!
        もっと近づいて・・・」

        沖と本田宗一郎氏は友達感覚だった。
        背中を押している。

        「社長、ちょっとキーを貸してください」

        そう言うと鍵を受け取り車に向け鍵のスイッチを押すと「カチャン!」

        本田は
        「今のは何だ?」

        「ドアロックが解除になったんです。
        遠隔操作出来るんですよ」

        「・・・・・・!」

        本田は驚いた表情をしていた。

        「さぁ〜、さぁ〜」

        沖は自慢げに車の傍へ社長を寄せた。
        中村も一緒についていった。

        「社長、どうぞドアを開けてください」

        本田は感動しきりでドアに手をかけ開けると

        S2000室内

        本田と中村は言葉が出なかった・・・
        またもや、しばらく時間が流れた。

        中村は
        「社長・・・・
        この作り・・・・・!
        未来の車ってこんなに進歩するのですか」

        「あぁ〜、言葉が出ない・・・」

        二人はしばらく立ちすくんでいた。

        祐一はその間、愛車S2000のエンジンルームを開けた。
        どのくらいの時間が流れただろうか。
        祐一と沖は後ろに立っていた。

        沖は
        「社長、中村さん、エンジンを見てみたらどうですか」

        二人はふと我にかえり

        「是非見せてもらおう」

        すでに祐一のS2000のエンジンルームは開いていた。
        二人小走り気味に駆け寄り覗き込んだ。

        本田F22型エンジン

        本田は
        「うおぉ〜〜!!!!」
        中村はまたもや体が硬直した。

        またもや時間が流れていった。

        「中村!
        宝石だよ!!
        芸術品だ・・・」

        「本当です。
        なんという美しさ・・・
        これがエンジン?」

        本田はエンジンを撫でていた。
        祐一のS2000のエンジンはいつも綺麗に磨いているので油汚れやほこりなど
        まったくない状態だ。
        新車以上の美しさだ。

        ようやく本田が口を開いた。
        「沖さん・・・
        2020年という時代はこんなに美しい工芸品なのかね?」

        「電気自動車が主流になったからエンジンのない車が増えちゃいました。
        車好きには寂しいかぎりだけど」

        「馬力はどのくらいあるんだ?」

        「田中さんのSは2000、俺のSは2200の排気量です。
        馬力がS2000で250馬力、S2200で・・・」

        最後まで言う前に本田が「250馬力?!」
        またもや驚きの顔を見せた。
        中村は
        「社長!
        レーシングカー以上の馬力です!!」

        沖は
        「まもなく本田自動車はF1に参戦します。
        たしか数年後優勝もするはず」

        本田は
        「おい、本当か!
        俺の夢なんだ!!!」

        祐一はふと
        「あっ、未来のこと、教えちゃまずいかな・・・と思ったけど、すでに遅い。

        「田中さん、たしかまもなく参戦予定ですよね」

        「う〜ん、俺も正確な年代は覚えてないけど参戦は間違いないな」

        本田は
        「おい、中村!
        明日から開発陣にはっぱをかけるぞ!!」

        沖はふと思い出した。
        「中村良夫」
        名前は聞いたことあるが思い出せなかった。

        「社長!
        中村さんはF1初代監督になるんですよ。
        思い出した・・・」
        「そして本田初のF1マシンの馬力も270馬力です」

        本田と中村は顔を見合わせた。
        「中村、早速F1開発をやれ!」

        祐一が
        「沖!
        お前が歴史を作っているのかな・・・」

        「俺、余計なこと言っちゃたかな」

        沖は
        「本田は独創的な車をどんどん作ります。
        トヨタや日産とは全然違う車作りをします」

        本田は
        「俺は物真似は大嫌いだ!
        今。空冷の車を考えているんだ」

        沖は返答に困った。
        本田自動車初の小型車は空冷車としてデビューしたのだが、あまりの
        独創的な車のため失敗作に終わった。

        ホンダ1300

        http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BB1300

        沖はあえて言わなかった。
        当時の開発陣は空冷は反対だった。
        しかし本田宗一郎氏の「空冷」の一言で開発が決まり発売になったが
        不調に終わった。
        本田宗一郎氏の物真似が嫌い・・・が裏目に出てしまった。

        祐一は話題を変えようと
        「社長・中村さん、エンジン音を聞いてみますか?」

        二人とも目を大きくし
        「おぅ!是非!」

        「沖、どうする?
        どっちの車から・・・」

        「やはり田中さんのS2000のほうがスパルタンなエンジンだから」

        S2000と2200の違いはS2000が低速トルク不足だったため馬力を少し
        抑え気味にしトルクアップした。
        S2200はトルクはアップし性能はアップしたが荒々しさは影を潜めた。

        祐一はキーを差し込み
        「社長、エンジンキーを回してみてください」
        「どうぞ、運転席に座ってください」

        本田は無言でうなずき緊張が伝わるなか座り込んだ。
        座るなり・・・
        「ほぉ〜!」
        「体が包まれる・・・」

        祐一は
        「本田純正のバケットシートです。
        峠を攻めてもサーキットを走っても十分体をサポートしてくれます」

        本田は何度もうなづいていた。

        震える手でキーに手をかけ・・・

        祐一が
        「どうぞ、回してください」

        http://www.honda.co.jp/hondafan/SoundofHonda/engine/4R02/s2000.html

        S2000エンジン音

        エンジンがかかり、本田は目もうつろ状態。
        名曲を聴いているかのような顔をしている。
        祐一も数日ぶりの愛車S2000のエンジン音を聞き嬉しかった。
        祐一は
        「おい、S2000!
        本田自動車の神様にエンジン始動なんて、こんな光栄なことないぞ!」

        思わずボディを撫でていた。

        隣にいた中村も
        「田中さん、なんと美しいエンジン音ですか。
        1日聞いていても飽きない。
        名曲です!」

        沖も
        「さすが田中さんのSだ。
        機嫌いいね」

        しばらくエンジン音を聞いていた本田は中村に
        「中村!
        今日は俺は帰らんぞ。
        電話で藤澤に伝えとけ」

        「社長、大事な打ち合わせもありますが・・・」

        「藤澤に任せておけば安心だ」

        「私は夕方には帰りますが社長、宿泊先はどうするんですか?」

        「なんとでもなる」

        祐一は
        「社長、私が宿探してきますが・・・」

        「いや、気遣い無用。
        もっといろんな話も聞きたいし今日は帰るのはあまりにもったいない」

        朝10時に応接間で会い車談義であっという間に午後3時になっていた。
        途中で抜けていた原巡査もパトロールから帰ってきた。

        「ただいま戻りました」

        祐一と沖は
        「お帰りなさい!」

        沖は
        「原さん、本田社長と中村さんと車談義、最高ですよ〜」
        「社長、原巡査もS500に乗っているんですよ」

        本田は
        「こりゃ嬉しい限りだ。
        本田ファンがこんなにいるとは・・・」

        沖が
        「原さん、社長が明日朝帰る予定なんですが宿手配出来ないですかね」

        原は
        「良かったら私のアパートはどうですか?
        汚い狭いアパートですが。
        社長さえ良ければ夜焼き鳥をつまみながら車談義でも・・・」

        本田は
        「おぅ、焼き鳥ですか。
        たまには仕事を忘れて焼き鳥もいいな」

        沖は
        「やった〜!
        社長と今夜は飲み明かすぞ〜〜」

        祐一は
        「沖・・・
        社長は多忙な身なんだから寝不足にさせるなよ」

        本田は
        「俺は酒は強くないが、2020年の話も聞きたい。
        いくらでも付き合うよ」

        中村は隣で笑っていた。
        ったく、社長は・・・・という顔だ。
        「社長、会社に電話してきます。
        原さん、署の公衆電話お借りします」

        そう言うと署の中に消えていった。

        本田は
        「田中さん、沖さんのS2000は試乗出来るのか?」

        祐一と沖は顔を見合わせ・・・
        「社長、実は私達の車、ナンバーが現在のナンバーじゃない。
        道路交通法に違反するので警察も許してくれないと思うんです」

        本田は
        駄々っ子のような顔になった。
        固い事言わなさんな・・・と。

        代わりに沖はS2000の装備品やエンジンの説明をした。
        さすがメカニックだ。
        本田にとって未来の車。
        装備品1つとっても初めて見るものばかり。
        沖はわかりやすく説明している。

        祐一はその光景を見ながら俺達はなんでこの世界に運ばれたのか?
        改めて考えた・・・
        本田宗一郎氏に会えたのが本当に良かったのか。
        歴史を変えてしまう?
        松下幸之助氏と並んで「日本の経済人」トップに並んでいる夢のような人だ。
        実際会ってみて全然偉ぶらないし本当に町工場に親父さんという感じだ。

        中村が戻ってきた。
        「社長、藤澤副社長に伝えてきました。
        苦笑してましたよ」

        「俺が1日くらいいなくても会社がつぶれたりせん。
        開発陣も俺がいないことで羽根が伸ばせているよ」

        本田は
        「原さん。今日は世話になります」

        「こちらこそ嬉しいです。
        光栄です」

                              続く

                                     まさやん



        ※今まで2020年(9)まで毎週のように連載してきたのですが(10)になってから
        壁にぶち当たりました。
        田中祐一、沖龍也、原一郎・・・他、架空の人物だったため会話も何の抵抗もなく
        書けました。
        しかし今回の本田宗一郎氏、中村良夫氏は実在した人物。
        会話1つ書くのも考えてしまいました。

        小説など、ろくに読んだことがないど素人の小説作品。
        作文のようになってますが来週掲載予定の(11)が最終回になります。
        皆さんの想像しているストーリーと違うかも?













        posted by: まさやん&花 | 小説 2020年 | 12:31 | comments(5) | trackbacks(0) | - |
        近未来小説 2020年(9)
        0
           「へい、ありがとうございやす!」

          祐一達の隣に座っていたお客さんが出て行った。

          「今日は暇だね〜」

          沖は
          「田中さん、原さん、これで俺達貸し切りだね」

          親父さんは
          「どんどん飲んで食べてください」

          「親父さん、日本酒もらおうかな」

          沖は焼き鳥とビールで腹も少し落ち着いた様子。

          「へい、熱燗、冷や、どっちがいい?」

          「常温で・・・」

          「お客さん、酒好きだね」

          「沖、あまり飲み過ぎるなよ。
          明日出かけなきゃいけないんだから」

          「田中さんも原さんんも軽くどう?
          日本酒美味しいよ」

          祐一はあまり酒は飲まないがたまにはと思い
          「じゃ原さんもご一緒にどうですか?」

          「いいですね。
          頂きましょう」

          沖は
          「じゃ常温で3つ!」

          「へい!」

          すでにテーブルの串を入れる容器は串が一杯だ。
          親父さんの焼いた焼き鳥は材料もいいが腕もピカイチだ。

          親父さんは
          「うちの手羽先も美味しいよ」

          「じゃそれも3人前」

          親父さんは手慣れた手つきで手羽先を備長炭で焼きだした。
          「俺も一緒に酒飲ませてもらおうか」

          そう言うとコップを4つ用意した。

          原は
          「お客さんがいなくなるといつも一緒に飲むんですよ」

          4人で改めて乾杯した。

          親父さんは
          「酒を飲むといつも思い出すんだ。
          若かった頃、西沢や他の仲間達と日本酒を飲み交わした。
          みんな猛者だった。
          1対1じゃ絶対負けなかった!
          大空のさむらいだ。
          しかし・・・
          アメリカは物量に物を言わせて毎日200機以上の大編隊で定期便のように
          やってくる。
          我が方は数十機の零戦のみ。
          敵機を堕としても堕としてもやってくる。
          疲労困憊だ。
          喰うか喰われるか、一瞬のミスが命取り。
          ミスをしたら死しかない。
          やり直しはきかん。
          みんな大空に散った。
          みんないい奴ばかりだった」

          ラバウル航空隊

          ラバウル海軍航空隊写真。

          「お客さんは戦争の匂いがしないね〜」

          祐一と沖はどきっときた。
          なんて返事していいか・・・

          「まぁ〜答えなくてもいい」
          「この歌知っているかい?」

          親父さんは酒をグビッと飲んでから

          銀翼連ねて南の前線
          ゆるがぬ護りの海鷲たちが
          肉弾砕く敵の主力
          栄えある我らのラバウル航空隊

          海軍精神燃え立つ闘魂
          いざ見る南の太陽
          雲に波に敵を破り
          轟くその名はラバウル航空隊

          沈めた敵艦堕とした敵機も
          忘れて見つめる夜更けの星は
          われに語る戦友のみたま
          その名は高しラバウル航空隊

          ♪♪♪・・・・

          歌いながら親父さんの目は潤んでいた。

          沖は聞きながら
          「田中さん、これ軍歌?」

          二人は戦後生まれ。
          零戦は知っていたが歌は初めて聞く。

          原は
          「親父さんは酒を飲むとよく歌うんですよ」

          祐一は聞きながら
          生まれた年の日本は高度経済成長の時代。
          戦後日本は平和憲法を作り悲惨な戦争は2度としない。
          そう心に決め平和な日本を作り出した。
          だが2020年の時代は一触即発の危うさ。
          平和ボケした日本人が今頃になって慌てている。
          中国やロシア、近隣諸国が軍備を増大しているのに対し日本は防衛費削減ばかり。
          艦船・飛行機・隊員までもが不足している。
          今になって国会は
          「防衛費を上げるべきだ!」
          「今まで何をやっていたんだ」
          あげくの果てには徴兵制度まで真剣に議論している。
          政治家達は責任のなすり合いだ。
          船も飛行機もそう簡単に出来ない。
          ましてや隊員は集めてもすぐ戦力にならない。
          一人前になるには遠い年月が必要だ。
          父の圭一がよく言っていた言葉が身に染みた。
          「軍備のない国は攻められる」
          「人類の歴史は侵略の繰り返し」
          「歩のない将棋は負け将棋」
          2000年頃は防衛費拡大!なんて言ったら軍国主義者?なんて目で見られた。
          憲法改正なんて口にしたら平和憲法をなんと思っているのか!
          そんな感じだった。
          平和憲法は世界に誇るものだが祐一も1つ疑問に思っていた。
          「専守防衛」
          つまり敵が日本を攻めてくるまで何も手出し出来ない。
          喧嘩だったら相手の鉄拳を浴びるまで、じっとしていなければいけない。
          国民がいる日本が戦火になるまで、じっとしなくてはいけない。
          国会でも論議されてきたが、いつもうやむやに終わっていた。
          戦争になれば日本は最前線基地。
          アメリカがどこまで守ってくれるのか?

          親父さんは
          「下手な歌を聞かせちゃったね。
          どうだい、お客さんも一曲・・・」

          祐一と沖は慌てた。
          「いや・・・
          俺達音痴だから」

          2020年頃の歌を歌ったらそれこそ
          「こいつ何者?」
          と疑われる。

          祐一のコップはもう空になっていた。
          沖が
          「田中さん、もう一杯いく?」

          「あ〜、もらおうか」

          日本酒の底深い味と体がポカポカ心地いい。
          原のコップも空に近い。

          「親父さん、お代わり3つ!」

          「あいよ!」

          祐一は
          「原さん、明日本田の人達が来ますよね。
          現実の話、今の時代に俺達の車見せていいんだろうか?」

          「すでに約束してありますし今更見せられませんも出来ないですしね」

          祐一は本田宗一郎氏に会えるかも?というワクワク感はあるが歴史を変える?
          かもしれない恐怖感があった。
          本当に会っていいのだろうか。

          沖は
          「田中さん、そんなに心配しなくていいよ。
          明日に明日の風が吹くってね」

          楽天家の沖らしい。
          「それにあの雷親父に会えるかもしれないんだよ。
          俺、今夜眠れそうにないや。
          もし明日来てくれて俺達の車を見たらどんな顔するか・・・
          想像するだけでドキドキもんだよ」

          原も
          「私も田中さんの車を見たときは信じられない気持でした。
          エンジンから装備まで見たことない代物ばかり。
          署に隠してありますが署員みんな覗きに来てますよ。
          へぇ〜って顔で・・・」

          3人とも焼き鳥、酒でだいぶお腹が満足してきた。
          沖が
          「田中さん、俺お茶漬け喰いたいな〜」

          「沖は食欲旺盛だな」

          「酒を飲んだあとのお茶漬けも美味しいよ」

          「じゃもらおうか」

          「お茶漬け3人前」

          「あいよ!」

          祐一もすでに体はポカポカ、今夜はぐっすり眠れそうだ。
          原さんを見ると顔が真っ赤。
          たぶん同じような顔をしているのだろう。
          沖は?と見ると親父さんと雑談している。
          馬が合うようだ。
          酒を飲みながら意気投合している。
          この調子じゃ朝まで飲んでいそうだ。

          お茶漬けが出て来た。
          祐一はお腹一杯と思っていたのだが不思議と口に入る。
          美味い!
          あっという間に平らげてしまった。

          「あ〜、俺満足!」
          沖はお腹を叩いて満面笑みだった。

          「親父さん、美味しかった!
          また零戦の話聞かせてよ」

          「あ〜、いくらでも聞かせてやるよ」

          「原さん、明日早いからボチボチ・・・」

          「行きますか」

          「勘定は俺達が払いますから」

          「とんでもない。
          割り勘です」

          「少しですけど恩返しさせてください」

          「じゃお言葉に甘えて今夜は御馳走になります」

          「親父さん、ご馳走さん!
          お勘定」

          そう言い立ち上がると祐一の体はフラフラ・・・
          日本酒が美味しくつい調子に乗って飲んでしまったようだ。
          少し足に来ている。

          「田中さんは弱いな〜」

          沖は笑った。

          「へい、5500円になります」

          安い!

          これだけ飲み食いして3人で5500円。
          祐一はこの時代が気に入った。

          会計を済ませ出ようとしたら

          「お客さん、なんか不思議な感覚なんだが今の時代の人じゃないね。
          俺の勘は当たるんですよ。
          ラバウルで生きるか死ぬかの戦いをしてきたら神経が研ぎ澄まされてきてね。
          今日は答えなくていいよ。
          今度聞かせてくんな」

          祐一と沖は黙った。
          「・・・・・・」

          原が
          「また3人で来ますよ。
          美味しい焼き鳥頼みます」

          「あいよ!」

          3人は
          「ご馳走さまです」

          頭を下げ店を出た。

          「原さん、美味しい店案内してくれてありがとうございました」

          「こちらこそご馳走さまでした」

          祐一の足はふらついている。

          「あっ〜あっ〜、田中さん!
          アライメントが狂っている車だよ。
          見ちゃいられない」

          「俺は沖と違って省エネなんだ」

          3人は笑いながら帰路についた。

          祐一は
          「原さん、親父さんは俺達のこと見抜いてますね」

          「あの人は千里眼ですよ。
          嘘は言ってもすぐばれる。
          今日、一緒に酒を飲んだけど気にいらない客だと一言も口ききませんからね」

          「沖、お前相性良かったな。
          明日から零戦乗りか?」

          「勘弁してくださいよ。
          戦争には行きたくな〜い 笑」

          ふらつく足で原さんのアパートに着いた。

          原は
          「すぐ布団ひきますから。
          眠いでしょう」

          沖は
          「俺眠れるかな・・・
          遠足に行く気分ですよ」

          「沖さん、家にも日本酒あるから飲みますか?」

          「原さん、こいつを調子づかせないほうがいいですよ。
          燃費はアメ車並みですから 笑」

          「じゃ家でもう一杯飲んで寝るとしましょう」

          「やった〜!」

          沖はガッツポーズをした。

          「しょうもない奴だ」

          祐一は苦笑した。

          家に上がり
          「ふぅ〜、今日も1日が終わった」」

          祐一は充実感で一杯だった。
          不安だった倉庫作業員、そして菊池との出会い。
          そして焼き鳥屋の出来事。
          ごく普通の出来事なのだが人の縁というか運命の不思議さを感じた。
          本当だったら今頃まだ商社でパソコン相手に仕事をしているか会議に明け暮れる
          日々だ。
          菊池も親父さんも口は悪いが人情味溢れる人だ。
          腹黒いところなど微塵もない。
          2020年は人を蹴落としてでも、自分さえ良ければ・・・
          政治家・企業のトップまでもが金の亡者のようになっている。
          表面上は善人のように振る舞っているが、たぶん焼き鳥屋の千里眼のような親父
          さんが見たら一発で見抜くだろう。
          2020年こそ勇気のある正義感のある指導者が必要だ。
          今の政治家も果たしているのかどうか・・・?
          父、圭一の言葉を思い出した。
          「お前、政治家をやってみないか?」

          だけど今いる場所は昭和37年。
          無理な話だ。

          原さんが日本酒一升瓶を持ってきた。
          まだたっぷり入っている。
          沖が
          「わぁ〜、沢山飲めるぞ〜」

          歓喜の声をあげた。

          「原さん、沖に飲ませたらあっという間に空になります。
          一杯限定で・・・」

          「ちぇ・・・・
          田中さん、固いんだから」

          「沖さん、心いくまでどうぞ」

          「やっぱ原さんは話がわかる〜」

          祐一は
          「私は軽くていいです。」

          沖のペースで付き合っていたら明日は2日酔いになる。
          ザルのような沖とは付き合ってられない 笑

          原がコップに注いで再び
          「乾杯!」

          「つまみ、イカの燻製しかありませんが」

          「いえいえ、十分です」

          祐一は昼間の疲れと酒で目が重かった。

          「田中さん、沖さん、私は明日朝早く出かけますが署に10時までに来てください。
          メーカーの人も誰が来るかわかりませんが遅れないように」

          「もちろんです。
          メーカーの人を待たせたら申し訳ない。
          ましてや本田宗一郎氏が来て遅刻したら雷が落ちますよ」

          「沖、楽しみだな〜」

          「ほんと本田宗一郎といったら神様のような存在。
          悪ガキをそのまま大人にしたような人だもんね」

          祐一は目がショボショボしてきた。
          「田中さん、もうリタイヤですか?
          耐久性がないな〜」

          「馬鹿言え!
          沖が強すぎるんだ!」

          原は
          「私もまもなく寝ます。
          先に横になってください」

          「じゃお言葉に甘えて横になりながら会話します」

          祐一は隣にひいてある布団に横たわった。
          原さんと沖は酒を飲み交わしながら雑談している。
          本当に俺達いい人と出会ったものだ。
          どう恩返ししていいものか・・・

          二人の会話を聞きながら祐一は眠りの世界に入っていった。


          気がついたときは朝だった。
          すでに原さんは起きていて朝食の支度をしている。
          祐一はパッと飛び起き
          「おはようございます」

          「あっ、おはようございます。
          騒々しくてごめんなさい。
          まだ寝てていいですよ」

          隣を見ると腹を出した沖がここまで寝相が悪いかという格好でいびきを
          かいている。

          「ったく、こいつは・・・・」

          「すみません。
          いつの間にか寝てしまいましたが何時まで飲んでいたんですか」

          「2〜3杯飲んですぐ寝ました。
          沖さんも面白い方ですよね。
          2020年の話も沢山聞かせてくれて寝るのがもったいないくらいで」

          「沖のお守りをしてくれて相すみません」

          「おい!沖。
          いつまで寝ているんだ。
          起きろ〜!」

          「う〜ん・・・・」

          「相変わらずエンジン始動の悪い奴でして・・・」

          「まだ6時ですし大丈夫です。
          私は7時に出かけますがあとお願いします」

          「はい、ちゃんと戸締まりしてあとで伺います」

          沖が眠そうな目で起き出した。
          「ファ〜、田中さん、原さん、早いね〜」

          「お前が寝坊助なんだ」

          「寝る子はよく育つってね」

          「口の減らない奴だ 笑」

          朝食も出来上がったようだ。
          原は
          「大したものじゃなくすみません」

          あじの干物と海苔、納豆、ワカメの味噌汁だ。

          「とんでもない、御馳走です」

          3人は卓袱台を囲み
          「頂きます」

          祐一はワカメの味噌汁を口にし、
          昨夜飲んだ酒がす〜と抜けていくような気分だった。
          日本の味だ、日本の原点だ!

          2020年は味噌汁を口にしない若者が多い。
          大半は朝食抜きかインスタント関連の食べ物ばかり。
          良き日本の伝統が失われていく。

          「原さん、美味しかったです。
          ご馳走さま」

          「おそまつでした」

          沖は
          「俺、いつも朝食なんか食べなかったけど美味しいね。
          1日の活力源だ」

          「田中さん、沖さん、ゆっくりしていてください。
          私は出かける準備しますので」

          原は着替えて出かけて行った。
          まだ7時。
          時間はたっぷりある。

          「沖、ボケッとしていてもしょうがない。
          部屋の掃除と洗濯をしよう」

          「ガッテン!」

          洗濯機を見ると全自動ではない。
          この時代、全自動なんてない。
          脱水もハンドルを回して洗濯物を絞る感じだ。
          全自動ではない不便さを感じつつも今の日本人すべて機械任せ。
          頭まで退化するんじゃないか?という便利さ。
          昭和37年の今が普通なのかもしれない。

          スイッチを入れるとガタガタガタ・・・・
          音も騒々しい。
          振動も凄い。
          だけど祐一は大きな音を聞きながら、これ以上人間に何が必要?
          洗濯板と使い冷たい水でゴシゴシ洗うことを考えたら、この洗濯機だけでも
          十分ありがたい。

          沖は・・・と見ると
          ほうきで部屋を掃除している。

          日本の原風景のような感じだ。

          二人で雑巾がけ。
          洗濯物を脱水ハンドルで絞り秋晴れの気持いい空に干した。

          「今日はいい天気だな。
          早めに出かけよう」

          「本田の人より遅れたらまずいもんね。
          昭和の時代を見学しながら散歩だね」

          二人は昨日の汗まみれの一張羅を着て
          「う〜、臭い・・・」

          沖は嘆いた。

          「仕方ない。
          下着はあるが服だけはどうしようもない。
          そのうち稼いだら服を買おう」

          9時頃、戸締まりをして二人は出かけた。
          祐一はドキドキしていた。
          たぶん沖も同じだろう。
          晴れ渡る気持いい空の下、二人は外へ出た。
          昭和37年に来てから4日目。
          だいぶこの世界にも慣れてきた。
          走っているレトロな車も驚かなくなってきた。
          慣れとは恐ろしい。
          2020年にこんな車が走っていたら、凄っい!って感じだ。
          沖は手持ちのコンパクトカメラで街の風景や車を撮っていた。
          途中、駄菓子屋もあった。
          懐かしい〜
          祐一が生まれた頃も駄菓子屋なんて少なかった。
          覗いてみるとビー玉やメンコ、アメ玉、ラムネ・・・他、子供が喜びそうな
          品ばかり。
          2020年の子供にビー玉やメンコを見せても使い方などわからないだろう。
          奥にはお婆さんが座っていた。
          あのお婆さんが子供達に良い悪いの礼儀作法などを自然と教えてる。
          子供も素直に聞いている。
          これこそ人間社会だ。
          現実なのか空想なのかわからないゲームで物を破壊したり人を殺したり・・・
          成長時期の子供の脳を破壊してしまう。
          2020年こそ駄菓子屋復活だ。
          絶対必要だ!
          泥んこになって遊んでガキ大将の下で組織を学んで人の痛み・苦しみを
          分かち合って成長していく。
          日本は経済成長とともに大切な心を置き去りにしている。
          今こそ復活昭和30年代だ。

          考えていくうちに警察署に着いた。
          時間は・・・と見ると9時30分。
          まだ早いが相手を待たせるよりかはいい。

          「沖、早いけど入るか」

          二人は署に入った。

          「おはようございます」

          頭を下げ入ったら元気な声で

          「おはようございます」

          署員みんな祐一と沖をわかるみたいだ。

          「原巡査は今パトロールで出かけています。
          どうぞ2階で鈴木課長がいますから上がってください」

          「お邪魔します」

          2階に上がり部屋に入ると鈴木刑事課長がいた。

          「おぅ、いらっしゃい」

          「おはようございます。
          お世話になります」

          「どうですか。昭和の時代に慣れましたか?」

          「おかげさまで原さんのおかげで寝食きちんと取れ、気持ち良く接してくれ
          感謝!感謝!!、どう恩返ししてもしつくせません」

          「そりゃ良かった。
          原の狭いアパートじゃ窮屈かもしれんが我慢してください」

          「田中さん、沖さんの車も汚れないようボディカバーをしてます。
          外来の人も沢山来ますし、あまり目につくのもね」

          「車も保管ありがとうございます」

          「今日メーカーの人も来ますが昨日の連絡だと社長が興味津々でもしかすると
          本田社長が来るかもしれません」

          「おい、沖!
          本田社長だってよ!」

          「俺、心臓バクバクだよ〜」

          二人は緊張で体が硬くなった。

          「まぁ〜、まだ時間はある。
          お茶を飲んでゆっくりしてください。」

          話していくうち、制服姿の警察官が上がってきた。

          「田中さん、沖さん、早いですね〜」

          見ると原さんだ。

          「あ〜、原さん!」

          改めて制服姿の原さんを見るとキリリッとした姿で格好いい!
          なんだか近寄りがたい雰囲気だ。

          沖が
          「原さん、やっぱ格好いいな〜」

          「ありがとうございます。
          まだまだ新米同然です」

          内線電話が鳴った。
          鈴木課長が電話に出て
          「今、下に降ります」

          「田中さん、沖さん。本田の方が見えられましたよ」

          「はい・・・・」

          二人は緊張しまくりだ。
          鈴木課長、田中、沖、原巡査と一緒に1階へ降りた。
          祐一も沖も体が身震いしている。
          もし1階に本田宗一郎氏がいたら・・・

          ドキドキしながら下に降り応接間に入ると署長と二人の姿!

          続く

                             まさやん



          posted by: まさやん&花 | 小説 2020年 | 14:21 | comments(4) | trackbacks(0) | - |
          近未来小説 2020年(8)
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             「ただいま!」

            「あなた、おかえりなさい」
            「親父、ただいま!」

            「なんだ、大地帰ってきたか」

            「さっき帰ってきたところ」

            「あなた、大地の就職祝いで食事用意してますよ」

            「今夜は豪勢だな〜」
            「さぁ〜、食べるか!」


            ジリリリリ〜ン!
            ベルで目が覚めた。
            昼食を食べて寝てしまったようだ。

            菊池が
            「遅れるとどやされるぞ」

            「はい」

            「沖、急ごう」

            「田中さん、俺寝てしまいましたよ」

            「俺もだ」

            原さんがくれた手拭いと軍手を手に階段を下りた。
            降りる途中、夢を思い出し
            「今頃、俺が行方不明でアタフタしているんだろうな。
            しかしどうすることも出来ない。
            加奈、許せ!」

            作業場に到着。

            「班長、午後はどうすればいいですか」

            「まだ荷物がきてない。
            3人ともしばらく待機」

            「はい」

            菊池が
            「今日は午後は楽だな。
            お前ら、儲け物だ」

            「ところで田中とやら、俺と同い年のようだが戦争の時はどこにいた?」

            「えっ、戦争?」

            「何言ってんだ。
            太平洋戦争だよ。
            海軍か?陸軍か?」

            「いえ・・・私は」

            返答に困った。

            「まさかお前兵隊に行かなかったのか?
            非国民か」

            「・・・・・・」

            2020年から来たなんて言ったって到底信じてもらえない。
            適当に答えてもボロが出るだけだ。

            沖は助太刀してきた。
            「田中さんは研究分野にいたから兵隊は免れたんだよね」

            「研究か。
            楽な身分だな」
            「みんなが必死になって戦っていたのによ」

            「俺は本土決戦の陸軍兵として日夜厳しい訓練をしていたよ。
            戦車兵としてな。
            みんな上官は鬼のようだった。
            毎日ピンタの嵐だった。
            お前ら、体は五体満足のようだが俺はな・・・。」

            菊池はズボンのすそを上げると片足が義足だった。
            道理で歩き方がぎこちないと思った。

            「俺はこんな体でここで仕事をやっているがお前ら五体満足でヒィ〜ヒィ〜
            言ってるんじゃねぇぞ」

            田中と沖は菊池の戦後の壮絶な人生を歩んできたのを想像したら声も
            出なかった。
            二人とももちろん戦後生まれ。
            菊池のように体を張って日本を守り戦後の復興で日本は立ち直り一時は
            経済大国と言われるようにまでなった。
            改めて感謝しなくてはいけない。

            班長が
            「おい、そこの3人!」

            手招きをして呼んでいる。

            「はい」

            「午後は3人ともベルトコンベアの仕事だ。
            菊池、新人に教えてやってくれ」

            「了解!」

            「これからベルトコンベアに大量の荷物が流れてくる。
            それを主分けする仕事だ。
            行き先別に台車に積み込む仕事だ。
            のんびりしていたら荷物だらけになってベルトコンベアが止まるからな。
            息つく暇もないぞ」

            「はい」

            田中と沖は台車を組み立てる時間がもったいないから今のうちにと、いくつか
            セットした。

            菊池が
            「ほぉ〜、手際がいいじゃねぇか。
            たまには使えるところもあるんだな」

            ベルトコンベアが動き出した。

            「夕方までフル回転だからな!。
            覚悟しろよ」

            田中と沖は配置につき、身構えた。

            荷物が流れてきた。
            大小様々。
            ステッカーを見て行き先別に分ける。
            重さも様々だ。
            軽いのもあれば重いのもある。
            3人は無言で荷物を処理していった。
            祐一は無心の状態で体を動かした。
            さっきの夢の出来事なんか考える暇もなかった。
            沖は・・・と見ると機敏に動いている。
            菊池も片足が義足とは思えない動きだ。
            祐一は
            「これで俺がヒィ〜ヒィ〜言っていたら笑われる」

            そう思って必死に動いた。
            無心でやっていたから、あっという間に時間が過ぎた。

            ジリリリり〜ン!

            菊池が
            「3時に小休止だ。
            一服しようぜ」

            「はい」

            二人とも汗びっしょり。
            今度は手拭いがあるから汗は拭きながら仕事をしたが滝のような汗だ。

            「沖、こりゃ今日だけで体重2〜3キロ落ちるかもな」

            「ダイエットにはもってこいですね」

            たばこ盆のところに行き一服し一息いれる。

            「二人ともさっきよりは動きがいいじゃねえか」

            「おかげさまで体が少し慣れました」

            「午前中はどうなることやら・・・と思ったけどな。
            ワハハ・・・」

            10分の休憩が終わり
            「沖、あと2時間だ。
            頑張ろう!」

            「うっ〜す!」

            配置につき汗もひいてない体をまたフル回転した。
            祐一は動きながら思った。
            「俺は商社で大量の荷物を発注。
            それで俺の仕事は終わりだがこういう縁の下の力持ちのおかげで仕事は
            成り立ってんだ。
            今まで倉庫作業員なんて・・・と思っていたが立派な職業だ」

            あっという間に2時間が経過。
            ベルが鳴った。
            外はと見るともう薄暗い。

            「フゥ〜}
            祐一はベルトコンベアに手をかけ座り込んだ。

            「田中さん、大丈夫?」

            「あ〜、終わってホッとして力が抜けただけだよ」

            班長が近寄ってきて
            「ご苦労さん。
            どうする、夜勤もやるか?」

            田中と沖は手をふり
            「今日は日勤だけにします」

            これで夜勤などやったら、まじに死ぬ 笑

            「じゃ着替えて事務所で給料を受け取ってください。
            バスは6時の1本だけ。
            乗り遅れないように」

            「はい、ありがとうございました。
            お先失礼します」

            菊池が
            「じゃ帰るか!」

            3人はロッカールームへ行った。
            「菊池さん、今日はお世話になりました」

            「どうだ、帰り一杯やっていくか」

            「今日、用事があるので・・・。
            また今度」

            「ちぇ、付き合いの悪い奴らだ!」

            汗を拭き顔を洗い着替え事務所へ行き初給料をもらった。
            二人は茶封筒をもらった。
            中を見ると100円札が6枚、600円だ。
            とても嬉しかった。
            2020年じゃタバコも買えないお金だが、とても重みのある金だった。

            「田中さん、なんだか封筒が重く感じますよ」

            「本当だ、お金を稼ぐのがどんなに大変か今日1日いい勉強になった。
            沖、今日の給料は原さんに手渡しだ」

            「もちろん!」

            二人は菊池に
            「また来ます。
            宜しくお願いします」

            「おぅ、また来いよ!」

            3人はバスに乗り込み御殿場駅へ向かった。
            行きは不安で緊張したが帰りは達成感で心は高揚していた。
            駅に到着。

            「お疲れ様でした」

            菊池は手を振り赤提灯のところへと向かっていった。
            祐一は
            「菊池さんも口は悪いがいい人だ。
            1度一緒に飲んでみたいものだ」

            祐一と沖は暗くなった夜道をテクテク歩きながら
            「田中さん、俺達このまま、この時代に居座るのかな?」

            「実は昼休みの時、夢を見たんだ。
            我が家へただいま・・・の夢を。
            今頃、捜索願いも出されて大変な騒ぎだろう。
            だけどどうすることも出来ない」

            沖は
            「また霧が出て現場へ車で行ったら元に戻れないかな?」

            「さぁ〜、どんなもんだろう」

            二人は考えても解決策を見いだせないまま原さんのアパートに着いた。
            まだ原さんは帰宅前。
            お言葉に甘え、朝預かった鍵で家のなかに入った。
            灯りを点け
            沖が
            「あ〜、田中さんお腹ペコペコだ!」

            「何かある材料で作ってもいいのだが原さんが帰るまで待とう」

            時間は7時。
            まもなく帰ってくるだろう。
            二人はごろ寝でボケッとしていた。

            しばらくすると軽快なエンジン音が・・・
            S500だ。
            沖は起き上がり
            「原さんだ!」

            二人は外へ出て手を振った。
            「原さん。お帰りなさい!」

            「ただいま。
            お疲れ様です」

            そう言い3人で家の中に入り原は二人の顔を見るなり
            「痩せましたね〜。
            相当きつかったんじゃないですか」

            「午後にはだいぶ慣れました。
            それより弁当、本当に美味しかったです。
            ありがとうございます。
            そして原さんの心遣い、涙が出ました」

            「そんな大したことしてないですよ」

            二人は原さんから預かった100円札が入った茶封筒をお返しし、
            給料袋も
            「原さん、少ないけど世話になったお返しです」

            「とんでもない!
            受け取れません!!」

            「駄目です。
            私達の気持ちが・・・」

            「これから二人生活するためにお金が必要です。
            そのためにとっといてください」

            「少しだけでも・・・」

            「お二人の気持ちだけで十分です。
            二人とも汗びっしょりだし、すぐ銭湯へ行って今夜は行きつけの焼き鳥屋で
            一杯やりましょう」

            沖は
            「ありがてぇ〜!
            腹ペコペコなんですよ〜」

            3人は準備して銭湯へ行き原もお腹が空いてたのか?カラスの行水のように
            銭湯を出た。

            銭湯の近くに小さな焼き鳥屋があった。
            祐一にとってほんの数日前、父の田中圭一と行ったばかりだった。
            昭和30年代の焼き鳥屋も風情があっていい。

            「早速入りましょう!」

            原がガラス戸を開けると
            「へぃ、らっしゃい!」

            威勢のいい声だ。

            「おや、原さん。
            らっしゃい!
            今夜はお友達と一緒かい。
            カウンターへどうぞ」」

            3人はカウンターへ座り
            「田中さん、沖さん沢山食べてください。
            いくらでも入るでしょう」

            「原さん、沖のお腹は食い物だけでなく酒も凄いですよ」

            「先日の飲みっぷりでわかってます 笑」

            沖は
            「今夜は食い物重視です!」

            3人は笑った。

            「ここのモツの煮込みは絶品なんですよ。
            ねぇ、親父さん!」

            「うちの煮込みは世界一ですよ」

            「まずはビール3本!
            あと焼き鳥一通り焼いて。
            二人が腹ぺこだからいくらでも入りますよ」

            「了解!」

            3人はビールで乾杯した。
            祐一はこんなに美味しいビールは初めての経験だった。
            乾いた砂漠に染みこむかのよう。
            沖も目を細め、この世の極楽!という顔だ。

            「原さん、田中さん。
            俺もう死んでもいい 笑
            こんな美味いビール。
            最高!!!
            こんな美味いビールが飲めるなら毎日倉庫作業員やってもいいや」

            「沖、調子にのって飲み過ぎるなよ」

            「はい、お待ちどうさん」

            モツの煮込みが出てきた。
            味が底知れず深く染みこんでいる。
            3人は一斉に
            「美味い!」

            親父さんは
            「その言葉嬉しいね。
            もう金はいらないよって言いたいよ」

            次々備長炭で焼き鳥が焼かれていく。
            「田中さん、沖さん、どんどん食べてください」

            「はい、頂きます!」

            祐一は店の壁に写真の額が飾ってあるのに気がついた。
            1つは旧日本海軍の戦闘機零戦だ

            零戦

            祐一は商社勤務。
            祐一の会社は太平洋戦争時、零戦のメーカーでもあった。
            当時、世界一の性能を誇り太平洋ところ狭しとばかりに大活躍!
            太平洋戦争初期、アメリカは零戦と一騎打ちするなという命令が出たほど。
            今見ても惚れ惚れするスタイルだ。

            もう1枚の写真は人物が2人写っている。
            どうやら片方は親父さんの若い頃?
            海軍パイロットだったようだ。

            祐一はしばらく写真を眺めていた。

            親父さんが気がつき
            「あ〜、この写真かい」
            「これは俺の青春そのものだ!
            隣に写っている彼は俺と同じ零戦パイロットの西沢だ」

            「西沢?」

            祐一は思い出した。
            写真を見た時、何かの本で見たような・・・

            「あの有名な西沢広義さんですか?」

            「ほぉ〜。
            お客さん、西沢のことご存知ですか。
            さぞや天国で喜んでいるだろうに。
            俺と西沢は昭和18年ラバウルで253航空隊というところにいたんです。
            俺は新米パイロットだったが西沢飛曹長の列機でしてね。
            あの人の腕は凄かった!
            アメリカのグラマンが束にかかっても負けはしなかった。
            神業でしたよ」

            「西沢広義さんは昭和20年に台湾上空で輸送機に乗って移動中、アメリカ
            戦闘機に撃墜戦死されたんですよね」

            「そうなんだ。
            口癖のように俺は戦闘機では絶対死なん!と言っていた。
            あの人の腕なら絶対負けはしない。
            本当に残念だ!」

            「ラバウルの魔王・・・というニックネームで有名ですよ」

            「ラバウルの魔王??」

            親父さんの顔色が変わった。

            「お客さん、やけに詳しいが見たところ俺とあまり変わらない年代。
            戦争中は何やっていたんだい?」

            祐一は、はっとした。
            西沢がラバウルの魔王というニックネームがついたのは戦後、昭和50年以降だ。
            昭和37年の時代、西沢のことを知っている国民は少ない。

            「いえ・・・・汗」

            親父さんは

            「お客さんは戦争の臭いがしないね〜
            なんだか不思議な感じだ」

            原は
            「まぁ〜まぁ〜、親父さん。
            話に夢中になると焼き鳥が焦げるよ 笑」

            「あ〜、大丈夫!
            俺はそんなへましないよ」

            原が助太刀してくれて助かった。
            突っ込まれて質問されたらどうしよう・・・と思った。
            本当は親父さんに飾ってある零戦のパイロットの写真は西沢飛曹長だ!と
            教えてあげたいくらい。
            戦後歴史研究家が調べ、平成の時代にパイロットが西沢と判明したからだ。
            親父さんが列機ということは背後の零戦は親父さん。

            「俺も西沢飛曹長に可愛がられ一人前になった頃敵弾を受け負傷。
            内地へ帰され、あとは終戦まで教官やテストパイロットで終わった。
            悔いが残って仕方ない!」
            「今の日本、西沢はじめ沢山の若者の犠牲があってこそ繁栄があるんだ。
            敵国アメリカとも同盟を組んで複雑な心境だ。
            昨日の敵は今日の友・・・」

            本当は教えてあげたかった。
            日米同盟は正解でしたよ・・・と。

            沖は話題を変えようと
            「原さん、明日はどうなりますか?」

            「明日、10時に署にメーカーの人が来ます。
            田中さん、沖さん、10時までに来てください」

            沖が
            「やった〜!
            本田宗一郎と会えるかも」

            「沖、社長ともなると多忙。
            明日はどうかな」
            「だけどメーカーの人が見たらびっくりするだろうな」

            沖は
            「今夜眠れそうにないや 笑」

                                  まさやん
            posted by: まさやん&花 | 小説 2020年 | 17:57 | comments(7) | trackbacks(0) | - |
            近未来小説2020年(7)
            0
               ガタゴト・・・
              田中と沖、そして作業員を乗せたボンネットバスは大きなエンジン音を
              響かせて走っていた。
              街中を外れどうやら裾野方向に向かっているようだ。
              どこまで行くんだろうか。
              田中と沖は不安と緊張で黙り込んでいた。
              車内はタバコの煙でモクモク。
              二人ともタバコは吸うがすでにタバコは切れ吸いたくでも吸えない。

              「そこの二人、初めてかい?」
              隣にいた田中と同年代か、声をかけてきた。

              「はい、初めてです。
              田中と沖です。
              宜しくお願いします」
              ペコリと頭を下げた。

              「俺は菊池。
              わかんないことがあったら何でも聞きな」

              「ありがとうございます」

              「しかしお前ら、派手というか奇抜な格好しているな。
              その格好、服は外国物か?」

              「いえ、たまたま東京で買ったもので・・・」

              2020年のことを話しても到底信じてもらえないし変人に思われる。

              「その格好じゃ作業したら汚れるぞ」

              「次回から汚れてもいい格好で来ます。
              ありがとう」

              祐一は
              「この仕事は何時までやるんですか?」

              「8時から5時までだ」
              「しかし銭がほしい奴はそのまま夜勤もやるけどな」
              「だけど初日の人間は疲れ切ってそんな体力ないだろう」

              祐一と沖はぞっとした。
              祐一は商社勤務の仕事は力仕事なんて無縁。
              沖はメカニックだから力仕事は慣れている。
              沖は緊張して黙ったままだった。

              菊池は
              「ここの連中、喧嘩ッ早くて口も悪いけど根はいい奴ばかりだ。
              俺くらいのもんか、紳士みたいな奴は」

              お世辞にも紳士風には見えない。
              髪はボサボサ、手は長年の労働者風のごつい手。
              声も酒で焼けたのか?しゃがれている。
              しかし、そのユーモアさに沖は緊張がほぐれた。

              話していくうち、現場に着いたようだ。
              見ると木造の大きな倉庫。
              大型トラックも数台止まっている。
              菊池は
              「帰りのバスは夕方6時。
              それに乗り遅れると帰るバスないからな」

              「ありがとう」

              祐一と沖は原さんが今朝手渡してくれた紙袋を持って降りた。
              現場の班長?責任者?らしい男が一人一人に名前を聞いていた。
              順番に並び菊池の後ろに並んだ。
              「お前は1号棟、次名前は?」

              「菊池」

              「お前は2号棟」

              「田中祐一です。
              初めてです」

              ジロッとにらまれ、
              「2号棟」

              「沖龍也です。
              俺も初めてです」

              「お前も2号棟」

              祐一は
              「良かったな〜
              現場が一緒だ」

              「ほんとですよ。
              訳もわからないところで一人じゃ心細くで・・・」

              菊池は
              「2号棟でよかったな。
              1号棟は重量物ばかりでかなりきつい。
              しょっちゅう作業員が手や足をつぶすからな」

              祐一と沖はぞっとした。
              沖は
              「田中さん、俺の格好たしかに派手だよね。
              浮いてるもんね」

              「沖の格好、夕方には地味な色になっているんじゃないか」

              「どうしよう・・・
              一張羅なのに」

              「俺も同じだ。
              稼いで服も買わないと」

              二人はどこへ行っていいかわからず菊池のあとを金魚のふんの
              ように付いていった。

              「菊池さん、わからないことだらけなのでまた教えてください」

              「これから着替えて7時までに作業場に集合だ」

              「着替え?」

              「事務所に作業用の上着がある。
              それを着て、あと軍手は必需品だ。
              もちろん持ってきているよな」

              二人は顔を見合わせた。
              そうか、軍手か。

              「持って来るの忘れました」

              「お前ら、怪我しても知らねぇぞ」

              菊池はそう言いながら事務所へ入っていく。
              「うっす!」

              菊池は常連のようだ。
              事務所には岩石のような顔をした怖そうな管理職風の男性が一人。

              「おぅ、菊池。
              しっかりやれよ。」
              「なんだ、後ろの二人は新入りか?」

              「田中祐一と沖龍也です。
              宜しくお願いします」

              「力仕事は経験あるのか?」

              沖は
              「力仕事は任せてください」

              「そうか、今日はタイルが大量に入ってくる。
              じゃ新入り2人は午前中タイル1000枚やってもらおうか」

              「タイル?・・」

              祐一と沖はよくわからず、
              「はい」

              「着替えて7時になったら作業場に集合。
              遅れるなよ」
              「作業服はロッカールームにある」

              菊池と一緒にロッカールームに入る。
              ロッカールームといってもロッカーはすべて使用されている。
              仕方なく手提げ袋は端に置き段ボール箱に無造作に置かれている
              作業服を手しした。
              どれもしわくちゃだらけ。
              汗が染みこんでいる。

              沖は
              「わぁ〜 臭っ〜〜!」
              「クリーニングしたやつないの」

              菊池は
              「初日は仕方ない。
              お前らに合う作業着を持って帰って洗濯するんだな」

              祐一は
              「沖、今日は我慢するしかない」

              2人はなんとか合う作業着を見つけ鼻をつまんで袖を通した。
              「田中さん、体が痒くなりそう」
              「ダニがいるんじゃないの」

              「ほんとだ。
              ダニ連中にとっては、活きのいい奴が来たって喜んでいるかもな」

              菊池は奥のテーブルでお茶を飲んでいた。
              「おい、時間になるまでのんびりしていろよ」

              「はい」

              席に腰掛け沖はお茶を入れ
              「はい田中さん」

              「サンキュー」

              2人はお茶を飲み、フゥ〜
              ひとときの休息だ。

              「お前ら、タバコは吸わないのか?」
              菊池はタバコを吸いながら尋ねた。

              「いえ、吸います」

              「まさかタバコも買う銭がない?ってわけじゃねぇよな」

              「いや・・・
              今日持ってくるの忘れたんです」

              ハイライトをテーブルに投げ出し
              「いいから吸いな」

              「すみません。
              1本だけ頂きます」

              2人ともタバコはすでに切れ買うにもお金がない。
              ライターも借りタバコに火をつけた。
              体がニコチンを求めていたから少し強めのハイライトが体に染みわたる。

              「お前ら、服装もそうだし時計もそうだ。
              なんか不思議な奴だな。
              格好だけは金持ち風でだけどタバコを買う銭もない。」

              沖がしている時計はGショックの高級タイプだ。
              祐一もセイコーの時計をしている。
              不思議がられても仕方ない。

              「家はどこなんだい?」

              「東京と神奈川です」

              「いいところに住んでいるな。
              またなんでこんなところに、それも日雇いで?」
              「いや・・・
              そんなこと聞いちゃいけないな」
              「ここはみんな訳ありだよ。
              前科者もいればやくざもいる。
              俺みたいに主にならないほうがいいぜ」

              ジリリリり〜ン
              ベルが鳴った。
              菊池が
              「集合の合図だ。
              行くか」

              3人は作業場に急いだ。
              階段を下り作業場へ。
              菊池は
              「班長さん、新入り2人いるぞ」
              班長に手を振っていた。
              若い班長だ。
              沖より若い?
              「菊池さん、あんたはいつもの場所」
              「新入り?、今日はちときついぞ」

              「宜しくお願いします」

              「そこのヤードにまもなくトラックが3台だてつづけに来る。
              タイルを折りたたみ台車に積み込む仕事だ」
              「のんびりやっていたら運転手に怒鳴られるからな」

              「はい」

              菊池は
              「おい、腰を痛めるなよ」
              ニヤニヤしながら所定の場所に行ってしまった。

              「沖、タイルってなんだ?」

              「タイル?・・・
              内装に使うもの?」

              2人は訳わからずトラックが到着するのを待った。
              祐一は
              「こういう仕事もいい人生経験だな。
              商社に勤めていると現場の苦労がわからん。
              たまには汗を流さないと」

              「田中さん、ペンより重いの持ったことないから心配だな」

              「俺を虚弱体質のように言うな」

              大型トラックが1台入ってきた。
              どうやら2人のいる場所にバックで入るみたいだ。
              沖はすかさず誘導。
              「オーライ!オーライ!」

              丸太ン棒のような腕をした運転手が降りてきて
              「荷を降ろしてくんな」

              「はい」

              荷物を見ると厚さ10センチくらい、30センチくらい正三角形の段ボールだ。
              「沖、どうする?」

              「じゃ俺が荷台に乗って降ろすから田中さん台車に積んでよ」

              「了解!」

              沖はヒョイと荷台に乗り
              「きついなんて言ってたけど楽勝!楽勝!」
              鼻笛をふいていた。

              荷を持ち上げようとしたらズシリ!
              「なんだ、これ?」

              1度に5つ持とうとしたら沖でも腰がグキッとなりそうだった。
              「田中さん。まじっ重いよ。
              腰痛めないでね」

              沖は小さい段ボール箱3つ持って荷台後部に運んだ。
              置いた途端、ズン!
              祐一はゾッとした。
              3つ持とうとしたら腰が悲鳴をあげた。
              ウッ〜

              「田中さん、無理は禁物。
              1つ軽く10キロはあるよ」

              祐一は2つずつ台車に積み込んだ。
              積むたんびにズシン!
              なんだ、この重さは?
              沖は持ち前の力で3つずつ運んできた。
              祐一は2つ持ってそばの台車へ。
              10回もやっていくとだんだん腕が痺れていく。
              息もハァ〜ハァ〜いってきた。
              まだ20箱だ。
              荷台にはまだ沢山積んである。
              そういえば午前中に1000箱?
              体が持つか心配だった。
              40箱目、祐一は腰をふらつきながらも台車に積み込んだ。
              運転手が戻ってきて見るなり一喝!
              「お前ら、日が暮れちまうぞ!!」

              「はい・・・」

              60箱目、息が荒くなってきた。
              腕もパンパンだ。
              荷台後部には沖が積み上げた荷でたまってきた。

              「田中さん、少し休んで。
              俺、手伝うから」

              「いや大丈夫」

              それでも100箱までなんとか頑張った。
              班長がそれを見て再び一喝!
              「てめぇら!そんな腰使いで積み上げて台車を運べるのか!!」

              祐一はふと気がつき、台車を動かそうとしたらピクリともしない。
              一箱10キロとしてもすでに1000キロ、1トンだ。

              「頭が悪い奴らだ。
              使い物になりゃしない!」

              言い方が非常に乱暴だ。
              祐一は正直カチンときた。
              班長はまだ20才そこそこの感じ。
              「こなくそ〜!」と思ったが生活のため。

              「すみません」

              沖は
              「田中さん、一緒に運びましょう」

              2人で台車を押し所定の場所に移動した。
              班長は
              「あと200あるんだぞ。
              午前中で1000.明日になっても終わらないぞ!」
              「トラック1台、1時間でやれ!」

              時計を見るとすでに30分近くかかっている。
              この調子でいったら1時間30分もかかる。
              祐一はゼェ〜ゼェ〜言っていたが来た以上こなさなければ
              いけない。

              「田中さん、少し小休止しよう」

              沖を見るとまだ余裕の顔。
              祐一は情けない思いがした。

              「いや時間がない。
              頑張ろう」

              気合いを入れ直し再び折りたたみ台車を組み立て積む。
              置くたんびにズシン。
              もう腕は感覚がなかった。
              腰もふらふら状態。
              沖の助けもありかろうじて200箱目。
              休む暇もなく台車を組み立てズシン。
              10月だというのに汗が滝のように流れ目に汗が入り汚れた手で目を
              こするから痛い。
              運転手が戻ってきて
              「まだ終わらないのか〜
              300程度でヒィ〜ヒィ〜言いやがって!
              俺は一人で積んできたんだぞ」

              「すみません、もうすぐ終わります」

              沖の助けもあり300終了。
              さすがの沖も息が少し上がっていた。

              「田中さん、大丈夫?
              腰を痛めたら元も子もなくなるから配置替えてもらおうか」

              祐一はペタンと座り込んでいた。
              「いや、金稼ぐというのは大変というのが改めて教わったよ。
              少し休めば大丈夫!」

              沖は
              「喉が渇いたな〜
              ジュースを飲みたいけど水道しかないね」

              「あ〜、水を飲みに行くか」

              近くにあった流しに行き、がぶ飲みに飲んだ。
              美味い!
              こんなに水が美味しいとは。
              二人とも2020年じゃ当たり前のように清涼飲料水を飲んでいたが
              水の美味しさを再認識した。

              息もようやく整い
              ピィ〜ピィ〜・・・
              トラックのバックの音が聞こえてきた。
              「田中さん、あと2台で終わりだ。
              頑張ろう」

              「おぅ!」

              二人は息も絶え絶えにズシン・ズシンと積んでいた。
              さっきよりかは力の配分方法もわかり、きついけど1台目より楽だ。
              300を終了。
              残り350だ。
              祐一にとって1年分の汗をかいた気分だ。
              作業服まで汗びっしょり。
              今朝、着た時の他人の汗の臭いなど気にならなくなった。

              3台目到着。
              今度は時間が間があったのでだいぶ休息できた。
              「沖、これが終われば飯だ。」

              「田中さん、腹と背中がくっくきそうですよ。笑」

              なんとか3台目も終了。
              祐一は我ながらよく1000セットやったもんだと自分で自分を誉めた。
              腕は筋肉が膨張し我ながら太い腕に。

              「沖、俺もこの仕事をやっていけばヘラクレスのような体になるかな」

              「パンパンですね〜
              あとで筋肉痛が怖いですよ」
              「俺は明日、筋肉痛が起きるけど田中さんは・・・」

              「この野郎 笑」

              二人は班長に終了報告。
              「終わりました。
              休憩してもいいですか」

              汗びっしょりの二人を見て
              「途中で投げ出す奴も多いなか、3台終わらせましたか。
              ご苦労さん。
              1時まで休んでください」

              二人のど根性を見たのかさっきの口調と違っていた。

              二人はロッカールームへ戻り部屋を開けたら菊池はすでに休んでいた。
              「おいおい、なんだ、その顔は」
              「二人ともクタクタじゃねぇか」

              祐一は
              「死ぬかと思いました。」

              「タバコ吸うか?」

              「いや、今朝頂きましたし十分です。
              ありがとうございます」

              「沖、腹が減っては戦はできん。
              飯にしよう」

              今朝、原さんが用意してくれた紙袋を手にした。
              祐一は手渡された時、おにぎりが入っている割にはずいぶん大きな袋?と
              思った。
              開けてみると中には弁当の他、手拭い、軍手、水筒、タバコ、ライターが
              入っていた。

              「原さん・・・・」
              祐一はジ〜ンときた。
              弁当だけでもありがたいのに、こんなに沢山。

              「沖、見ろよ。
              原さんのこの気持を」

              「もう涙が出ちゃいますね。
              俺、一生恩返ししてもしきれないような」

              「泣き言なんか言ってられないな。
              午後も頑張ろう!」

              「ウッ〜ス!」

              祐一もお腹が空いていた。
              弁当を取り出し開けると大きなおにぎりが2つずつ、沢庵とゆで卵もある。
              二人は
              「頂きます」と感謝しつつパクリ。
              沖は
              「うめぇ〜、最高のおにぎりだ!」

              「本当だよな、塩味がうまい具合にピリリときいていて女房のおにぎりより美味い」

              「あっ、そうだ。水筒があるんだ」
              そう言い水筒を取り出すと、その下の茶封筒があった。

              祐一は


              手に取り中を開けると100円札が1枚。
              「えっ?」

              手紙も入っていた。
              『田中様、沖様、仕事お疲れ様です。
              慣れない土地で初仕事大変だと思います。
              男の不細工なおにぎり口に合わないかもしれません。
              こんな弁当しか出来ずも申し訳なく思います。
              お二人、事情があってこの時代へ。
              今日、夕方収入があるとはいえ、まだ手持ち金0。
              収入がある前に不急の出費があるかもしれません。
              その際は同封のお金を使ってください。

              私は夜8時には帰宅する予定です。
              田中さん、沖さんのほうが帰宅早いでしょうから部屋の鍵も
              同封します。
              先に我が家でくつろいでいてください。

              今夜はまた美味しいもの、沢山食べましょう。』

                       原一郎


              祐一は手紙を読んで男泣きに泣いた。
              「原さん・・・」

              「田中さん、どうしたの?」

              祐一は手紙を持った手が震えてた。
              手紙を沖に渡し
              『俺と沖はどういう因果でこの時代に来たのかわからないが時代の漂流者。
              本来なら宛てもなく彷徨うはずなのに246で原巡査の乗るパトカーと出会い、
              署に連行。
              だけど原さんのご厚意で家に泊めてもらい食事まで御馳走になっている。
              どこの馬の骨ともわからん俺達を長年の友人のように接してくれている。
              しかも今日、弁当まで作ってくれ小遣いまで・・・』

              祐一は涙が止まらなかった。
              沖もいろんな備品と手紙・100円札を見て、おいおい泣いていた。

              「沖、俺達この100円は1円たりとも使わないぞ。
              そして今日の稼ぎももちろん原さんに手渡しだ。
              一生恩返ししてもしつくせない。」

              涙声で訴えた。

              「ちきしょう、汗が目に入って涙が止まらない」
              「田中さん、俺この時代にずっといてもいいや。
              原さんに一生恩返ししたい!」

              「沖、これで100人力だ!
              午後もどんな荷物でもやってやろうじゃないか」

              「もちろん!!」

                       続く






              posted by: まさやん&花 | 小説 2020年 | 07:07 | comments(2) | trackbacks(0) | - |
              近未来小説 2020年(6)
              0
                 シャカシャカシャカ・・・

                「う〜ん、何だ、加奈は。
                寝室で米をとぐなよ〜」

                祐一は寝返りをすると大きな背中にぶつかった。
                沖の背中だった。
                「そうか、俺と沖は原さんのアパートで寝ているんだ」
                慌てて飛び起き、見るとジャージ姿の原さんが台所にいた。

                「おはようございます」

                「おはようございます。
                すみません、起こしてしまって」
                「今、朝食の支度してます」

                「原さん、申し訳ない。
                何か手伝いますよ」

                「いや、朝食といってもご飯に味噌汁・目玉焼き・納豆くらいです」
                「まだ寝てていいですよ」

                時計を見たら朝6時30分。
                昨夜早めに寝て朝までぐっすり寝てしまったようだ。
                沖は?と見るとお腹を出した状態で高いびきをかいている。

                「沖!朝だぞ。
                いつまで寝ているんだ」

                「う〜〜〜ん」

                「エンジンのかかりの悪い奴だ」

                原は笑いながら
                「疲れているんだから、まだ寝てていいですよ」

                「すみません。今日こいつのバッテリー替えるか(笑)
                エンジン始動が悪いようだ」

                「田中さん、テレビでも見ますか?」
                そう言いスイッチを入れた。
                ニュースで日本は
                「年10%以上の高度成長・3種の神器パワー」
                が流れていた。

                祐一は
                「3種の神器パワー?」
                「原さん、3種の神器パワーって何ですか?」

                「洗濯機・テレビ・冷蔵庫なんです。
                庶民にとって高値の花でしたから」
                「つい前まで洗濯は洗濯板でしたから」
                「洗濯機を買えてから冬は楽になりましたよ」
                「まだ洗濯機ない家庭も多いですけど」

                祐一の時代では洗濯機なんて空気のようなもの。
                当たり前の中の当たり前。
                だけど僅か数十年前の時代は洗濯機1つ高価な時代。
                改めて2020年がどんなに贅沢な暮らしをしたかつくづく感じた。

                傍で沖が
                「う〜ん・・・・・」
                ようやく起き出してきた。
                まだ目は半開き。
                頭はボサボサ状態。

                「あれ、原さん、田中さん、早起きですね」

                「何言ってんだ。
                もう朝だぞ!
                メカニックのくせにエンジン始動の悪い奴だ(笑)」

                「俺、低血圧で寝起きが悪いんですよ。
                ファ〜・・・」
                大きな欠伸をした。

                「さぁ〜、さぁ〜、布団をたたんで原さんのお手伝いだ」
                原さん、洗濯とかやりますよ。
                何でも言ってください」

                「私がやります。
                洗濯物出してくださいね。
                のんびりしていいですよ」
                「どうぞ、流し台で顔洗ってください」

                「ありがとうございます」

                田中と沖は顔を洗っている間に原は洗濯機のスイッチを入れた。
                しばらくすると
                「ガタガタガタ・・・」
                凄い騒音だ。
                2020年の時代だったら間違いなく騒音でクレーム間違いなしだ。

                原は
                「2020年って洗濯機どんな姿なんですか?」

                「すべて全自動です。
                洗いから脱水・乾燥まで洗濯機任せ。
                洗濯物を放り込めば、すべてやってくれる」

                「へぇ〜、いい時代だ!」

                「だけどここまで便利だと人間退化しますよ」
                「今日は2020年の話いろいろとお話ししますよ」

                「楽しみです。
                車の話とか聞きたいですね」

                テレビの天気予報で
                「今日の御殿場地方は曇りのち雨でしょう」

                祐一は
                「あれ!、雨?」
                「S500のワックスかけが出来ない」

                原は
                「いつでもいいです。
                日頃、ワックスかけなんかしないし、Sにワックスかけたらびっくり
                しちゃいますよ」

                「原さん、これ私達の時代の最高級ワックス。
                1度かければ数ヶ月はピカピカですよ。
                まだ新品だから使ってください。
                もちろん天気のいい日にワックスかけますけど」

                「田中さん、今日は楽しちゃったね」
                沖はニヤニヤしながら話しかけた。

                「この〜!」

                祐一は
                「今日は私のミニパソコンで上映会と2020年の話で盛り上がりましょう」
                「この小さい板にような機械は今の時代のスーパーコンピューターの性能も
                凌ぐほどの代物なんです。

                「へぇ〜」
                原はまじまじと畳んであるパソコンを眺めていた。
                「これでどういうことが出来るんですか?」

                「どういうこと・・・?」
                「う〜ん・・・
                何でも出来ます。
                世界中の人達とすぐ交信出来たり文書の保管・作成も簡単にできるし
                携帯用コンピューターです。
                電話機もそう。
                携帯電話機なんて2020年じゃごく当たり前。
                性能もパソコン並みですよ。
                カメラもついているしね」

                話していくうち、炊飯器が炊けたようだ。

                沖が
                「あ〜、お腹空いた!」

                「沖さん、ちょっと待っててください。
                用意しますから」

                「沖、何もしないで腹減った!はないだろう」
                「働かぬ者喰うべからずだ!」

                原は
                「遠慮は無用です。
                大したものは出来ませんが・・・」

                「沖、明日から仕事だ。
                今までの分、稼がないとな」

                「もちろん!」
                ピースサインを出して笑っていた。

                「用意出来ましたよ」
                そう言いちゃぶ台にご飯・大根の味噌汁・目玉焼き・沢庵・納豆を置いた。

                「わぁ〜、豪勢!」
                「俺なんか朝飯抜きだったから嬉しいな〜」

                沖は美味しそうにゴクンと喉を鳴らした。

                祐一は
                「本当にありがたく思います」
                「頂きます!」

                3人は囲んで食事をした。

                朝食が終わりお茶を飲みながら原は
                「ところでどうやって、この時代にえっ〜とタイムスリップ?出来たんですか」

                2人は顔を見合わせた。
                祐一は
                「家を出る時、天気予報では快晴。
                こりゃ走り日和だとおもって夜中に家を出ました。
                246を走って御殿場地域に来たら霧が出てきて頭痛もしてきた。
                だんだん濃霧になり仕方なく無料駐車場に避難。
                仮眠しようと思い寝て目が覚めたら昭和の時代?
                SFの小説・ドラマ・映画なんて沢山あるけど、まさか自分達が。
                正直まだ夢を見ているような・・・」

                沖は
                「俺も濃霧に出会って仕方なくバス停に避難。
                寝て目が覚めたら警察官2人に職務質問されて話がまったく通じず。
                もう悪夢見ている気分でしたよ」

                「私も田中さんのS2000を見た時、何だあの車は?ってびっくりしました。
                ナンバーは見たことないし、こりゃ不審車だ!と思ってすぐ追いかけました」

                「ですよね。
                この時代にS2000のような車が走っていたら誰でも不審がります」

                原は
                「元の時代に帰れる目処はあるんですか?」

                祐一は
                「さぁ〜?」
                両手を挙げて
                「お先、真っ暗ですね」

                「もし霧が出たらまたタイムスリップなんてこと、ありませんか?」

                祐一と沖は
                「あっ、そうか!
                霧が出そうな時、現場に行くのも手か!」

                沖は
                「田中さん、だけどまた違う時代に行ったらどうするの?
                戦国時代とか。
                俺、首はねられるの嫌だからね」

                祐一は笑った。
                「お前らしい発想だ」
                「いつか霧が出たら試してみます。
                その前に原さんに恩返ししなければ」

                「同感!!」

                沖も両手を挙げて賛成した。

                「あっ、そうだ」
                「パソコンでレースのゲームでもやってみますか?」

                「ゲーム?」

                「パソコンに内蔵してある車のレースのゲームなんです。
                面白いですよ」

                祐一は早速パソコンをセット。
                電源を入れ、キーボードを操作。
                原は興味津々でのぞき込んでいた。

                「沖、場面は何がいいかな?」

                「う〜ん、首都高環状線とか・・・」

                「それ、いいな。
                俺達の時代の街並みもわかるし」

                「原さん、始めに私がやります。
                操作方法教えますね。」

                祐一はペース車両もS2000にしゲームスタート!
                画面も実際に首都高を走っているかのようなリアルな映像と音。
                原がびっくりしたのは首都高沿いにそびえ立つビル群だ。

                「田中さん、何この風景???」

                「私達の時代の東京の姿です。」

                原は驚きのあまり目をまん丸くして画面に食いついていた。
                祐一は専用の接続機器を使い、ゲームスタート。
                スタートは湾岸大井入口からレインボーブリッジを通り環状線右周りの
                コースにした。
                手慣れた操作で湾岸直線をS2000のサウンドそっくりのエンジン音で加速。
                高速コーナーを抜けレインボーブリッジを通過。

                原は驚嘆の声をあげた。
                「すげぇ〜、何この風景?」

                高層ビルが建ち並び東京タワーが小さく見えるほど。
                右側にはスカイツリーも見える。
                原にとっては異次元の世界だ。

                環状線に入り銀座・京橋付近のテクニカルなコーナーを高速で駆け抜ける。
                祐一の目も少年のように輝いている。

                沖は
                「田中さんも走りになると少年だね」
                傍で笑いながらちゃかした。

                見事なドライブテクニックだ。
                首都高1周するのに7分ちょっと。

                沖は
                「暴走親父だね 笑」

                「何言うか!
                お前の荒っぽさには負けるよ」

                「原さん、教えますからやってみますか?」

                「いえ、もう1度見せてください」
                興奮で顔が真っ赤だった。

                「じゃ沖、もう一度やって見せてくれよ」

                「えっ、俺が・・・」
                「俺、下手っぴだから」

                そう言いながら早速接続機器を手にしていた。
                目は獲物を狙うかのような鷹のよう。

                「原さん、こいつの走り見てください。
                半端じゃないですから」

                祐一の走りは無駄のない滑るような走りだが沖の走りは荒削り。
                無駄も多いが迫力といったらすざましいくらい。
                タイヤもギャギャギャと悲鳴をあげ、ヘアピンカーブではドリフトをしながら
                駆け抜けていく。
                直線ではすぐに200キロ近いスピードまで出しコーナー手前でフルブレーキング。

                「原さん、沖は免許証何枚あっても足りないですね。
                取り消し確実!」

                派手な走りだったが祐一よりタイムが2秒遅かった。
                「ちぇ、何だよ〜
                もう1回!」

                迫力はあるが無駄が多いからタイムは落ちる。

                「沖、次は原さんの出番だ。
                そう熱くなるな」

                「どうぞ、原さん
                やり方教えますから」

                「なんだか怖いですね〜」

                「このスイッチがアクセル、これがブレーキ。これがハンドル操作・・・」
                いろいろと教えていき、
                「最初はゆっくりでいいです。
                機器に慣れたら除々に全開していけば」

                原は怖々と開始。
                最初はゆっくり操作だったが段々と慣れ
                「面白い!
                本当に車を運転しているみたいだ!」
                感激していた。

                最初の1回目はタイムは20分近い。
                だけど仕方ない。
                「原さん、何度もやってください。
                器が済むまで」

                何回やっただろうか。
                機器にも慣れコースも少し熟知していきたのか、
                「おい、沖、原さんの走り見違えるようになったな。
                こりゃ、ひょっとして好タイムを叩き出すかも」

                「さすがS500使い、ドライブテクは違うね」

                叩き出したタイムは10分を切るまでになった。
                祐一は
                「原さん、凄いね!
                今日初めてやったのに10分切るなんて・・・」

                「興奮してます。
                こんな面白い遊びがあるなんて」

                「目が疲れたでしょう
                少し休みましょう」

                「お茶を入れましょう」
                そう言い原は立ち上がった。

                3人でゲーム談義をしながら原は
                「いい時代ですね」

                「いや、ここまでリアルだと他にもいろんなゲームがあるんですが人を
                殺したり物を破壊したり教育上よくないゲームも沢山あるんです。
                だから実際に凶悪な犯罪もしょっちゅうです。
                子供には教育上良くないですね
                私達の時代、いとも簡単に人が殺されてます。
                治安は悪いですよ」

                「そうなんですか・・・」
                「じゃ警察官も大忙しですね」

                「他にも面白い内蔵ゲームがあります。
                あとでやりましょう。
                例えば織田信長のゲームとか戦略ゲームもあります」

                「それも面白そう
                なんだか1日があっという間に過ぎそうですね」

                「田中さん、俺続きやっていい?
                負けたの悔しいよ。
                納得いかない」

                「ったく、負けず嫌いなんだから。
                どうぞ、お好きに」

                そうするとまたパソコンを前に始めた。
                沖も根っからの走り好きだ。
                本来なら箱根やサーキットで走るのが一番いいのだがこの世界では
                仕方ない。

                ゲーム中、一本の電話が鳴った。
                「沖、ゲームの音!」

                音量を小さく絞り
                「もしもし・・・」

                どうやら署からのようだ。
                会話をしていくうち、
                「田中さん、沖さん、浜松の本田が是非S2000を見せてほしいという
                依頼ですが、どうですか?」

                「嬉しいです。」
                「ただ明日は仕事なので、それ以降なら」

                原は再び電話で会話。
                しばらく会話して切った。

                「じゃ、あさってメーカの方が警察署に来るみたいです」

                「沖、楽しみだな〜」

                「本田宗一郎が来るのかな?」

                「広報担当か開発部門の人じゃないか」

                「見たらびっくりするだろうな〜」

                原は
                「2020年って本田はどんな車を作っているんですか?」

                「本田と限らず電気自動車が主流です」

                「電気?・・・」

                「エンジンを使わずバッテリーを動力源にし性能もS2000並み。
                だけど音もせず、スタイルもコンピューターでデザインした車ばかり
                だから、つまらない代物ばかりです。」

                「なんだか想像つかないです。
                電気が動力源なんて」

                「車のエンジン開発といったらメーカーの長年のノウハウと何十億円と
                いう巨額の資金があってはじめて開発できるというもの。
                だけど電気自動車主流になってからはバッテリーさえあればあとはボディと
                足回りくらい。
                インドやマレーシアという国まで安い車を開発。
                日本は苦戦してますね」

                「インド?」
                「車はアメリカやヨーロッパじゃないんですか?
                アメリカのキャデラックとかみんなの憧れの車ですよ」

                「アメ車の神話はとっくのとうに崩壊しました。
                巨大なボディ、燃費が悪く走りもヨーロッパ車のようにいいわけではない。
                絶滅した恐竜のような存在です」

                「その点、日本車はコンパクト・燃費、走りも良く世界中で売れ世界中で
                売れたのですが21世紀になってから中国・韓国・インド・マレーシア・他
                いろんな国々が自動車メーカーを作って日本も大変な状況です。」

                「私のS2000なんて2020年じゃ化石のような車ですよ」

                原は指で数えながら
                「え〜と僅か半世紀でそんなに変わるんですか。
                驚いた」

                沖は突然
                「やった〜!」と歓声をあげた。

                「田中さん、0,2秒勝ちましたよ!」
                腕をまくり上げ勝利のポーズをする。

                「あとでぎゃふん言わせてやる 笑」



                時間は過ぎ、夜になった。
                「原さん、ところで御殿場駅って近いですか?」

                「歩いて15分くらいですか」

                「7時集合と言っていたから6時に起きれば十分間に合うかな」
                「沖、ちゃんと起きろよ」

                「田中さん、目覚ましいくつかかけといてよ」

                「じゃお前の携帯と時計にセットしておけ」

                原は
                「倉庫作業員も大変な仕事でしょう。
                無理はしないでください」

                「いや、体もなまっているからちょうどいいです」



                翌日、朝になり目覚ましがけたましく鳴る。
                祐一はすぐ飛び起きたが沖はまだ寝ている。
                「こいつめ!」

                「沖、起きろよ!」

                眠そうな顔をしながら起き出した。

                原はもう起きていた。

                「おはようございます」

                「おはようございます。
                早起きですね」

                「お二人の昼食用のおにぎり作りました。
                男が握ったから形悪いですけど」

                「すみません」

                二人は顔を洗いシャツとGパン姿・スニーカーの格好で出かけた。
                歩きながら
                「沖、今日の稼ぎは殆ど原さんに渡さないといけないな」

                「ここまで世話になったら1日くらいの稼ぎじゃ足りないですよね」

                話ながら駅前に着くと古いボンネットバスが止まっていた。
                ○○興業・・・

                「沖、あのバスだ」

                走りながら近づきバスの隣に立っていた監督風の男性に
                「おはようございます」
                お辞儀をした。

                男性は2人を一別。
                なんだ、この格好は?という顔をした。
                たしかにこの時代、Gパン姿はまだ珍しい。
                ほとんど見ない。
                それも沖は赤と黄色のスポーツシューズ。

                「名前は?」

                「田中祐一と沖龍也です」

                紙を見て耳に差してある鉛筆で無造作に印をつけ

                「乗れ!」

                2人はバスに乗るとホコリ臭い。

                「おはようございます」

                すでに数人乗っていた。
                乗っている人達を見てびっくり。
                入れ墨をしている者、浮浪者じゃないかという者。

                祐一は座席に座り小声で
                「沖、護送車みたいだな」

                「田中さん、このバス臭いよ。
                ホコリは舞っているし座席は汚いし・・・」

                「生活のためだ。仕方ない」

                時間になり約10人くらいを乗せバスは発進した。
                乗り心地はめちゃ悪い。
                ガタゴトガタゴト・・・
                あちこちきしみが生じている。

                沖は
                「なんだか憂鬱だな〜」


                続く
                                         まさやん                    




                posted by: まさやん&花 | 小説 2020年 | 17:06 | comments(4) | trackbacks(0) | - |
                近未来小説 2020年(5)
                0
                   祐一と沖は銭湯初体験だった。
                  スーパー銭湯なら何度も行っているが昔ながらの銭湯は初。
                  沖は
                  「田中さん、原さん、最高に気持ち良いっすよ!
                  心身まで温まる」

                  「そりゃ良かったです。
                  喜んでもらえて嬉しいですよ」

                  祐一も
                  「原さんのおかげで何から何まで感謝してもしつくせないよ」

                  「いいえ、私もS500を手入れしてくれて別車みたいになりましたからね」

                  「明日、私のワックスで車ピカピカにします」
                  「あとアライメントだ。
                  コーナリングマシンに仕上げますよ」

                  「楽しみですね〜」

                  沖は
                  「今日、田中さん何もしなかったもんね。
                  明日頑張って働いてもらわないと」

                  「人使いの荒い奴だ!」

                  3人は笑い出した。

                  ポカポカに温まり、
                  祐一は
                  「原さん、お背中流しますよ」

                  「じゃ3人で背中あらいましょう」

                  そういい湯気のたった体を椅子に座り原・田中・沖の順で背中を
                  洗い出した。

                  沖は
                  「あれ、俺の背中は・・・?」

                  祐一は
                  「あとでやってあげるよ」

                  「いてて・・・
                  おい沖!
                  お前、力入れすぎ。
                  背中の皮が剥ける。
                  ったく馬鹿力なんだから」

                  「田中さんの背中が柔なんですよ」

                  原は
                  「背中流してもらうのって気持ち良いですね」

                  祐一は
                  「ほんと裸の付き合いってやつですか」
                  「昭和の時代っていいな〜」

                  隣にいたおじいさんが
                  「おやおや、原さん
                  今日は友達と仲良く背中流しっこか。
                  いいな〜」
                  「お二人、どちらからいらしたんですか?」

                  祐一は
                  「東京です」

                  「東京か、ここは田舎だけど景色もいい」
                  のんびり観光しなさい」

                  「ありがとうございます」

                  3人とも体を流し、頭も洗い、きれいさっぱり。

                  沖は
                  「田中さん、この時代もいいね。
                  ここにいたくなっちゃった」

                  祐一は
                  「何言ってんだ。
                  さっき警察署で泣きべそかいていた奴は」

                  「田中さんだって同じじゃん」

                  原は
                  「二人とも仲いいですね。
                  何でも言い合える」

                  祐一は
                  「沖の口の悪さは天下一品!
                  だけど何故か気が合うんだな〜」

                  沖は
                  「口の悪い奴ほど心は温かいってね」

                  また3人は笑い出した。

                  さぁ〜、上がりましょうか。

                  3人はガラス戸を開け脱衣所へ。
                  脱衣かごから
                  「田中さん、沖さん、これ新品の下着。
                  使ってください」

                  祐一と沖はそこまでやってくれる原のご厚意にただただ頭を下げる
                  だけだった。
                  「すみません、何から何まで申し訳ない」

                  「そんな恐縮しなくていいですよ
                  私もお二人いい友人と出会えましたから」

                  原は番台の親父に
                  「おやっさん、牛乳を3本」

                  「田中さん、沖さん、風呂上がりには牛乳美味いよ」

                  そう言い手渡した。
                  原は腰に手を当て牛乳瓶を一気飲み。
                  「ふぅ〜美味しい!」

                  祐一と沖も真似して飲んだ。
                  「美味い!」

                  3人は頭にタオルを置き銭湯を出た。
                  風が心地良い。
                  天然クーラーだ。
                  これで下駄でも履いたら風情があるな・・・
                  祐一は思った。

                  歩いていくうち、原は
                  「ちょっと待ってて」
                  そう言い小さなスーパーへ入っていった。

                  二人は外で待ちながら何気なく電柱を見たら張り紙が。

                  「沖、あれを」
                  祐一は指を指した。

                  『倉庫作業員募集、日給600円、日払い可。○○興業。
                  電話番号××××ー××ー××××』

                  沖は
                  「日給600円??
                  時給の間違いじゃないの」

                  祐一は
                  「今昭和30年代だ。これが相場だろう。
                  日銭稼ぐにはちょうどいいかもしれん。
                  あとで電話してみよう」

                  携帯電話のメモ欄に入力した。

                  「沖、お前、力があるから倉庫の仕事はお手の物だろう」

                  「えっ、俺一人で?」

                  「俺も行くよ、大丈夫!」

                  話していたら原が
                  「お待たせしました。
                  行きましょうか」

                  袋2つ持って戻ってきた。
                  食料品や日用品だ。
                  「料理は出来ないけど卵や牛乳・納豆を買いました。
                  米・味噌はあるから大したものは出来ないけど今夜また何か
                  作りましょう」

                  「すみません、このご恩はかならずお返しします」

                  「原さん、電柱に貼ってあるビラを見たのですが私達も仕事をします」

                  「そんな無理しないでください」

                  祐一は
                  「あとでお電話貸してください」

                  「どうぞ、いいですよ」

                  アパートへ戻り、早速電話機を借りた。
                  懐かしい黒電話機だ。
                  ダイヤルを回し
                  祐一が
                  「○○興業ですか?
                  作業員募集のビラを見たのですが」

                  ぶっきらぼうな男の声で
                  「いつから?」

                  「あさってからでいいでしょうか」

                  「何才?」

                  「私40才ともう一人27才です」

                  「じゃ、あさって御殿場駅前朝6時集合!
                  遅刻はするなよ。
                  社名入りのバスが止まってる。
                  あとお前達の名前は?」

                  「田中祐一と沖龍也です」

                  そう言うとガチャンと電話は切れた。
                  なんという素っ気ない応対。
                  先が思いやられる。
                  憂鬱だったが生活のため。

                  祐一は
                  「沖、あさってから仕事だ。
                  頑張ろうな」

                  沖は腕をまくりあげ
                  「力仕事は任せてよ!
                  車のミッションやエンジン重いのを持ち上げているんだからお手の物」
                  力こぶを見せていきがっていた。

                  原は
                  「田中さん、沖さんまたお腹空いたでしょう。
                  何か食べましょう」

                  祐一と沖は風呂から上がったせいか、また小腹が空いていた。
                  しかしここまで世話になっていると、「はい」とは言えず
                  「いや十分ですよ」

                  「夜中、腹が減ったらなんですからラーメンでも作りましょう。
                  私が作るラーメンだから不味いですよ 笑」

                  「とんでもない、じゃありがたく頂きます」

                  「テレビつけましょう」

                  10インチちょっともあるだろうか。
                  小さい画面の白黒テレビだ。
                  沖はさっきから興味津々だった。
                  「これってブラウン管ですよね。」
                  そう言い中をのぞき込んでいた。

                  スイッチを入れ番組はどうやらTBSのよう。
                  ニュース番組をやっていた。
                  祐一・沖がいつも見慣れていた画像からはほど遠いほど見づらいものだ。

                  原が
                  「さっき、ミニパソコンというもので画像見せてくれたけど凄いきれいですね」

                  「3D画像なんです」

                  「3D??」

                  「画像が立体に浮き上がるんです。
                  だから迫力ある画像になります。」

                  「カラーもびっくりしました。
                  未来は素晴らしい時代ですね」

                  「ここまで進歩するのもどうか?ですね」

                  話していくうちニュースは終わって歌番組になっていた。
                  シャボン玉ホリデーだ。
                  祐一は
                  「懐かしい!
                  ザピーナッツだ」
                  祐一は子供時代に少し見た程度。
                  沖は懐かしのメロディで見たくらいだ。
                  二人とも懐かしそうに見ていた。
                  しばらくすると、いい匂いが。

                  「さぁ〜出来ましたよ
                  私のお手製ラーメン」
                  専用のどんぶりがないため茶碗で代用。
                  だけど嬉しかった。

                  「美味しい!」
                  二人は舌鼓をうちながら食べた。
                  野菜も入っていて昔ながらのラーメンの味だ。

                  祐一は
                  「原さん、明日車のワックスとアライメントやらせてください」

                  「アライメント?」

                  「アライメントとは4つのタイヤ・足回りを微調整するんです。
                  タイヤ4つがしっかりと路面に設接地いていれば更にコーナリング性能が
                  上がりますよ」

                  「簡単にできるんですか?」

                  「沖と協同でやれば30分もやれば出来ます」
                  「なぁ〜沖!」

                  「任せて!」

                  「楽しみにしてます。
                  ありがとうございます」

                  ラーメンでお腹一杯になったのか、沖が眠そうだった。
                  「沖、まだ夜7時だぞ!」

                  「いや昨晩一睡もしないで家を出たから睡魔に襲われちゃった」

                  祐一もあまり睡眠は取っていなかった。
                  原も仕事明け。
                  3人とも寝不足だった。

                  「少ししたら寝ましょうか?
                  ところで布団が二人分しかないんです。
                  申し訳ない。
                  2つの布団で3人になりますがいいですか?」

                  「とんでもない。
                  俺達ごろ寝でいいですよ」

                  「お客様をごろ寝なんてとんでもない。
                  男同士、気色悪いかもしれないけど私端っこで寝ますから二人
                  体を伸ばしてください。」

                  「いや、1つの布団だけ借ります」
                  「沖、今夜は二人で添い寝だ!」

                  「えっ〜、田中さんと〜」

                  3人は笑い出した。

                  「俺、いびきかくんですよ」

                  「じゃ沖は外だ!」

                  「そんな殺生な」

                  「冗談だよ、いびきかいたら鼻をつまむからな」

                  原は
                  「3人とも寝不足ならいびきもわかりませんよ
                  修学旅行気分で話ながら寝ましょう」

                  一本の電話が、
                  ジリリリーン
                  原は電話に出た。
                  しばらく話していて電話を切り
                  「田中さん、沖さん、警察署に車預けてますよね。
                  地元の新聞社の記者が目敏く見つけて聞いたそうです。
                  これ、何ですか?と。
                  対応の刑事が未来2020年のホンダ車だ!と。
                  ただ世間に発表すると大変な騒ぎになるので口止めしたそうです。
                  しかし口の軽い記者で本田技研に問い合わせたそうです。
                  本田がもの凄い関心を持っているそうで」

                  祐一と沖は浜松の本田宗一郎に興味があった。
                  だけど会っていいものかどうか迷っていた。
                  まだメーカーの半信半疑だろうし、車を見ても信じられない!と
                  思うだろう。
                  一人の記者のおかげで会える口実ができた。

                  祐一は
                  「ホンダの出方次第ですね。
                  見てみたいということであればお見せします。」

                  そうは言ったものの、歴史を変えてしまう???
                  そういう恐怖もあったが、祐一は本田宗一郎氏に会える!という
                  わくわく感で一杯だった。

                  「沖、雷親父に会えるかもしれないぞ」

                  「伝説の人ですものね。
                  会えたら心臓ばくばくですよ」

                  原は
                  「そんな有名な方になるんですか?」

                  「本田宗一郎氏がいたからこそ日本の自動車界が発展したんです。
                  レースもそう。
                  本田はF1にも参戦しましたから」

                  「えっ〜、F1にも出たんですか」

                  興奮しまくりだった。

                  「ファ〜」
                  沖が欠伸をし出した。

                  「子供みたいな奴だな」
                  祐一は笑いながら言い
                  「子供はもう寝る時間か」

                  「田中さんだって目が赤いじゃん」

                  「ハハハ・・・
                  もう寝ましょう」
                  「今布団轢きますから」

                  押し入れから布団を取り出し二人分ひいた。

                  祐一は
                  「あさってから仕事で稼いで宿泊費払いますから」

                  「一切ご無用!
                  気にしないでください」

                  まだ夜8時過ぎ。
                  寝るにはまだまだ早すぎるが祐一と沖にとって驚きの連続の1日だった。
                  精神的に疲れたのだろうか。
                  3人は布団に潜り込み会話をしていたのだが沖は一番に眠りの世界へ
                  早速
                  「グゥ〜グゥ〜・・・」
                  いびきをかき出した。

                  「原さん、すみません。
                  騒音男で」

                  「寝たらわかりませんよ」

                  祐一も睡魔に襲われてきた。
                  あさっての仕事、本田宗一郎氏に会えるかもしれない?
                  そういうドキドキ感もあったがいつの間にか夢の世界に入っていった。


                  今回時間があまりなく少し短めの小説になりました。
                  (6)からはまた長めになる予定です。
                  更なるどんでん返しもあります。
                  お楽しみに!

                                                  まさやん



                  posted by: まさやん&花 | 小説 2020年 | 10:22 | comments(2) | trackbacks(0) | - |
                  近未来小説 2020年(4)
                  0
                     田中祐一と沖はさっきまでの不安と恐怖はどこへやら。
                    原巡査と警察署で車談義に入っていた。
                    車好きな3人の会話。
                    何時間あっても話は尽きそうにない。
                    メカに詳しい沖は
                    「原さん、S500のエンジン見せてもらえますか?」

                    「いいですよ」
                    原はボンネットを開けると、まるで宝石のようなコンパクトなエンジン。
                    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BBS500

                    「うぉ〜すげぇ〜〜!」
                    「DOHC4気筒4キャブだ!」
                    「2020年でも通用するよ」
                    沖は興奮しまくりだ。
                    「馬力はどのくらいあるんですか?」
                    「40馬力です」

                    S500の軽量ボディに40馬力なら十分以上のパワーだ。

                    「俺達の時代にこそ必要な車ですね」
                    「あとで整備させてください」
                    「俺はメカニックだから、ばっちり仕上げますよ」

                    原は
                    「いいんですか?」
                    「最近キャブの調子が悪く整備に出そうと思っていたので助かります」

                    「こりゃ腕が鳴る!」
                    沖は腕をまくし上げる動作をした。

                    話をしていたら鈴木刑事課長が駐車場に降りてきた。
                    「3人とも少年のような目をしてますね。
                    相当な車好きのようだ」

                    祐一は
                    「さっきまでの不安が嘘のように消えました」
                    笑いながら答えた。

                    「原巡査、そろそろ着替えて帰ったらどうだ。
                    疲れているだろう」

                    「はい、じゃ着替えてきます。
                    田中さん、沖さん、すぐ来ますから」

                    「ゆっくりでいいですよ」

                    原は署内に入り、
                    「沖、ところで俺達の車、2020年のナンバーだよな。
                    また走ったら捕まるよな」

                    「あっ、そうだ!どうしよう」

                    「ナンバー外すわけにいかんし、仮ナンバーをつけるのもな〜」

                    「これじゃ3人で箱根へ行けないですね」

                    2人とも腕組みしながら困った顔をした。
                    しばらく考えていると原巡査が私服姿で降りてきた。

                    「お待たせしました」

                    「原さん、私達の車のナンバー、これでは公道を走れませんね」

                    「確かにそうですね。
                    また捕まります。
                    どうしましょうか?」

                    「私のアパートは歩いても10分くらいの距離にあります。
                    駐車場もだだっ広くて数台置けるスペースがあるのですが
                    立場上、走ってもいいとは言えませんね」

                    祐一と沖は
                    さて、困った!という表情をした。

                    「仕方ないから署内の駐車場に保管するよう頼みます。
                    ここならいたずらされる心配もないし」

                    「それではお願いします。
                    荷物だけ整理していいですか」

                    「いいですよ」

                    2人は車のトランクを開けて沖は携帯用自動車工具スナップオン、
                    プロ御用達仕様とカストロールエンジンオイル4リットル缶を持ち出した。
                    祐一は携帯電話とデジタルカメラ・ミニパソコンを取り出した。

                    原は祐一の品を見て
                    「何ですか、それは?」

                    「携帯電話とカメラ・パソコンです」

                    「携帯?パソコン??」

                    「私達2020年の時代の品です。
                    このカメラでS500撮ってあげますよ」

                    そう言いS500をパチリ!
                    すぐ液晶画面を見せるとS500が映っている。

                    「凄い!こりゃ驚いた」
                    「私はカメラ好きでキャノン2型というのを使ってますが、このカメラ
                    コンパクトで軽い、軽すぎる!」
                    「どこにフィルムを入れるんですか?」

                    興奮気味に話している。

                    「これはデジタルカメラといってフィルムはいらないんです。
                    電池も太陽電池といって太陽に当たれば自動的に充電できるんです」

                    原は目を丸くしていた。

                    祐一は沖に
                    「さっき浜松へ3台で行こうと話したよな。
                    だけど自走出来ないんじゃ本田宗一郎に見せられない。
                    S2000・2200、写真に撮っておこうか」

                    そう言い外観・室内・エンジンあらゆる角度から100枚は軽く撮った。
                    原もエンジン・室内を見て驚くばかりだった。

                    「運転席座ってもいいですか?」

                    「どうぞ、どうぞ」

                    座るなり
                    「うぉ〜、なんて座り心地のいい、体が包まれる」

                    「バケットシートなんです。
                    コーナーを激しく攻めても体をホールドできるようにね」

                    「本当に未来の車なんですね。」
                    時間を忘れしっばらく座って感動しきりだった。
                    興奮も冷めやらず金縛りのようにシートに座っていた。
                    ふと我に気がつき
                    「すみません
                    ず〜と座ってました」

                    祐一は笑いながら
                    「何時間でも」

                    「それでは1人ずつ私の車で家まで行きましょうか」

                    「お願いします。
                    お世話になります」

                    祐一から乗り込む。
                    トランクに荷物を入れ助手席に座る。

                    「沖さん、すぐ戻りますからちょっと待っててください」

                    「了解!」
                    ピースサインをして笑っていた。

                    祐一は助手席に座ると室内はS2000と比べると格段に狭い。
                    コンパクトだ。
                    だけど窮屈感はない。
                    シートも祐一の時代からすれば薄っぺらい。

                    エンジンをかけた。
                    http://www.honda.co.jp/hondafan/SoundofHonda/engine/4R01/s500.html

                    「ブルルルルン・・・」
                    軽やかなエンジン音。
                    まるでバイクのような吹き上がり。
                    S2000のエンジン音も音楽がいらないほどだがS500のエンジン音は
                    どんな名曲もかなわない。
                    1日エンジン音を聞いていても飽きないほどだ。
                    祐一は音に酔いしれてしまった。

                    原は沖に
                    「すぐ戻ってきます。
                    待っててください」

                    「ゆっくりでいいですよ」

                    走り出し加速もいい。
                    あまりの加速の良さ、エンジン音に鳥肌の立つ思いだった。
                    車だとわずか数分。
                    原のアパートが見えてきた。
                    この時代らしい木造のアパート。

                    「ボロアパートで狭いですが、しばらくの間どうぞいてください」

                    「お世話になります」

                    車から降り荷物を降ろしS500はまた軽やかに走り出した。

                    祐一はアパート前でしばらく待っていたが、ふと現実に返った。
                    息子の大地、妻の加奈、両親のこと。
                    そして仕事先・・・
                    「俺はどうなるのか?」
                    さっきまでの楽しい出来事から不安の重みでつぶされそうになった。
                    このまま時代の漂流者として彷徨うのか?
                    家族からも捜索願が出され行方不明として永久に消えていく運命か?
                    そもそも何で俺と沖がこんな目に遭わなければいけないんだ。
                    どうやって生活をすれば・・・
                    考えていくうち、ヘタヘタと座り込んだ。
                    幾度も不安が頭をよぎり、目線もうつろになっていたら軽やかなエンジン音が。

                    S500から沖が降りてきて興奮気味に
                    「田中さん、もう最高!!」

                    この言葉ですぐ不安は消えた。

                    「もう脳天まで痺れますよ」
                    興奮最高潮だ。

                    原は
                    「お待たせしました。
                    ビールとつまみを買いましたからお二人の歓迎会ということで
                    部屋で飲みましょう」

                    「何から何まで申し訳ない。
                    ありがとうございます」

                    二人は原の後をついて2階の部屋に上がった。
                    木造とはいえ、まだ新しそう。
                    6畳と2畳ほどの部屋、台所とトイレのあるアパートだ。

                    「狭い部屋ですが」

                    「とんでもない。
                    少しの間だけでも世話になります」

                    原はちゃぶ台を出しビールとつまみを置いた。
                    「私、料理が出来ないので、これで我慢してください」

                    祐一と沖は
                    「私もです」
                    笑いが出た。

                    懐かしい柄のキリンビールだ。
                    コップに注いで3人で乾杯!
                    沖は美味しそうに喉を鳴らした。
                    大の酒好き。
                    ビール1ダースくらい軽く飲んでしまう酒豪。

                    3人は自己紹介を改めてした。
                    祐一は
                    「田中祐一です。
                    1980年生まれ、昭和55年です。
                    ○○商事に勤めていて3度の飯よりも車が大好きです」

                    沖は
                    「沖龍也です。
                    平成5年生まれ、27才です。
                    本田販売店でメカをやってます。
                    俺も車はめちゃくちゃ好きで酒の次に大好きです。」

                    この言葉に3人とも笑いが出た。

                    「沖さん、ビール足らなければ、また買ってきます。
                    いつでも言ってください」

                    「原さん、こいつザルだから調子つかせないほうがいいですよ」
                    再び、笑いが出た。

                    原が
                    「原一郎です。
                    末っ子なのに何故か一郎?。
                    昭和12年生まれ、出身は鹿児島です。
                    私も車とカメラが大好き」

                    「2020年ってどんな時代なんですか?
                    想像するに、とても便利な時代で皆さん幸せに暮らしているように
                    みえますが。
                    今の時代、戦後の復興でだいぶ良くはなったけど貧乏暮らしの人が
                    多く、まだまだですね。
                    東京は東京タワーも出来、だいぶ活気は出てきましたけど」

                    祐一と沖は一瞬、話していいか迷った。

                    「これから日本は凄い経済発展をします。
                    高度経済成長・バブル、経済大国と言われるようになります。
                    CMで24時間働けますか?というような台詞も出るほど忙しい
                    日々でした。
                    国民皆が豊かになり春を謳歌するような・・・
                    しかし・・・」

                    そのあと言葉が詰まった。

                    「謳歌する・・・
                    その後は?」

                    祐一は
                    「またあとで話しますよ。
                    今の時代いいですね。
                    土はあるし、さっき来る途中、子供達が河原で泥んこになって遊んでた。
                    子供の目が輝いている。
                    素晴らしいですよ」

                    沖は
                    「本当だよね。
                    俺がガキの頃は遊ぶ場所もなかったし、羨ましいよ」

                    祐一は
                    「今の時代、生き生きしてますよ。
                    これが本当の日本の姿」

                    原は
                    「2020年って考えると華やかなイメージがあります。
                    また話の続き、楽しみにしてます。」

                    笑いながら言うと
                    二人は黙った。

                    原は
                    「どんどんビール飲みましょう!」

                    祐一は
                    「今の総理大臣は誰ですか?」

                    正直、怖い質問だった。
                    もし全然知らない名前が出て来て自分たちの過去の世界と違う
                    んじゃないか?と思い恐る恐る聞いた。

                    「池田勇人です」

                    祐一はほっとした。

                    「名政治家です。
                    歴史に名を残している総理です。
                    こういう名せりふを言ってます。
                    俺は男です。
                    絶対に嘘は言いません。
                    経済のことは、この池田にお任せください。

                    頼りになる政治家です。
                    2020年こそ、こういうリーダーが必要です。」

                    原は

                    「だけど失言もしますよ。
                    貧乏人は麦を食え。
                    中小企業の5人や10人倒産して自殺しても構わない。
                    かなり問題になりました。」

                    祐一は
                    「今の時代、もっとひどいです。
                    失言問題、しょっちゅうです。
                    そして行動は私利私欲のみ。
                    日本国民、皆暴動寸前ですよ」

                    「そんなに大変なんですか?」
                    原は身を乗り出した。

                    「いや、またあとで話しましょう。
                    せっかくのビールが不味くなる」

                    祐一は
                    「昭和12年生まれだと太平洋戦争前ですね。」

                    「私は11人兄弟の末っ子なんです。
                    男は長男、次男、三男と私。
                    長男と次男は戦死しました。
                    長男は正義感が強く海軍パイロットになり終戦直前に特攻隊に
                    出撃し戦死しました。
                    出撃直前に家に帰ってきた時、俺は戦争が終わったら警察官になり
                    国民が安心して暮らせるよう治安を守るんだと言ってました。
                    まだ私、小学生でしたが、その言葉が記憶に残ってます。
                    その兄の意志を継いで警察官になりました。」

                    「特攻は本当に涙の出る悲しい出来事です。
                    その人達の日本を守るという意志が戦後の日本を爆発的に復活!
                    世界中が驚くような経済発展をするのですから」

                    沖は難しい話が苦手だった。
                    黙って聞いていたが
                    「田中さん、難しい話はやめて車の話をしようよ」

                    祐一と原は笑いながら
                    「悪い、悪い、
                    あ〜、そうだな。
                    面白い話でもするか」

                    祐一は
                    「明日は仕事ですか?」

                    「いえ、公休です」

                    「今日はまだ寝てないんでしょう。
                    私達、何でしたらS500の整備やってますから、ころのいい時間に
                    少し寝られてみたらどうですか?」

                    「夜になってからでいいですよ」

                    祐一はふと思い出しミニパソコンを取り出した。
                    パソコンの動画画面を原に見せようと思った。
                    箱根の峠でS2000や他のスポーツカーが走っているシーンだ。
                    パソコンも太陽電池で電池切れの心配はない。
                    10インチほどの小さい画面だが原は興味津々でのぞき込んだ。
                    音量を大きくし画面を見ると祐一のS2000のダッシュボードに設置した
                    カメラが捉えた映像。
                    RX−7との激しい峠バトルだ。
                    タイヤが激しく鳴る音、エンジン音が猛獣のように雄叫びを発し、テールツーノーズ
                    で激しくせめぎ合い、手に汗握る映像だ。

                    原は目を大きくして見ていた。
                    しばらく言葉が出なかった。
                    少し経って
                    「前の車は何ですか?」

                    「マツダRX−7です。
                    REエンジンを積んでいるんですよ」

                    「RE?」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3

                    「REとはピストンの代わりにローターを使用したエンジンなんです」

                    原は???
                    今ひとつ理解してない様子。

                    「たしかまもなくマツダが発表すると思いますよ。
                    コスモスポーツという車で。」

                    「他にも動画は沢山あります。
                    沖とのS2200とのバトルシーンもありますよ。
                    こいつの運転は荒っぽく右に出る奴がいないほど」

                    「田中さん!何言ってるんですか。
                    田中さんだって人の事言えないくせに」

                    話していくうちに、あっという間にビール10本なくなっていた。

                    「沖、お前飲み過ぎだぞ!」

                    原は
                    「また買ってきますよ。
                    何がいいですか?」

                    「とんでもない。
                    もう十分頂きました。
                    このお礼というわけではないですがS500を整備させてください」

                    「嬉しいですね。
                    本当にいいんですか」

                    「沖、頼んだぞ。
                    ビール飲んだ分、しっかりやれよ」

                    「任せてください!」

                    腕をまくり上げる格好で笑いが出た。

                    沖は工具のスナップオンとカストロール高級オイル缶を手に取り
                    駐車場へ降りた。
                    祐一もワックスを手に原と一緒に降りた。

                    「沖、酔っぱらっていて、ちゃんと整備出来るのか?」

                    「何、言ってんですか。
                    大丈夫!大丈夫!」
                    足取りも軽やかにS500に向かっていく。
                    ボンネットを開け工具を取り出し、一人言のように
                    「芸術品だよな、凄い、素晴らしすぎる!」
                    何度も連発している。

                    「原さん、エンジンオイル少し汚れているから交換します。
                    一段とエンジン吹き上がり良くなるよ」
                    そう言いカストロールを手際良く交換している。

                    他キャブ調整や細かいエンジン調整を1時間ほどやり
                    「よ〜し、完璧!」

                    「原さん、エンジンかけてみて」

                    原は運転席に座りキーを回すとブルルン!
                    小気味良い音だ。
                    軽く踏んだのにタコメーター(回転計)が振り切れんばかり。

                    原は
                    「俺の車ってこんなに凄いの?」

                    「素材がいいんですよ。
                    さすが本田宗一郎の車」

                    祐一は沖の手さばきに見とれてしまいワックスかけを忘れてしまった。
                    アライメントもだ。

                    「悪い、悪い、俺なにもしなかった」

                    「ずるいよ」

                    「いいですよ。
                    ゆっくり休んでください。」

                    沖の手は油まみれで汚れていた。
                    原は
                    「我が家は風呂がないから、これから銭湯に行きましょう
                    近所にあるんですよ」

                    祐一と沖は
                    「銭湯ですか。懐かしい響きだな〜
                    私達の時代、絶滅状態です。
                    この時代いくらですか?」

                    「大人19円です」

                    「安い!」

                    「2020年では1500円くらいしますよ。
                    スーパー銭湯だと、更に数倍の料金。」

                    「じゃタオル用意するから早速行きましょう」

                    「何から何まですみません」

                    深々と頭を下げた。

                    祐一は沖に
                    「何から何まで世話になるのは、たまらなく心苦しい。
                    日雇いでいいから日銭を稼がなくては」

                    「ほんと同じ気持ち!
                    めちゃ心苦しいよ」

                    3人で徒歩で銭湯に向かう。
                    二人にとってアスファルトの道に慣れたせいか土の道がとても
                    心地良い。
                    建物を見るなり祐一は
                    「懐かしい!
                    日本の原風景だ。」
                    しばらく立ちすくんだ。

                    番台にお金を払い脱衣かごに服を入れ浴場に入ると昼間なのに
                    満杯状態。
                    賑やかだ。
                    みんな顔見知りらしく楽しく談笑したり背中を流し合ったりしている。
                    湯船では気持ち良く歌っている人もいる。
                    一人の年輩の人が
                    「おっ、原さん。
                    今日は友達と一緒か。
                    今、場所を空けるから、ちょっと待っててくれな」

                    「慌てなくていいですよ」

                    祐一の時代にはない和やかな風景。
                    小さい子供が走り回っていた。
                    ある男性が
                    「おい、ぼうず!
                    走っていたら怪我するぞ」

                    こういう光景も祐一の時代だったらトラブル間違いなしだ。
                    喧嘩に発展するかもしれない。
                    今の日本人、何か忘れている。

                    3人は体を流し湯船に体を沈めた。
                    体の芯まで温まる。
                    ふぅ〜
                    祐一は大きく息をついた。

                    続く

                                            まさやん








                    posted by: まさやん&花 | 小説 2020年 | 15:10 | comments(3) | trackbacks(0) | - |
                    近未来小説 2020年(3)
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                       「何だ、ここは?」

                      祐一は目を疑った。
                      霧は晴れたがまだ夜明け前。
                      外は薄暗かった。
                      濃霧が出ていたときの頭痛は消えていた。
                      祐一の車を停めている場所は大小の石がゴロゴロ。
                      雑草も所々あり大きな原っぱだった。
                      首をかしげた。

                      「俺はたしか舗装された駐車場に入れたはずだが?」
                      まだ寝ぼけているのか自分の頭をゴツン!
                      「246を走り濃霧になり一時的避難で駐車場に入った」
                      「ひどく頭が痛み車内で仮眠」
                      「目が覚めたら駐車場ではなく原っぱ?」

                      俺は濃霧で目の錯覚をしたのだろうか?
                      考えても仕方ない。
                      事実ここにいるのだから。

                      ふと車内のカーナビを見ると電波障害なのか何も映らない。
                      「チェ、悪天候のせいか」
                      車内にあるペットボトルのお茶を飲み車外に出ることとした。
                      外はひんやり涼しい。
                      コオロギが秋の音色を響かせてくれる。
                      「いい音色だ」
                      ついこの前の40度以上の酷暑が嘘のようだ。
                      胸ポケットにあるタバコとライターを取り出しタバコに火を点ける。
                      「フゥ〜」

                      まだ外は暗い。
                      しかし道路を見ると片側2車線の道路だが未舗装だ。
                      「俺はやっぱり濃霧で246から道を外したようだ」
                      「しかし御殿場市内にこんな道あったかな」
                      タバコを吸いながら考えていた。
                      自転車に乗る新聞配達員の少年が目の前の道路を通過。
                      だが私のS2000を見るや驚き立ち止まる。
                      じっと車を見ている。
                      祐一のS2000のボディカラーは赤。
                      目立つがそんな驚くことじゃない。
                      「俺の車がそんなに珍しいか」
                      しばらく少年は祐一の車をポカンと見つめ立ち去っていった。

                      時計を見ると朝5時。
                      「おっと急いで箱根に行かないと一般ドライバーばかりになり
                      走れなくなるから急ごう」
                      そう思っていたら目の前の道路に一台のトラックが通過。
                      材木を積んでいた。
                      まだ薄暗かったからはっきり見えなかったが3輪トラック。
                      「馬鹿な!」
                      祐一は目を疑った。
                      この時代に現役で走っている3輪トラックがあるなんて・・・
                      すでに絶滅し残っているとしても博物館にあるだけ。
                      「俺の見間違いか」

                      また車のエンジン音が聞こえた。
                      「パタパタパタ・・・」
                      可愛らしい音だ。
                      通過してびっくり。
                      戦後初の国民車スバル360だ。
                      昭和33年〜45年まで生産され可愛らしいデザインで国民から
                      圧倒的な人気車になった。
                      祐一は目をこすった。
                      「俺はまだ寝ぼけているのか?」
                      3輪トラックに続いてスバル360。
                      「今日は冨士スピードウェイでクラッシックカーイベントでもあるのか」
                      朝から貴重な車を見た・・・と感心した。

                      しだいに空は明るくなった。
                      「やばい、急ごう!」
                      車に戻りエンジンキーを回す。
                      ブルルルン・・・
                      「こいつだけは寝起きのいい頼もしい奴」
                      「俺だけか、寝ぼけているのは」
                      顔を引っぱたき気合いを入れる。
                      いっちょ、かっ飛ばすか!
                      小気味良いギアをローに入れ発進。
                      原っぱにある大きな石、雑草を避けながら道路へ。
                      「よくこんなところに入れたものだ」
                      祐一は苦笑した。
                      道は片側2車線の未舗装直線道路。
                      「はて、こんな道あったかな?」
                      民家もあまりない。
                      山々の景色だけはいつもと同じだ。
                      信号が少ない。
                      交通量もほとんどない。
                      しばらく走っていると対向車2台が近づいてくる。
                      祐一は
                      「うん?」
                      近づくにつれ1台目はマツダR360、2台目はSP310。
                      SP310は日本初のスポーツカー。
                      当時レースで大活躍した車だ。
                      祐一は口をあんぐりした。
                      2台とも化石的存在。
                      博物館でも見るのが難しい存在。
                      それも2台ともナンバーが静(静岡)ナンバー
                      「一体どうなってるんだ?」

                      しばらく走行しているとまた1台の車。
                      パトカーだ。
                      それもレトロなデザイン車。
                      なんと初代クラウン観音開き。

                      クラウン観音開き

                      祐一は今朝から驚きの連続。
                      「なんなんだ、ここは?」
                      すれ違う瞬間、警察官も驚いた様子。
                      すれ違いパトカーは緊急停止。
                      即、Uタンし追いかけてきた。
                      「前の赤い車、止まりなさい!」
                      拡声器で叫んでいる。
                      祐一は頭が混乱していた。
                      目が覚めてから不思議の連続。
                      「俺は夢を見ているのだろうか?」

                      路肩に止め、パトカーも真後ろに止まる。
                      慌てて警察官2人が降り近づいてくる。
                      祐一も車から降りる。
                      40代くらいの警察官が
                      「何だ!この車は!!!」
                      「ナンバーが品川72ほ・・・・」
                      「偽造ナンバーか?」
                      「これは外車か?」
                      矢継ぎ早に質問してくる。

                      祐一は
                      「東京からドライブに来たんです」
                      「ここはどこですか?」

                      「ここはどこ?、御殿場市内に決まっておる!」
                      「免許証!!」

                      祐一は免許証を警察官に提示。
                      ゴールド免許だ。
                      免許証は平成33年9月まで有効となっている。

                      警察官は顔を真っ赤にしながら
                      「平成??、誕生日が昭和54年8月?」
                      「本官を馬鹿にしておるのか?」
                      「これが免許証?」
                      「ナンバー偽造と免許証偽造現行犯で逮捕する!」
                      興奮状態だ。

                      祐一はびっくりした顔で
                      「ちょっと待ってください」
                      「今、平成じゃないですか」
                      「私が聞きたいですよ。なんでこんな古いクラウンに
                      乗っているのですか?」
                      「ここはどこですか?」

                      「馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
                      警棒を持つ手が震えている。
                      「おい、原巡査!応援車両を早く無線で呼べ」
                      「はっ」

                      原巡査はまだ若い。
                      20代半ばか?
                      急いでパトカーに乗り無線を手にした。
                      「詳しい話は署で聞く。一緒に来てもらおう」

                      祐一は頭が大混乱。
                      悪夢でも見ているのか。
                      夢だったら覚めてくれ!

                      「俺は東京から遊びにきただけだ。御殿場市内に入ってから
                      訳のわからないことだらけ」
                      「今、平成の時代でしょ! ここは何?」

                      「平成?」
                      「何だ、それは?」
                      「お前、精神病院から抜け出したきちがいか?」
                      「今は昭和の時代だろうが!」

                      祐一は目を大きくして
                      「えっ!! そんな馬鹿な」

                      「昭和37年だ」

                      祐一は信じられない気持で倒れそうになった。
                      「昭和37年って私まだ生まれてないですよ」

                      40代の高木巡査部長は
                      「お前と話していると俺までおかしくなりそうだ」
                      「応援パトカーがまもなく来る。 お前の車を真ん中にして連行
                      するから後でゆっくり話を聞く」

                      祐一はヘタヘタと座り込んだ。
                      「どうなっているんだ?」

                      少し時間が経ち応援パトカーがやってきた。
                      すでに周りには地元の住民が数人見ていた。
                      「何だ、これは外車か?」
                      「ずいぶんでかい車だね」
                      「アメリカの車か?」
                      昭和37年だったら確かに祐一の車はでかい。
                      この頃の車はコンパクトだ。

                      応援に駆けつけた警察官も驚いた表情だ。
                      高木巡査部長は
                      「こいつはナンバー、免許証偽造。訳のわからん言動」
                      「これから署に連行する」

                      祐一は何言っても無駄だと思い警察官の言われる通りにした。

                      高木巡査部長は
                      「俺が先導、お前が真ん中、後ろにパトカーがついてくる
                      少しでも変な動きをしたら罪が重くなるからな」

                      祐一は逆らっても無駄と思い無言でうなづいた。

                      パトカーに挟まれ発進。
                      未舗装の道路を走った。
                      祐一の頭はパニック寸前。
                      とても正常にいられなかった。
                      行き交う車もすべてレトロ車。
                      いや祐一の車が変なのか?
                      濃霧に出会い頭痛が起き駐車場へ避難。
                      そこからおかしくなった。
                      ここは日本?
                      俺はどこにいるんだ?

                      10分ほど走ると警察署が見えてきた。
                      3階建ての古い建物。
                      いや、この時代なら最先端なのかもしれない。
                      駐車場に車を停め降りると高木巡査部長から
                      「車内の所持品、お前の身の回りの品すべて出してもらう」
                      「整理しておくように」

                      祐一は言われるままに渡された袋に車検証や書類を入れた。
                      署の警察官も不思議そうにのぞき込んでいる。
                      整理が終わり原巡査が
                      「どうぞ、2階へ」
                      丁寧な口調で言った。

                      2階の連れていかれた部屋は刑事部屋のようだ。
                      目つきの悪い刑事らしい男が数人。
                      原巡査は椅子を持ってきて
                      「座って待っててください」
                      「変な行動は取らないでくださいね」

                      祐一は無言でうなづいた。

                      高木巡査部長は今朝からの経緯を細かく刑事達に説明。
                      刑事達も信じられない!というポーズで聞いていた。
                      少し経ち一人の刑事が近寄ってきた。
                      「話は高木から聞きました。
                      もう1度、最初から聞かせてもらえますか」

                      「あなたの名前は?」
                      「田中祐一です」
                      「生年月日?」
                      「昭和54年8月5日生まれ」
                      「干支は?」
                      「ひつじです」
                      「どこからこちらへ?」
                      「東京・世田谷区経堂から来ました」
                      「勤め先は?」
                      「商社勤務です。三菱商事です」
                      「何しにここへ来たのですか?」
                      「箱根へドライブにきました」
                      「田中さんの車は見たことないものですが、あれは何ですか?」
                      「ホンダS2000です。
                      1999年製、平成11年型です」

                      刑事は訳わからんというポーズを取った。
                      「確かに今、書類・免許証など見せてもらいました」
                      「特に免許証など精巧な作りで偽造とはとても思えない」
                      「しかし今の免許証はこういうものですよ」
                      見せてくれた。
                      4つ折りの皮・紙製の免許証だった。

                      刑事は
                      「私も頭が混乱してます。 平成?1999年?
                      2020年から来た???」

                      「何か、じゃあなたは未来から来たというのですか?」

                      祐一は
                      「私も頭が大混乱してます。
                      恐ろしい悪夢を見ているよう。
                      一体全体どうなっているのか?」
                      「私は昨夜、自宅を出て246号線で御殿場方面に向かい濃霧に
                      出会い激しい頭痛が起き仮眠。
                      目が覚めたら昭和37年の世界?
                      さっき警察官にきちがい扱いされました。
                      だけど本当にきちがいになりそうです」

                      途中、署の無線機が鳴りだした。
                      「住民から不審車両の通報あり、至急何号車は現場へ急行せよ」

                      「今朝はあなたに続いてまた不審車両ですか。
                      忙しい日だ」
                      「少し落ち着いてからお話ししましょう」
                      「お茶でもいかがですか。タバコは吸われますか」

                      「はい ありがとうございます」

                      「少しリラックスして心を落ち着かせてください」

                      さっきからずっと奥の机にいる年配の人がいた。
                      どうやら熟練の刑事。
                      刑事長らしい。
                      欠伸をしながら新聞を読んでいるが、しっかり人の話は聞いているようだ。
                      温和な感じだが目つきは鋭い。

                      祐一はお茶を飲みタバコを一服。
                      少しは気持が落ち着いてきた。

                      また署の無線機が鳴る。
                      「不審車両発見!言動意味不明。応援車両求む」

                      祐一は
                      「俺と似たような奴がいるものだ」
                      と思いながらタバコをふかした。

                      しばらくすると奥に座っていた刑事が近寄ってきた。
                      「田中さん、さっきは話を聞かせてもらいました」
                      「私は刑事課長の鈴木と言います」
                      「うちの連中は気性が荒いのか、ちょっと怖かったかもしれない。
                      済まないね」
                      「私も刑事歴が長いので目を見れば白か黒かすぐわかる」
                      「田中さんの言っていることはどうやら本当のようだ」
                      「ただ私はタイムスリップなんてことが現実に起きるなんてとても
                      信じられない気持なんです」

                      「私も訳わかりません。
                      ただドライブに来ただけなのに気がついたら昭和の世界へ。
                      タイムスリップなんてSFの話です」

                      お茶・タバコでリラックス出来ていたのだが、また興奮してきて
                      血圧が上がりそうだ。

                      「田中さんの車、今鑑識班に見てもらってます。
                      もうしばらくお待ちください」

                      「分解するんですか?
                      昭和37年の技術だったら分解したら元に戻りませんよ」

                      「分解はしません。写真を撮ったり細部を見せてもらうだけです」

                      祐一はまたタバコに火をつけた。
                      しばらくすると数人の足音が階段から聞こえてきた。
                      数人の警察官に囲まれ私服姿の若い男性。
                      祐一はびっくりして立ち上がった!

                      「おい、沖!!!」

                      「あ〜、田中さん!!!」

                      二人は駆け寄り肩を抱き合った。


                      「ここはどうなっているんですか?」
                      「霧で仕方なくバス停に停め寝てしまい、起こされた時は
                      職務質問」
                      「警察官の制服も違うしパトカーも化石のような車」
                      「何言っても信じてもらえず昭和37年と聞いてもう俺パニック!」


                      「俺もだ。地獄に仏とはこういうことだ」
                      「俺も何がどうなっているのか、さっぱりわからん」
                      「ただ現実昭和37年の世界にいることは間違いないようだ」


                      「どっきりカメラじゃないんですか。
                      元の世界に戻れるんですか」
                      「俺たち一体どうなるんですか」

                      「わからん、見当もつかん」

                      刑事課長の鈴木が近寄ってきて
                      「まぁ〜、まぁ〜お二人とも署には連行されたが罪を犯した
                      わけじゃない。
                      まずは気持をリラックスしてください」

                      「ありがとうございます」

                      鑑識班数人が2階に上がってきた。
                      「驚く限りです。見たこともないような装備、精密機械ともいえる
                      エンジン、言葉になりません」
                      興奮していた。
                      「細部を見ていたら同じような車がまた1台!
                      まるでSFの世界です」

                      鈴木刑事課長は
                      「お話はまたあとで聞くとして、この先どうされますか?」

                      祐一と沖は返答に困った。
                      どうする?と言われても昭和37年といったら生まれてもないし
                      影も形もない。
                      両親だってまだ独身。
                      いきなり伺っても変人扱いされるだけ。
                      この世界に漂流だ。

                      沖は田中さんに言った。
                      「田中さん、俺どこへ行けば・・・?」

                      「・・・・・・・」

                      祐一も答えに困った。

                      時間を見たらすでに朝9時を過ぎていた。
                      「お二人とも朝食は?」

                      「まだです」

                      「じゃ誰かに買ってきてもらうよう頼みます。
                      少し待っててください。

                      「それではお金払います」
                      そう言いはっと気がついた。
                      今持っているお金は平成のお金がほとんど。
                      この時代に使ったら偽札騒ぎになる。
                      これからどうやって暮らせばいいんだ。


                      刑事課長は原巡査に頼んだ。
                      「おい、帰るところ悪いが買い物頼んでいいかな。
                      弁当かパン買ってきてくれ」

                      「はい」

                      しばらくすると原巡査が戻ってきた。
                      パンと牛乳を買ってきてくれた。

                      「こんな物ですがどうぞ」

                      「ありがとうございます。
                      いただきます」

                      食べ終わり原巡査はお茶を持ってきてくれた。

                      「あの〜田中さんの車のボディにホンダS2000という文字が
                      ありました。
                      私、ホンダS500という車に乗っているのですが同じメーカーの
                      車ですか?
                      大きさは全然違いますけどスタイルが似ているような・・・」

                      祐一と沖は
                      「S500ですか!名車中の名車です。
                      私達の時代、中古で軽く1000万円超しますよ!」

                      「えっ〜、1000万円!!!
                      私、なけなしのお金をはたいて新車で買って50万円です。
                      もう貧乏生活ですよ」

                      ホンダS500

                      ホンダS500の写真 

                      昭和37年の大学初任給は17800円の時代だ。
                      50万円でも高額商品には間違いない。

                      「私と沖はホンダの大ファン!
                      沖は私のS2000と違いS2200という車です。
                      排気量を200侫▲奪廚靴督秣トルクを上げているんです。

                      「馬力はどのくらいあるんですか?」

                      「S2000で250馬力です」

                      「すげぇ〜、レーシングカーの世界だ」

                      「私と沖は箱根で知り合い、早朝にワイディングロードを走って
                      いるんです。
                      沖は若いのにドライブテクニックは優秀ですよ」

                      「私もS500で箱根に行きます」

                      「そりゃ〜いい!
                      一緒に走りたいですね〜」

                      「是非!」

                      原は
                      「あとでS2000見せてもらえませんか?」

                      「喜んで!」

                      祐一は嬉しくなった。
                      さっきまで途方に暮れ、不安で一杯だったのにまさかこの世界で
                      ホンダSのファンと出会うとは。
                      さっきまでの不安はどこに行ったか消えてしまった。
                      思いがけない場所で車談義が始まった。
                      隣で聞いていた鈴木刑事課長も

                      「おやおや、あっという間に仲良しになっちまった。
                      これでは事情聴取はお終いかな」

                      原は
                      「これからどうするんですか?」

                      二人は
                      「まったく見当つかないんです
                      時代の漂流者です」

                      原は鈴木刑事課長に尋ねた。
                      「私の狭いアパートですが、しばらくの間二人を泊めてもいいですか?」

                      「う〜ん、こんなケースは初めてだしな〜
                      所持金も今の時代には使えないし行く当てもない。
                      罪を犯したわけではないから留置するわけにもいかんし・・・」
                      「特別に許可を与える。
                      原、しばらく頼む」

                      「原のところで少しじっとしてくれますか?
                      今時点、どうすればいいのか私にもわからん」

                      「よろしいんですか。ありがとうございます」

                      原巡査は今日、当直明け。
                      本当ならすでに帰宅しているところだが祐一たちのことが興味があり
                      残っていた。
                      「今、着替えてきます。
                      一緒に帰りましょう」

                      祐一と沖は深く頭を下げ
                      「お世話になります。
                      よろしくお願いします」
                      何度も頭を下げた。

                      祐一は沖に
                      「おい、ただ飯を食うわけにいかん。
                      お前、ホンダ販売店のメカニックだからS500の整備お手の物だろう」

                      「任せてください!
                      S500のエンジンといったら当時世界最高峰の精密機械。
                      レーシングエンジンをそのまま市販車に積んだようなもの。
                      亡き本田宗一郎のDNAがそっくり受け継がれた車だもの。
                      気合いが入りますよ!!!」

                      「じゃ俺は18番の4輪アライメントをやってやるか!」

                      「これでS500、コーナリングマシンですね」

                      「下手すると峠で俺たちS2000負けるかもしれないぞ」

                      「やべぇ〜」

                      車談義に花が咲いていたとき原は戻ってきた。
                      「お待たせしました。
                      行きましょうか」

                      駐車場に行き、原のS500を見た。
                      真っ赤なボディ。
                      祐一と同じボディカラーだ。
                      2020年の時代でも十分通用しそうな車。
                      年々ボディは大きくなり、車はまるで絶滅寸前の恐竜のようなもの。
                      改めて車とは何ぞや?車を走らせる楽しさは何ぞや?を教えて
                      くれるような車だ。

                      祐一は聞いた。
                      「燃費はどのくらいですか?」

                      「リッター20キロは走りますよ」

                      ハイブリッドカー並みだ!
                      亡き本田宗一郎氏の先見性はすごい!
                      運転席を見ても運転に最低限必要な装備はあり2020年の車のように
                      余計なものは何もない。
                      逆にS500が
                      「これ以上何が必要ですか?」
                      と聞いてくるかんじがした。

                      祐一は沖に尋ねた。
                      「たしか浜松に本田の会社があるよな。
                      S500を出しS800を開発中の時期か?
                      と、いうことは浜松に行けば本田宗一郎氏に会えるかも」

                      「そりゃいい!!!
                      是非S500,2000.2200で行きましょうよ!!!」


                          続く

                                          まさやん


                      3部作思いもよらずSFっぽくなりました。
                      当初、こういう予定はなかったのですが「小説の書き方」を読み
                      急きょ変更しました。
                      何部作までなるか未定ですが最終回は少し夢のある日本になります。
                      相変わらずど素人の小説読んでいただきありがとうございました。







                      posted by: まさやん&花 | 小説 2020年 | 15:04 | comments(2) | trackbacks(0) | - |
                      近未来小説 2020年(2)
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                                     2020年10月

                        今年の夏も酷暑にふさわしい夏だった。
                        いや違う表現があれば、それを使いたい位の容赦ない
                        暑さ。
                        もう10月だと言うのに最高気温はまだ30度をキープ。
                        圭一が子供の頃の昭和20〜30年頃は30度に上がろう
                        ものならニュースになったほど。
                        今では30度は涼しいと感じるくらいだから慣れというか
                        人間の順応性はすごい。

                        圭一は今日ワクワクしていた。
                        一人息子の祐一と孫の大地が遊びにくるのだ。
                        大地は就職活動も終わり、インドから友人のいる沖縄で
                        エンジョイしている。
                        学生最後の羽根を伸ばせる時期だ。
                        今日、飛行機で羽田空港に到着予定だ。
                        祐一と食事も久しぶりだ。
                        孫の大地の顔を見るのも楽しみ!
                        朝から落ち着かなかった。
                        ワクワク・ソワソワ状態。
                        妻の良子が、
                        あなた、まるで遠足に行く子供みたい・・・
                        と笑っていた。
                        会うのは夕方の予定。

                        息子の祐一は40才。
                        圭一と同じく大手商社に勤めている。
                        誰に似たのか?車が3度の飯よりも好き。
                        若い時は車をチューニングしてレースにも参加していた。
                        根っからのホンダファンだ。
                        圭一は車は動けばいいと思っているタイプ。
                        妻も車には興味はない。
                        突然変異かな?
                        圭一は苦笑した。

                        どれ、時間があるから散髪に行っていくるか。

                        そう言いジーパン姿で出かける。
                        圭一は70才とは思えないスタイル・若さ。
                        まだ50代で通用しそうだ。
                        近所の行きつけの理髪店へ。
                        このマンションへ引越して以来、ずっとの付き合い。
                        外へ出ると夏の時の悪臭は和らいでいる。
                        東京都民から苦情が山のように殺到!
                        東京都も予備予算を使い、仕方なくすべての不法投棄
                        ゴミを回収・消毒した。
                        法律も少し改正し、家庭ゴミを不法投棄した人には更に高い
                        罰金を課すことにした。
                        度重なる悪質な常習犯には逮捕に踏み切るという。
                        それでも後を絶たない。
                        不法投棄をする人の言い分はこうだ。
                        「あっ、貼るのを忘れた」
                        「他の人も捨ててるでしょ!なんで私だけ」
                        罪の意識がまったくない。
                        大体不法投棄する人の行動はすぐわかる。
                        周りをキョロキョロ、ビクビクしながらゴミを持っている。
                        正義感の強い圭一は見つけると
                        「コラ〜!」と一喝する。
                        驚いて逃げる奴もいるが、中には歯向かう奴もいる。
                        「てめぇ〜、何様のつもりだ!」と凄んでくる。
                        妻の良子からも
                        あなた、危ないからやめて・・・と忠告される。
                        自分さえ良ければいいという自己中心的な考え。
                        いつから日本はこうなってしまったんだろう。
                        ゴミ問題も東京は夢の島に清掃工場がある。
                        他にもいくつかあるが、どこも80%以上。
                        代替え地を探しているが地元住民の反対で難航している。
                        理由は今は高層マンション、一大レジャー施設、大企業が
                        立ち並んでいるお台場。
                        ここは元ゴミ処理場だった。
                        満杯になり、そこを埋め立て今はお洒落な一大レジャー施設と
                        なっている。
                        しかし地下にあるゴミにより大量のガスが地下に充満して
                        いると思われる。
                        もし東京で大地震が発生、地下のガスに引火したら大爆発!
                        天高く火柱が上がるだろう。
                        そしてお台場はもともと埋め立て地。
                        地盤も弱い。
                        液状化も深刻だ。
                        台場に住んでいる住民は恐れている。
                        せっかく貯めた虎の子の貯金で買った高層マンション。
                        お洒落なお台場で余生を暮らせると思ったら時限爆弾の上。
                        そのため新規のゴミ処理上建設が難航しているのだ。

                        理髪店を覗くとお客はいなかった。
                        店主は大きな欠伸をしながら新聞を読んでいた。
                        圭一はドアを開け、
                        よっ!
                        店主は一瞬驚いた様子。

                        あれ、珍しい?

                        たまにはプロの人にやってもらおうと思ってな。

                        奥さんにやってもらわないんですか?

                        いや〜、あいつにやってもらうと痛いしドラ刈りだ。
                        文句を言うと無料でやっているのに生意気だ!とコツンされる。
                        今日は孫とも会うし、キチンとしないとな。
                        一ミリカットで頼みます。

                        はい、いつも通りで。

                        圭一はぼうず刈りだ。
                        バリカンでやってもらい前髪はハサミで微調整してもらう。
                        一番楽なヘアスタイルだ。
                        寝癖はつかないし洗ってもすぐ乾く。

                        散髪してもらいながら、
                        今年も暑かったな〜

                        店主も
                        フライパンで蒸し焼き状態。
                        上と下から蒸されアスファルトの熱気。
                        まるで床暖房しているみたいですよ。

                        圭一は
                        そりゃいい表現だ。
                        ハハハ・・・

                        人間の限界を超えてます。
                        この先どうなるやら・・・・

                        土がないのがいかん。
                        アスファルトで水はけは悪いし豪雨がくればすぐ川の状態。
                        昭和30年代が良かったな〜
                        土もあった。
                        近くの多摩川には池がいくつもあった。
                        ザリガニがいやってほど捕れたよ。
                        俺が子供の頃はよくガキ大将と一緒にバケツ一杯にザリガニを
                        捕って近所の金魚屋で買い取ってもらい小遣いにし、駄菓子屋で
                        遊んだっけ。
                        よく泥んこになり母には怒られたな。

                        店主も
                        私もよく怒られました。
                        暗くなるまで遊んで膝はすりむくし服は泥だらけ。

                        今の時代の子供達が可哀想だ。
                        池も子供が落ちたら大変だと言うことで埋め立てられ子供達は
                        家でゲームに熱中。
                        テレビに映っている映像は現実社会とまったく同じ。
                        その中でスイッチ1つで破壊・人を殺したり・・・
                        ああいうのは絶対いかん!
                        現実とゲームの区別が出来なくなる。
                        昔ガキ大将がいてその下に子分が何人もいた。
                        人と人の付き合い。
                        友達同士との喧嘩。
                        そういうのを経てこういうことをしたら痛いとか目上の人に対して
                        礼儀とか子供のうちから自然と学ぶ。
                        そういう環境が今こそ必要だ。

                        店主は言った。
                        本当です。
                        私も子供の頃、ガキ大将の下の子分の更に下。
                        金魚のふんみたいでした。
                        だけど楽しかったですね。

                        昭和20〜30年代は楽しかった。
                        今の時代ほど便利じゃない。
                        貧しい家庭のほうが多かった。
                        だけど心は豊かだった。
                        みんな希望をもっていた。
                        近所の付き合いもあった。
                        家庭ゴミだってあまり出なかったんじゃないかな。
                        自然とうまく共存共栄していたよね。
                        今の時代、街並みは自然に逆らった仮想空間のようなもの。
                        だから自然が怒り大地震や巨大台風、10年前の大津波。
                        自然からみたら仮想空間なんてもろいものだ。

                        さぁ〜、田中さん
                        ヘアスタイルはどうですか?

                        話していくうちに出来上がっていた。
                        やっぱりプロは違う。
                        頭を洗い、顔を剃り整髪料をつけサッパリ。
                        うん、若返った!

                        家に帰ったら
                        あなた!
                        息子から電話で大地の乗る予定の飛行機が台風の影響で
                        飛ばないんですって。
                        どうしますか?

                        わかった。
                        祐一に電話してみる。
                        電話機を取り祐一にかける。
                        おい、どうする?

                        祐一は
                        仕方ないから久しぶりに焼き鳥屋で一杯やろうよ。

                        おぅ、それいいな。

                        妻の良子は
                        じゃ二人で行ってらっしゃい。
                        私はニャン太と留守番してますよ。

                        圭一にとって行きつけの美味しい焼き鳥屋がある。
                        この道50年以上のベテラン御主人。
                        小僧の時代から修業し目をつぶってでも焼けると豪語している。
                        材料も妥協は許さない。
                        弟子ももたない。
                        相当頑固な職人だ。
                        反面、気に入ったお客には店のメニューにないとっておきの
                        料理を出してくれる。
                        10人入れば満席の小さいお店。
                        グルメ雑誌の取材も固く断っている。
                        だけど噂を聞きつけお客は絶えない。

                        夕方6時、旗の台駅前で待ち合わせ。
                        祐一と二人で飲むなんてあいつが20才の時以来か。
                        20年ぶりだ。
                        圭一の目は輝いた。
                        身支度を終え東急線に乗り旗の台駅へ。
                        この街は昔ならではの飲み屋が多い。
                        超不景気でここ数年店を閉めたところが多い。
                        寂しい限りだ。
                        昭和の風景が消えていく。
                        駅前に着いたら祐一はもう待っていた。

                        おぅ、早いな!

                        祐一は
                        あそこの美味しい焼き鳥が食べたくて自然と早く来ちゃいました。

                        早速行くか。

                        圭一は酒は大好き。
                        祐一はそんなに飲めない。
                        だけど楽しく飲めればいい。
                        店に行くと焼き鳥を焼いている煙がもくもく外へたなびいている。
                        いい匂いだ。
                        ガラス戸を開け
                        おやっさん、久しぶり!

                        あれ、田中さん、いらっしゃい
                        店の主人は祐一のことは気づかない様子。

                        祐一が
                        お久しぶりです。

                        主人は
                        キョトン?

                        圭一は
                        ハハハ、息子の祐一です。

                        あれま!
                        ご立派になられたこと。

                        ご無沙汰してます。
                        20年ぶりですか。
                        祐一は頭を下げた。

                        どうぞどうぞ、予約席用意してますから。
                        すでに3組ほどお客がいた。

                        圭一は
                        どうだい、最近は?

                        主人は
                        おかげさまで口コミでお客は来るんだが若い客も多い。
                        マナーがなっとらん!
                        たま〜に「けぇ〜れ!!!」と怒鳴ることがありますよ。

                        親父さんらしい。
                        圭一は笑った
                        今夜は美味しい酒と焼き鳥をたらふくいだだきます。

                        圭一は祐一とビールで乾杯した。
                        話は尽きなかった。
                        孫の大地の事。
                        問題山積みの日本の現況。
                        それを話すと酒が不味くなってきた。

                        圭一は祐一に言った
                        お前、政治家をやってみないか?
                        祐一はびっくりした顔で
                        何言ってんだ!
                        俺が出来るわけない。

                        お前は俺に似て正義感が強い。
                        今の腐敗しきった政治を変えるには正義感の強い人間が必要だ。
                        どこで日本は道を踏み外したのか?
                        「川の流れのように」じゃないけど川の流れを間違えたようだ。
                        今日本は滝に向かっている。
                        危機的状況だ!
                        昭和30年代くらいに戻って歴史をリセットしたいよ。
                        話は尽きず、あっという間に10時くらいになった。

                        祐一は明日の夜久しぶりに箱根へ走りに行くよ。

                        お前、いい年してまだ峠を走っているのか?

                        何言ってるんだ。
                        夜といっても早朝だよ。
                        夜の峠は若い奴しかいない。
                        見ていても危なっかしい。
                        ドリフトしながらコーナーを抜けていくけどあまり上手い奴はいない。
                        一般車を巻き添えにしたらえらい事故になるよ
                        早朝に来る連中は根っからの車好き。
                        大人だしマナーもいい。
                        ただし峠のバトルは少年の目に戻るけど。

                        祐一はホンダS2000に乗っている。
                        ホンダS2000

                        ホンダの創始者本田宗一郎の走りのDNAを引き継いだ
                        世界に誇るスポーツカーだ。
                        2人乗りのオープンカー。
                        S2000のエンジンサウンドはいい。
                        エンジンサウンドを聞いていると音楽はいらない。
                        どんな名曲もかなわないだろう。
                        S2000の他に家族用にシビックを持っている
                        妻の加奈が運転しているがいつも小言を言われる
                        「あんな不便な車、何が楽しいの?」

                        祐一はタバコをやらない。
                        酒もたしなむ程度。
                        趣味も車だけ。
                        若い時からコツコツお金を貯めS2000をデビューして
                        即購入。
                        1999年に新車で買った。
                        すでに生産中止で絶版車になったが祐一は一生乗りたい!
                        と思うほど惚れ込んでいる。

                        圭一は
                        事故だけは気をつけろよ。

                        あ〜、わかっている。

                        話は次から次へと出てくるがまたの機会ということで旗の台駅前で
                        別れた。

                        祐一は帰宅後、家の車庫に行き明日の準備を始めた。
                        足回りのアライメント調整だ。
                        4つのタイヤの接地面は長く使ったり縁石にこすったりすると
                        微妙に狂う。
                        4つのタイヤが地面と水平に接地していればコーナリング性能も
                        上がる。
                        慣れれば30分もあれば出来る作業だ。
                        祐一にとって手慣れたものだ。

                        翌日の夜、妻の加奈に
                        じゃ行ってくる。

                        また行くの?
                        気をつけてね。

                        愛車のキーを取りスターターを回す。
                        ブルルルン・・・・
                        小気味良いサウンドだ。
                        今夜もS2000は機嫌が良さそうだ。
                        時間は深夜の1時。
                        開いているスタンドへ行く。
                        今ガソリンは200円以上。
                        ハイオクガソリンになると250円近くになる。
                        S2000はハイオク仕様。
                        レギュラーガソリンも入れられるがエンジンのことを思うとハイオクだ。
                        やっぱりこれから運動させるのだから、いいものを食べさせなければ。
                        スタンドへ行き満タンにする。
                        約30リットル入った
                        8000円だ。
                        高い!
                        中東諸国が原油を出し渋っているからガソリン価格もうなぎ登りだ。
                        節約のため東名高速が使わずR246号線で行く。
                        深夜だから2〜3時間もあれば着く。
                        ちょうどドリフト族が帰る時間には到着する。
                        オープンにし、246を御殿場方面に向かう。
                        風も心地良い。
                        更にエンジンサウンドが心を高揚してくれる。
                        この気持、加奈にはわからないだろうな。
                        そう考えながらトラックの間をすり抜けながら走る。

                        今の時代、ハイブリッド・電気自動車、当たり前。
                        ガソリン車の比率は大変少なくなった。
                        いずれは電気自動車が大半になるのだろう。
                        時代は変わった。
                        日本は今まで家電製品・自動車など世界のリーダー役だった。
                        しかし21世紀に入り、韓国そして近年、安かろう・悪かろうと
                        言われた中国まで品質は格段に向上!
                        価格まで日本製品よりぐっと安く性能もいい。
                        消費者にとってあえて日本製品を買う理由がなくなった。
                        電気自動車も構造はボディと足回りだけ。
                        あとはバッテリーだ。
                        少し前まではエンジン開発で何十億円といった巨額の開発資金、
                        長年のノウハウが必要だった。
                        電気自動車はエンジンがいらない。
                        日本の自動車メーカーは危機感をもった。
                        新規の自動車メーカーがどんどん参入し、有名なデザイナーを
                        スカウト、車のデザインを頼んでいる。
                        日本の自動車メーカーは車のデザインはコンピューター任せ。
                        もちろん人が最終的に判断するが、どれもこれも無個性。
                        みんな似たようなデザインになった。
                        そのため若者を中心に車離れが加速。
                        気がついたときは車が売れなくなり慌てて若者に受けるような
                        車を発表するも韓国・中国メーカーに押されっぱなしだ。
                        日本の自動車メーカーは苦境に追い込まれている。

                        今日出かける前に聞いた天気予報は箱根は快晴。
                        降水確率も0%だ。
                        よし!
                        峠日和だ。
                        久しぶりに車仲間と会える。
                        車談義するとあっという間に1日が過ぎる。
                        初めて会ってもすぐ打ち解けられる。
                        来るメンバーもGTR.シルビア、スーパー7、RX7、ロードスター
                        など電気自動車にない魅力ある車ばかりだ。

                        ワクワクドキドキしながら246バイパスを走る。
                        大井松田付近で雲が出てきた。
                        山の天気は変わりやすい。
                        御殿場に近づくにつれ霧が出て来た。

                        なんだ、天気予報と違うじゃないか!
                        祐一は舌打ちをした。
                        だんだん霧は濃くなり
                        まいったな〜
                        そろそろ御殿場市内に入る。
                        濃さはどんどん増してくる。
                        通い慣れた道だ。
                        近くに無料駐車場がある。
                        これ以上濃くなったら避難しよう。
                        とうとう真っ白の世界。
                        センターラインもかろうじて見える状態。
                        なんとか駐車場に入り込む。
                        この時、祐一は頭痛がしていた。
                        人一倍健康体質なのに今日はなんてこった。
                        仕方なく霧が晴れるまで仮眠することにした。
                        シートを少し傾け仮眠にはいった。

                        何時間寝ただろうか。
                        目が覚めると霧は晴れていた。

                        しかし・・・・
                        何???

                               続く

                                             まさやん


                        2020年、最初は短編小説の予定でした。
                        リクエストにより長編に変更します。
                        今朝、急きょ原稿を書き、投稿します。
                        急いで作ったので、これが小説?なんて言われるかも
                        しれません。
                        皆様の正直な感想、お聞かせください。
                        いつになるかわかりませんが3部作また公開します。


                        posted by: まさやん&花 | 小説 2020年 | 11:07 | comments(5) | trackbacks(0) | - |